絶対音感か相対音感か。そして移調のトレーニング

プロのプレイヤーの中でも、ドレミという音の名前の聞こえ方は多種多様なようだ。

ピアノや弦楽器、その他in Cの楽器を演奏する人、特にクラシックでは固定ドで聞こえている人が多いだろうが、ジャズ、ポピュラーは移動ドの人も多いかもしれない。

移調楽器を演奏している人でも様々…
・とにかく絶対音感、固定ドでしか聞こえない
・in Es(in B等)で固定されて聞こえる
・移調楽器の調子に応じて移動する
・調性に応じて変化する(つまり相対音感)

などなど。

ちなみに僕は2番目のパターン。
それも管楽器はだいたい、自分がソプラノやテナーを吹いていても、すべてin Esで音が聞こえてしまう。
in Esの固定ド、とでも言えばいいか。
なので、B管で運指の「ドレミファソラシド(実音ではB dur)」と吹いても耳の中では「ソラシドレミファソ」と聞こえている。
でもフルートを吹いている時はin Cで聞こえている。

ピアノや弦楽器はin Cで聞こえたりin Esで聞こえたり…という具合で状況次第で変わる。
別に規則性もない。
というわけでそういう意味では結構耳が大混乱です…
でも別に実際の演奏上困ったことはない。

まず大切に考えたいことは、楽譜を見たときに、きちんと音程が連想できるかどうか。
また、運指を押さえたときにも音程が連想できるかどうか。
楽譜から運指を連想するのでなく、楽譜と運指のそれぞれから音程が思い浮かぶようにしていく。
それを実現には運指を押さえながら歌っていく練習がいいと思う。

レッスンをしている中で、絶対音感がきつく移調楽器で不自由を感じている人をよく見かける。
彼らは楽譜に書かれた「ドレミという単なる名前」に縛られ、音程の柔軟な感じ方が足りない場合が多いのではないかと思っている。
個人的な考えでは、極論を言ってしまうと「絶対音高としてのドレミ」は優れた演奏には必要が無くて、ただ単に「この高さ、音、幅」として認識できてればいいと思ってる。
更に言えば「機能としてのドレミ(つまり移動ド)」が把握できているとより優れた、素敵な演奏能力に繋がると思う。

ではその「音程の柔軟な感じ方」を身に付けるにはどうしたらいいか。
レッスンをしていてもなかなか人それぞれの対処が求められて苦労するところだが、まずはとにかく声で歌うところなんじゃないかと思っている。

ただこのときの歌い方は色々可能性を持って取り組むといいと思うが、ある特定の歌いやすいフレーズ(最初はカエルの歌や大きな古時計とかでもいいと思う)を、

・移動ドで全調
・ドレミは言わずに「ラララ~」などで全調

こんな具合で練習してみる。

ジャズの勉強で12keyへの移調練習は必要不可欠だが、これを繰り返していくと、僕の場合ドレミが聞こえなくなってくることがある。
移動ドでもない。
単純に音の高さだけが認識される。
でもそれは決して無味乾燥な音高でなく、かといって移動ドでも聞こえるわけでもなく、耳の中で機能としてのドレミがなんとなく「色合い、音色」として「あ、これはド(主音、1番目)の色だ」「シ(導音、7番目)だ」「ファ♯(4番目の♯)だ」と直感的に感じられるようになることが出てきた。

これはジャズだけでなくクラシックをやる上でももちろん、調性音楽をやる上ではとても大事な感覚だと思う。

クラシックのサックスで必ず取り組むクローゼのエチュードなんかでも、昔はただただ機械的な指の練習としてやっていたため、当時は全く気づくことかできなかった転調の面白さ、音の働きや機能を今は非常にカラフルに感じられるようになってきた。

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