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自然の中でみんなで〇〇 #1

養老孟司氏の著書「子どもが心配~人として大事な3つの力~」から、
子育てを考える。この本は、養老氏と4人の研究者・教育者の対談録として記されている。まず、この本のまえがきに、「3つの力」を以下の通り示している。
「認知機能」・「共感する力(以下、共感力)」・「自分の頭で考える」
私なりに解釈し、私のふりかえりとしてここに記す。

背景
昭和30年、日本は高度経済成長に伴い、都市化、核家族化、少子化が進み、子どもの遊び場がなくなっていった。さらに、ネットの普及もあり、意識中心の社会となった。養老氏は、それを「脳化社会」と呼んでいる。その結果、10代~30代の若者の自殺が増加した。現在においても、ネットによる社会問題が増えている。
私は、併せて、行き過ぎた個人主義やSNS上での誹謗中傷など、日本人が元々持っている「思いやり」や「道徳心」が、薄れているように思う。

1.認知機能
少年の非行化の分岐点は、「勉強についていけるか、いけないか」。その非行に走る少年のだいたいの子が小学2年生くらいから勉強についていけなくなる。
ケーキを3等分できない子どもたち。

ケーキを3等分できない子どもたち(右図)

ここからわかることは、「見る力」などの認知機能や知的能力に問題があるのに、学校で気づかれないまま、ずっと放置されてしまう現状がある。

非行少年の特徴は以下の組み合わせのどこかに当てはまる。
・認知機能の弱さ・・・見たり聞いたり想像したりする力が弱い
・感情統制の弱さ・・・感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
・融通の利かなさ・・・なんでも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
・不適切な自己評価・・自分の問題点が分からない。自身がありすぎる、なさすぎる
・対人スキルの乏しさ・・人とのコミュニケーションが苦手
・+1 身体的不器用さ・・力加減ができない、身体の使い方が不器用
(スポーツなどを経験している子どもの場合は当てはまらないことも多いので「+1」としている)

以前は、生活や学校、社会の中で、無意識的に享受していた様々な”発育発達の要因になる要素”が、上記の”背景”によって失われ、子どもの発育・発達に影響している。この要素を補うために、”体験”と称して、あえてやらないといけない状況になっている。

どのような「環境」が求められるか。
自分自身を、どう認知、捉えていくか。自分自身を捉える上で、必要な要素が、”自然”と”他者”であると考える。
ここでは、人との関係の中で自分を知り、自分に注意(矢印)を向けられると、行動変容が起こると述べている。その他者の中で、親(大人)の存在は、「安心安全な土台」として重要である。子どもたちが安心して帰ってこられる存在・居場所として、親の存在が一番大きい。子どもたちは、安心できる場所・帰ってきてもいい場所があるから、挑戦することができる。

安心できるから、挑むことができる

さらに、親だけでなく、子どもにとって最初の関わりを持つ他者は、”先生”、”地域の人”、”兄弟・友人”などが挙げられる。青少年教育機構のデータの中に、叱られた経験のある子どもの方が自己肯定感が高いというデータがある。褒めることも必要だが、褒めればいいという訳ではないことが言える。

大人がきちんと子どもと向き合うことが大切

親だけでなく、様々な他者と出会うことは、その出会う数だけ、様々な経験をする可能性が高い。良いこともあれば、ケンカして傷つくこともある。竹のように揺れながら、育っていくことで、しなやかな心が育まれるのではないだろうか。

そのため、認知機能を養うために、”他者”と関われる「環境」が必要だと私は考える。さらに、合わせて、”自然”を感じる「環境」が必要だと思う。
なぜ、自然と他者を挙げたかというと、2つとも「自分ではコントロールできない」という共通点がある。自分にとって都合のいいこともあれば、不都合なこともある。思い通りになることもあれば、ならないときもある。折り合いをつけたり、諦めなければならないこともある。そういった意味で、自然の中で活動することや他者と関わる活動は、自分を知り、成長するきっかけになる。
11年、青少年自然の家で働き、多くの子どもたちと出会ってきた中でも、自然や他者と関わる経験が少ないように感じる。いわゆる”体験不足”を感じる。改めて、自然体験活動指導者として、自然や他者と関わる環境や機会を創っていく必要があることを、この本から認識できた。

#2へ続く

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