日本人は自然の音を言語化して楽しむ
ブラジルには捕虫網や虫かごはありませんが、私が子供の頃は(千葉にいた頃)、夏休みになると昆虫採集をしたり虫を飼ったりして、そんな遊びの中で自然と親しんできました。
夏になると近くの林でセミが鳴きますが、日本人は虫の声を次々と言語化してしまいました。
アブラゼミはジージー、ミンミンゼミ、ニーニーゼミ、ツクツクボウシと鳴く法師蝉、夕方になるとカナカナカナと寂しげに鳴く日暮し蝉などがいますが、ブラジルには上手に鳴く蝉はいないようで、ただビーーとかルーーと太い声で鳴く蝉しか聞いたことがありません。
日本の鳥の鳴き声を例にとれば、有名なのはウグイスの「法々華経」。
ホホジロは「一筆啓上ツカマツリ候」。
尾の長い鳥のサンコウチョウは「ツキ・ヒ・ホシ・ホイホイホイ」と鳴くことから「月日星」の三光鳥と名付けられました。
ホトトギスは「特許・許可局」。
ウズラの仲間のコジュケイは「チョット来イ チョット来イ」。
つばめは「虫食ッテ虫食ッテ渋ブーイ」。
フクロウは「五郎助奉公」。
メジロは「長兵衛忠兵衛長忠兵衛」。
センダイムシクイが「焼酎一杯グイーッ」。
そのほか地方にも事例がいくつかありますが、カラスが「孝々」、スズメは「忠々」と聞きなすのだそうです。
このように日本人は昔から自然と対話する感覚を持っているので、山が笑ったり眠ったり、風が呼んだりささやいたりするように感じる人もいます。
しかし外国人にしてみれば、自然と交流するような人間は野蛮な未開人だと思うようです。
外国人はデジタル脳なので一かゼロでしか動きませんから、自然の繊細な音などは単なる野蛮なノイズで、人工的な音楽しか好みません。
しかし、日本人は一かゼロの中間である曖昧さも得意なので、雨や風の微妙な自然の音の違いを聞き分けて、いろいろと面白がって言語化してしまいました。
p.s. 余談ですが・・・
ブラジルには公園の森を散歩するとき、耳にイヤホンをして手にスマホを持っている人が多くいて、小鳥の声や小猿の鳴き声などには興味がありません。
つまり彼らには人工的な音こそ美しくて心地良いようで、海水浴場へ行って休もうと思っても、近くでガンガンと俗な音楽を流して観光客にサービスしています。
風鈴、除夜の鐘、庭にある「つくばい」や、筧の「鹿威し(ししおどし)」の音など、日本人は好きです。
私はその音を聞いたことがありませんが、ポタンポタンと水の垂れる音が反響する「水琴窟」なども日本庭園にはあるそうです。
【今日の名言】
「今日今日と 言いてその日を暮らしぬる 明日の命はとにもかくにも」
千宗旦(千利休の孫)
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