【感想】『キングオブコントの会』の松本人志と『お笑い実力刃』のバカリズム
松本人志、民放20年ぶり新作コント披露。
そんな謳い文句で放送前からお笑いファンの間で話題になっていた『キングオブコントの会』
ちなみに20年前の2001年にコントを披露したのはフジテレビの『ものごっつええ感じスペシャル』で、民放ではなくNHKだと2011年の『松本人志のコントMHK』がある。
さて、そんな松本人志の書き下ろしコントは面白かったのか?
先に結論を書くと、笑いの好みは人それぞれなので唯一無二の正解は無いという方向に逃げておく。
(一応僕個人の感想は最後に書きます)
今回披露された書き下ろしコントは2本。
1本目は『おめでとう』
演じるのは「今日はめでたい」と終始ハイテンションな松子という女性。
誰の何がめでたいのかが一向に明かされず周囲が戸惑ったまま話が進み、後半は松子が呼んだゲストという設定で次々に芸人が登場してそれぞれ持ちネタを披露していく。
2本目は『管理人』
演じるのはマンションの住人である松本さんという女性。
バイきんぐ小峠演じるマンションの管理人から旅行のお土産の明太子を渡したいと言われて了承するのにドアのチェーンを外してくれないという展開が繰り返される不条理コント。
後半は予想だにしない展開に飛躍していく。
いずれも『ごっつ』時代を彷彿させる狂気を感じるコントだったのは確かだと思う。
そのこと自体はあまり意見は割れないのではないか。
問題(?)はそれをどう評価するか。
アップデートされた新しい笑いなのか、それともごっつ世代の懐古趣味なのか。
こんなことを考えたくなるきっかけとして、今週6/9(水)放送の『お笑い実力刃』でバカリズムが視聴者からの質問に答えるコーナーがあった。
視聴者からの「なぜ売れた今でも毎年単独ライブをやるのか?」という質問に答えるバカリズム。
5年(ネタを)作ってなかったとして、5年ぶりに単独ライブをやりますってなった時に、多分もうこの時のセンスは5年前で止まってるから、5年前のセンスで作るんですよ。更新されてないから。
20年やってなかったら20年前のセンスから入るから、もうその時には見てる人からすれば「うわ〜何か懐かしいな」になっちゃうんで。
常に自分を切り捨てていくというか。
奇しくも20年という数字(もちろんただの偶然だけど)
単独ライブはずっと続けるのか?とさらに切り込むサンド伊達。
バカリズムは「どうします?」と質問で返し、富澤は「やっていくつもり」だと断言。
そこに「何歳までとかも決めてないの?」と被せるザキヤマ。
ここでの伊達の返答が『キングオブコント』へのリファレンスとしてまた興味深い。
さまぁ〜ずさんがずっとやってるじゃないですか。やっぱ憧れなんですよ。
ザキヤマもバカリズムもこの意見には賛同。
ただ、それが必ずしも賞レース審査員の適性とはまた違ってくるのがお笑いの難しいところである。
これについてはいつか書く機会があったら。
話を戻して、僕なりの今回の松本人志書き下ろしコントへの感想を。
正直、松本人志が笑いを担っていた部分(主にコント前半)は懐古趣味だったと思う。
映画も含めて過去の松本人志作品を想起させたが、そこに何か新しい要素は僕は見出せなかった。
ただ、恐らく松本人志もそれに対して自覚的だったのではないか。
というのはコントの約半分(概算)の笑いを現役でネタを作っている後輩芸人たちに託していたからである。
自身のネタ作りに関する(ここ重要)感性が鈍っているのを自覚していて、だからこそ後輩芸人を良い意味で頼ったのではないだろうか。
『一人ごっつ』等で孤高のお笑い求道者ひいては笑いの神とまで言われた男が他の芸人を頼るようになった(ように見えた)のは何か感慨深いものがあった。
ただし「じゃあ松本人志ってもう面白くないの?」と聞かれたらそれは否で、ネタに関しては第一線からは退いたがバラエティ番組でのコメント瞬発力は衰えるどころか今でもトップクラスだと思っている。
特に番組前半で生まれた笑いやフレーズを後半のここぞという場面で再び使う能力は本当に凄い。
あと今回もシソンヌじろうの「おにぎりにも出来ます」に唯一引っかかっていたというエピソードが話されていたけど、そういう風にスタジオの誰も気付かずスルーしているポイントに対するアンテナ感度も。
自分(って単なる素人と比べては失礼すぎるが)とは根本的に脳の作りが違うのかなと思うほど。
ちなみに『キングオブコントの会』の番組全体としては、ロバート秋山の『昼の生放送』が「結局のところどんな笑いだって内輪受けではあるが、その輪の大きさを読み違えるとテレビだろうが生配信だろうがYouTuberだろうが悲惨なことになる」という批評性を伴ったコントで最高だった。
27分の完全版、Paravi辺りで配信してくれないだろうかw