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「天城山からの手紙 47話」

先日の台風15号は、沢山の被害を伊豆にもたらした。そして、私の中で、天城の象徴だと思っていた「ヘビブナ」がついに逝ってしまった。幾たびの脅威を乗り越え、命を全うするために変えた姿は、まさに情念という一言に尽きる。私は、このヘビブナの前に何度立っただろうか?訪れる度に、偶然の出合いをくれた。その偶然が重なるほどに疑念が確信に変わり、この日、私は、不思議な体験をしたのである。人は誰しも大きな悩みを抱える事だろう。道に悩み、人との関係に悩み・・。それぞれが、何とか踏ん張り乗り越えて行く。私は、この時、分かれ道に立っていた。「山に行きたい!そして一番遠いヘビブナまで」自分を追い込む様に向かったのが、何時も何か起こるヘビブナだった。もう山に入った瞬間から、様子が違う。山に来るのがわかっていたかのように迎えられ、「今日も何か起こるぞ」と感じていた。道中は魅力あふれる光景に、焦る思いををグッと心に押し込めヘビブナへ向かう。霧が交差するかのように、強い風が吹き、私の背中を押す。切れる息はもうこの時、なんの苦しさもなく、森の音や歩く音と溶け込み気付けばヘビブナの前に立っていた。しばらく振りの挨拶をして、私は荷物を置いた。そして、そっと手を木肌に当て分かれ道の選択を語りかけたのである。するべきか?やめるべきか?と。その瞬間、まさか!やはり起こったのだ。私の頭上には、季節外れの大雪が舞い落ちたのだ。すぐさま手を放し後ずさりすると、その雪は止んだ。恐る恐るもう一度ゆっくりと触れると、又、雪が降り注ぎ、そうか、これが答えかと道を示された。今でも思う。偶然なのか?本当なのか?その答えは・・。最後に、ヘビブナが生き抜いた時間に追悼の意を込めて、終わりにしたい。

掲載写真 題名:「へびぶな」
撮影地:小岳付近
カメラ:Canon EOS 5D Mark III EF24-105mm f/4L IS USM
撮影データ:焦点距離45mm F8 SS 1/80sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2016年3月26日 AM8:37


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