おっさんのアニメ観 5.作画
なんといっても京アニ。人物は髪の毛、まつ毛一本一本まで気を払っている。背景がアニメ最高峰なのは間違いない。空の色、雲の動き、建物など、どれをとっても常軌を逸するほどに書き込まれている。特に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』においては顕著。そして徹底的な現調に基づく背景の書き込みとリアルさはとんでもないレベルに達している。
また、心の揺れを表情以外で表現する技法はもはや十八番。足、手、背景にフォーカスを移動し、微細な動き、光や色合いの変化によって視聴者にキャラ心情を察知させる技術は相当なものである。この技法に関しては京アニがトップであることは議論を待たない。
バトルならばufotableが突出していると感じる。過去の例を紐解くと『Fate zero』、『Fate stay night UBW』でのサーバント同士の戦闘シーンの「動き」は凄まじいものがあった。それを凌駕したのが『鬼滅の刃』の19話Bパート。これまでの数多のアニメを置き去りにしてしまうほどの「動き」とエフェクトの融合。神楽のシーンはモーションキャプチャからの手書き起こしのように見えるが、それでもヌルサクという擬態語がふさわしい。BGMと画面との調和から沸き起こる感動は筆舌しがたい。バトルシーンをマンガの1コマのような止め絵と効果線でごまかす製作会社は見習ってほしい。『異世界チート魔術師』とかね。
特殊な技法を使って視聴者を引き込むのがうまいのがシャフト。『化物語』や『まどマギ』では実写(またはそれに近い画像)とアニメーションを効果的に融合して、他作品とは異なる印象の創出に成功しており、独自の世界観を構築している。
P.A.Worksも人物と背景の描き込みに定評がある。女の子を描かせたらトップクラス。こちらも京アニ同様、現調が徹底しており、『True Tears』は2008年の作品とは思えないほどの出来栄えで、富山県の山々の描画は素晴らしいの一言。
最近はフルCGの作品(『正解するカド』など)も作られているが、人物の表情や動きがまだまだぎこちない。アニメ業界のゼネコン的多重下請け構造が解消する、しないに関係なく、今後はフルCG化が進んでいくと思われる。現状では人物の作画に関しては手書きの方が上である。