誰かの想いを背負った時、きっと君はもっと強くなれる。
秋田ノーザンハピネッツは琉球ゴールデンキングスとの天皇杯に完敗した。
何より琉球のバスケットボールは素晴らしかったし、格の違いを見せつけたと言っていいと思う。琉球はどんな戦いも頂点を目指す。それが伝わる素晴らしいチームだった。
正直に言えば、僕の中で勝負を決した瞬間は早々に来た。
1Q序盤、秋田の長谷川暢のディフェンスに屈することなく、琉球の並里がなんなくスリーポイントを決めた時…
僕は画面越しに「並里、離すな!」と声に出してしまった。
それをなんなく並里が決めた時、ポイントガードの大きさを感じた。
もちろん、チームのルールや約束事があるのだから、僕の意見が正解などとは思わない。けれど、そこだけは負けてはいけない。いや、チームではなく、個人として長谷川暢が超えていく壁だったように思う。
ここからは持論である。
ポイントガードは絶対に屈してはいけない。
ポイントガードの空気感、迷いはコートの全てに伝染する。だからこそ、それぞれの形でコートにいい風をポイントガードは送り込まなくてはいけない。
その手段がコミュニケーションのものもいれば、並里のような圧倒的存在感と支配力のものもいる。得点力のものもいれば、淀みない展開を作り出すものもいるだろう。
長谷川暢というポイントガードにとって、それは何か?
と問えば、僕は「ファーストディフェンスとして仲間に見せる背中」と答える。
チームの中で、ポイントガードは最前線からディフェンスをする。その背中を見て他のメンバーはディフェンスの覚悟を決める。
「大丈夫、俺はこいつに負けない」
そんな空気感、安心感はヘルプポジションさえもコントロールすると思う。
あの試合、僕の中で長谷川暢の使命は琉球のポイントガードに仕事をさせないことだと考えた。しかし、それは並里という日本が誇るファンタジスタにあっさりと攻略された。
シンプルに言えば、並里の方がまだ上だった。
それだけのことだ。
けれど、それは同時に、超えていかなくはいけない壁でもある。
その中で、長谷川暢の中に若干の空回りにも見える感情が僕には見えた。
直前に秋田のポイントガードの伊藤の欠場のリリースがあった。
先日、長谷川暢とたわいもない話をしていた時
「伊藤くんってめちゃめちゃ上手いよね?」
と僕が問うと
「伊藤さんはまじでめちゃくちゃ上手いですね。代表とか呼ばれていいと思ってます。」
と彼は満遍の笑みで答えた。
僕と長谷川暢はその辺の感覚が似ている気がする。そして、間違いなく長谷川暢は伊藤駿を尊敬している。
その中で、怪我を繰り返し、今回も大きな怪我をした伊藤に彼は何を思ったのだろうか。
「伊藤さんの分まで…俺がやらなきゃ…」
並里という偉大な存在を前にしても、きっと彼ならそう思ったのではないだろうか。
何か噛み合わない印象はそんな「想い」に隠れていたように思うし、ポイントガードのそんな「想い」はこの試合に限ってはチームにとってマイナスに影響したとも感じた。
その敗戦から彼も考えたのではないだろうか。
ポイントガードとして大切なこと
それは伊藤の離脱も含めてだと僕は思う。
何よりも大切なことはチームを勝たせることだと僕は思う。
彼が何をどう考え、何を感じ、どんな答えを出したのかは僕は知らない。
けれど、1つだけ今日の新潟との試合で感じたことがある。
間違いなく、長谷川暢は
伊藤の想いと秋田を背負ってディフェンスをした。
「俺が負けちゃいけない。」
琉球戦との違いはここだったと僕は思う。
並里のようなトップクラスのガードには正直まだ及ばない。
けれど、長谷川暢はそうやって成長していく。
誰かの想いを背負った時、きっと君はもっと強くなれる。
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