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ホテル予約サイトに民泊業者が混ざり込んでいる 問題点と利用の際の留意点の解説

海外旅行にあたって、ホテル予約サイトを使ったのに実際に予約したのは民泊のような施設だった、あるいは実際に行った先にはホテルなどなく途方にくれた、という事態が多く発生しています。この記事では、そのような施設を避ける、あるいはそのような施設を使う上での留意点をまとめてみました。


ホテルと民泊の境目は曖昧

ホテルと民泊の境目は、「旅館業法」の存在しない海外では日本以上に曖昧だと思います。
欧州などでは、ホテルとは言っても年季の入った石造りの建物の中の1つの階をホテルに改造したものも多く、受付も例えば8時から20時はいるけど、それ以外はいないというようなものも多くあります。そのようなホテルでも星2つを名乗っていたりします。
一方、民泊も余った部屋を貸しているというレベルではなく、個人や零細業者が商業的に行っているものも多く、複数の部屋を貸し出しており、部屋への持ち届けなどの形で朝食を供しているものさえあります。

ホテル予約サイトに紛れ込む民泊設備

多くの旅行者にとって宿泊場所のロケーションは極めて重要であるため、マップからホテルを検索している人は多いと思います。多くの人が利用しているのはGoogle Mapです。地図上の地点とともに評判を参照できるため宿泊先の検討と選択に極めて便利なツールです。Google Mapではホテルと民泊を区別して表示できるようになっています。しかし、ホテルを選択したとしても民泊、あるいは極めて民泊に近い設備が数多く混ざり込んでいるというのが現状です。
Google Map自体では宿泊予約はできないため、ホテル予約サイトであるBooking.comやAgoda、Hotels.comなどを使って予約することになるのですが、これらのサイト上もホテルと何の区別もなく民泊に極めて近いような設備が表示され、部屋のオプションもホテルと全く同じ仕様で表示されてきます。民泊業者側はホテルと並んで表示された方がレートを高くとれる可能性があることと、ホテル予約サイト側もAirbnbなどの民泊サイトに顧客や設備が流れるのを防止したいという思惑が働いているものと考えられます。
旅行者の数は拡大を続ける一方で、ホテル専用の建物を建設する余地は大都市ではほぼ残されていないというのが現状であり、たとえあったとしてもそのために巨大な資本が必要となります。特に歴史的な町並みを抱える都市では様々な制約から建物の建て替えは進みませんが、旅行者はそのような町並みの場所に宿泊したいものです。民泊業者はここに目を付けています。旅行者にとって魅力的に見える戦略的なロケーションに存在する古い建物を賃貸するなどしてその一部を確保し、宿泊用途に改造してホテルサイトに掲載しています。そして、受付を置かずそのスペースや人件費を削ることによって価格を下げ、旅行者にとって魅力的な価格とロケーションの組合せを提供しているのです。その意味では、民泊と言ってもその運営主体は多くの場合に個人や零細業者であるというだけでその実態はプロであり、自宅の一室だけを提供している本当の「民泊」とは区別して考えるべきなのかもしれませんが、受付が存在しないなど民泊的要素が多分にあり、従来のホテルとは設備やサービスにおいて一線を画し民泊と変わらないものであるので、この記事では民泊業者、民泊設備と表現しておきます。

何が問題なのか?

これらの民泊設備がホテル予約サイトに掲載されている結果、ホテルを予約したと思ったのに実際に行ってみたら何もなく、ただの建物に小さく表札を見つけるのみでどうしたらいいのか途方に暮れると言うことになりかねないのです。
民泊設備では受付がリモートで行われるため、入室手順やパスポートなどの情報提供について設備への到着より前に業者とのコンタクトを開始する必要があります。実際、民泊業者はホテル予約サイトのコンタクト機能を使ってコンタクトを試みてくるのですが、そんなことは当日ホテルの受付で行えばよいと思っている旅行者は旅行予約サイトなど見ないでホテル予約サイトが発行するバウチャーだけ印刷してホテルに向かうということが起こってしまい、実際に現地に行ってみるとホテルらしいものはなく、途方に暮れ、なかなか入室できないという事態が発生してしまいます。ホテル予約サイト側も、従来のホテルを想定しているので、コミュニケーション機能(チャット機能)が貧弱にできています。
また、意外にバカにならないこととして、受付による荷物の預かりがない結果、旅行中に荷物を預かってもらう業者が別に必要になります。駅やバスターミナルの近くに宿を確保する理由の一つは、チェックアウト後移動前に荷物を預かってもらうことなのですが、せっかく良いロケーションに宿を確保したとしてもこれができないとデメリットがあります。

利用の際の留意点

前述のような事態を避けるためには、ホテル選びの際に、ある程度星のついているホテルのみを選ぶか、Google Mapのストリートビューなどで本当に従来型のホテルなのかどうかを確認するしかありません。Google Mapのコメントの中に個人名が頻繁に登場するような宿泊場所は、ホテルではない可能性が高いと言えます。
しかし、これらの民泊業者が提供する場所と価格の組合せは極めて魅力的なものであるため、またホテル予約サイト上では従来のホテルと見分けがつかないため、予約してしまってから気づくということも少なくないと思います。
需給の観点からホテル料金が高騰していくなかで、旅行を経済的に行うためには、これらの業者の提供する宿泊施設も積極的に利用の選択肢に入れていくのが、今後の海外旅行の1つのスタイルだと考えられます。
では、このような民泊設備をどのように利用したらよいのか?その要点をここに書いておきたいと思います。

まず、予約時にどのような宿泊施設なのかをよく確かめてください。伝統的な形式のホテル以外を望まない方であれば、民泊設備を回避するために予約前に設備の外観をストリートビューで必ず確認することをお勧めします。Google Mapやホテル予約サイトに掲載されている利用者が残したコメントの中で少しでも伝統的なホテルのスタイルと矛盾するものがあれば、民泊設備を疑った方がいいと思います。私は経済的な旅行のためには民泊設備も積極的に利用した方がいいと思っていますが、いずれの場合も自分が予約した設備が従来型のホテルなのか、民泊設備であるのかを予め知っておくことによってその後の対応が効率的・効果的なものとなります。
予約した宿泊施設が従来型のホテルではなく民泊設備だとしたら、到着前、できれば宿泊当日より前にコミュニケーションを開始する必要があります。予約に使ったホテル予約サイトのコミュニケーション機能(チャットのような機能)を使って民泊業者側がコンタクトをしてきますので、必ずチェックしてください。単なるウェルカムメッセージだと決めつけて無視しないようにして下さい。WhatsAppを持っている場合には、自ら設備側にこちらの携帯電話番号を伝えることにより、その後のコミュニケーションをWhatsAppで行うことが可能になることが多いです。WhatsAppはホテル予約サイトの用意したチャット機能よりも使い勝手がよく、メッセージがあることにすぐに気づく、つまりリアルタイム性があるので、できるのであれば予約サイトのチャット機能よりもWhatsAppでコミュニケーションした方がよいと思います。
施設によっては、パスポートなどのIDの写真の送信を求めてきます。それもWhatsAppで行うとスムーズです。パスポートの画像は何度も使用することになるので、予めJPEGなどにしておくとよいでしょう。
業者側の説明に従って入室してください。外からの扉の解錠情報や、部屋の鍵が入っているボックスへのアクセス情報などが、民泊業者から送られてきます。この情報は他人と絶対に共有しないでください。ほとんどの業者は英語でコミュニケーションして来ますので、英語で応えてください。英語がわからない場合は、Google翻訳などの翻訳ツールを積極的に活用すれば問題ないことが多いので、英語が苦手でもほとんどの場合は大丈夫です。コミュニケーションが文字ベースであるということで、英会話が苦手な方にとってはホテルの受付よりもむしろわかり易いことが多いのではないでしょうか。
最後に退去時ですが、地元自治体が観光税のようなものを徴収していることが多く、それを現金で部屋に残しておくことが指示されていることがよくあります。それが入室情報などとともに送られてきていないかを確認してください。

荷物を預ける必要がある場合は、手荷物預かり所を別途見つけておく必要があります。Google Mapで"Baggage Storage"あるいは"Luggage Storage"で検索すると、荷物を預けられる場所を探すことができます。荷物預かりビジネスを組織化して、様々な店舗で荷物預かりを行う場所をアプリで検索、支払ができるようなビジネス(例えば、bounceと言う業者)も登場しています。

WhatsAppは旅行のために必須のコミュニケーションツール

民泊業者とのコミュニケーションを行うためにWhatsAppを導入しましょう。WhatsAppで常時コミュニケーションを取っていれば、早く到着してしまった、あるいは飛行機が遅れて到着が指定時間外になるというようなアクシデントにも、柔軟に対応してくれることもありますので、常に民泊業者とコミュニケーションがとれる状態にあることは安心にもつながります。
宿泊業者以外にも、レンタカー、レンタルバイクや送迎サービスなど多くの旅行関係の事業者がWhatsAppを導入しています。レンタカーやレンタルバイク業者にとっては顧客と常につながっているという状態は安心ですし、顧客側としても事故や渋滞などによる返却の遅れなどを想定すると心強いものです。空港送迎サービスでは、飛行機の遅れなどをリアルタイムで伝えることができます(飛行中は難しいかもしれませんが)。
これらの業者がWhatsAppを好むのは、WhatsAppがLINEと異なり、電話番号さえ知っていればメッセージを送ることができるようにできているからです。様々な事業者がBooking.comやTrip.comなどの予約サイトにマージンをごっそり抜かれていますので、業者側には次回からは直接予約してほしいという願望も含まれているとは思います。
もちろん、日本人相手にLINEで、しかも日本語でコミュニケーションを取れる業者もタイなど東南アジアになどには多く存在していると思います。しかし、LINEに固執するのは、さまざまなサービスの選択肢を狭めます。世界標準、特に旅行での世界標準はWhatsAppだと心得て、その対応に慣れておくべきだと思います。

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