「ない」漢字or平仮名の見分け方
たくさんの方のnoteを拝見していると、「ない」の漢字と平仮名の書き分けができていない方が大勢。
元国語の塾講師は、こういったことにうるさいのです。
ま、今もSEとしてたくさんのドキュメント作成や、各種資料のレビュアーをしているので、当たり前なのですけどね。
はい。本題に戻ります。
「ない」を漢字にするか、ひらがなにするか。
これには明確なルールがあります。
それを守れば、間違うことはありません。
結論:
「存在否定」する「ない」だけが漢字。
結論だけわかればOKという方は、この先読まなくても大丈夫。
しかし、なぜそうなるのかを知りたい方は続きも読んでね。
まず、一番大切なルールから理解してください。
ルール:
形容詞「ない」は漢字(平仮名でもOK)
助動詞「ない」は平仮名(基本的に漢字NG)
形容詞とか助動詞っていわれてもねぇ。
と多くの方が思われるのではないでしょうか。
一番簡単な見分け方は「ない」の箇所を「ある」に置換可能か否かなんです。
形容詞「ない」ならだいたい置換できます。
100%ではありません。
例:形容詞
箱がない
→ 〇 箱がある に置換可能
つまり形容詞
だから、「箱が無い」と漢字で書くのはOK。
意味から考えると「存在否定」する「ない」。
例:助動詞
彼はいない
→ × 彼はいある 置換できない
つまり助動詞
だから、「彼はい無い」はNG。
正しくは「彼はいない」と平仮名表記。
文法的に考えると、助動詞「ない」の前には必ず自立語があります。
上記の例は、動詞(い)+助動詞(ない)
形容詞+助動詞「ない」の例:
美しくない
形容動詞+助動詞「ない」の例:
静かでない
これも意味を考えると、前にある自立語を「打消」しています。
ここまでが基本です。
これで終わると、元国語講師としては…なのです。
さて、応用。
「ない」には、あと2種類あります。
補助形容詞の「ない」と形容詞の一部としての「ない」です。
まずは補助形容詞「ない」から。
補助形容詞の「ない」は平仮名表記が基本です。
文法的には形容詞として完全に独立しているが、意味は前の文節を否定するという性格を持つものです。
つまり先ほど形容詞のところで説明した「存在否定」するという意味は持たない。けれど、文法的には形容詞というもの。
例:
穏やかではない
少々ややこしいですが、単語に分解すると
穏やかで + は + ない
形容動詞 + 助詞 + 補助形容詞
という構成です。
「ない」は独立していますが、「存在否定」しているわけではないです。
ですから、単純な形容詞ではありません。
形容詞と補助形容詞の違いは、
形容詞:「存在否定」
補助形容詞:「ない」の前全体を否定
英語のnotに近いものだと思うとわかりやすいでしょう。
最後に、形容詞の一部としての「ない」。
これは一つの形容詞の中に「ない」が含まれているものです。
形容詞の一部としての「ない」も平仮名表記です。
例:
とんでもない
さりげない
みっともない etc
形容詞の一部としての「ない」を見分けるには「ない」を「ある」に置換した時に、正しい反対語になるかどうかです。
反対語が存在しなければ、それは形容詞の一部です。
では、「ある」に変えてみましょう
× とんでもある
× さりげある
× みっともある
スラングとしては存在するのかもしれませんが、実際はあまり使われませんし、文書に使うのは適切とは言えませんね。
さて、いろいろ書いてきましたが、まとめると
「存在否定」する「ない」、つまり形容詞だけが漢字表記です。
ごちゃこちゃ書きましたが、これだけ守ればOKです。
まあ、ぶっちゃけどっちでもいいんですが、公文書や社内ドキュメントを作成する立場の方は、覚えておくと役に立つかもしれません。
いただいたサポートは、おじさんの活動費としてとんでもなく有用に使われる予定です。