僕が音楽の道を選んだ理由①〜音への興味関心が無意識に刷り込まれていった幼少時代
音楽の道を歩み始めて早47年。その長い旅路の始まりは、実は偶然の積み重ねだったのかもしれません。幼少期の環境音から始まり、音楽教室での出会いを経て、いつしか音楽が人生の中心となっていった。その過程には、思いがけない出来事や人々との出会いが満ちていました。今回は、私の音楽人生の原点を振り返る一回目の記事です。皆さんも、自分の人生を形作った偶然の出来事を思い出しながら、一緒に旅をしてみませんか?
幼少期の音の記憶:環境が育んだ感性
私の音楽との出会いは、おそらく生後間もない頃から始まっていたのでしょう。古い木造の家で育った私の耳に、最初に届いたのは父親のクラシックギターの音でした。ポロンポロンと柔らかく響く音色が、今でも懐かしく思い出されます。
家の2階には三菱のオーディオ装置があり、そこから流れる童謡やクラシック音楽が、私の幼い心に刻み込まれていったのです。モーツァルトやベートーヴェンの旋律が、知らず知らずのうちに私の音楽的素養を育んでいったのかもしれません。
しかし、最も印象に残っているのは、自然の音や環境音です。他の子供たちが怖がる雷の音を、私はどういうわけか好んで聞いていました。その轟音に、何か神秘的なものを感じていたのでしょうか。
また、忘れられない体験として、隣家の火事の記憶があります。夜中に母に抱かれ、トイレの窓から見た炎の光景。そして耳に飛び込んでくる、バチバチ、メラメラ、ミシミシという音。恐ろしくも美しい、自然の持つ力強さを感じさせる音でした。
さらに、家の近くにあった竹林から聞こえる音も、私の心に深く刻まれています。風が強く吹くと、竹がこすれ合って生み出すその音は、まるで大地の呼吸のようでした。
こうした多様で珍しい音の体験が、知らず知らずのうちに私の感性を育んでいったように思います。音楽家としての今の自分があるのは、こうした幼少期の豊かな音環境があったからこそなのかもしれません。
音楽教育との出会い:偶然が導いた道
本格的に音楽と向き合うきっかけは、小学校2年生の時でした。音楽の授業で出された宿題が、思わぬ転機となったのです。教科書の後ろにある鍵盤の写真を見ながら、チューリップやちょうちょなどの曲を必死に練習していた私。その姿を見た母が、音楽教室を探してくれることになったのです。
そして偶然にも、新しく開設されたピアノとテクニトーン(当時ナショナルが販売していた電子オルガン)教室に出会いました。20歳そこそこの若い先生との出会いが、私の音楽人生の大きな転換点となったのです。
毎週土曜日の午後、30分間の個人レッスン。その前後には、先生のお母様が楽典の基礎を教えてくださいました。四分音符の形や、拍子の概念など、音楽の基礎をじっくりと学ぶ機会を得たのです。
さらに驚いたのは、月に一度のケーキタイムだったのです!当時はまだ珍しかったショートケーキと紅茶をいただきながら、音楽の話に花を咲かせる。まるで音楽サロンのような雰囲気の中で、私の音楽への愛情が少しずつ育まれていったのです。
音楽への没頭:習慣が培った技術と感性
先生の指導は、とても丁寧で緻密なものでした。単に音符を追うだけでなく、曲の始まりと終わりの呼吸感、アーティキュレーション、音楽と向き合う姿勢まで、細やかに指導してくださいました。
先生が手書きで作ってくださった譜面の美しさは、今でも忘れられません。その綺麗な譜面を見るたびに、自分の甘さを反省し、襟を正す思いがしたものです。私の家宝として、大切に机の奥にしまっています。
高校3年生まで12年以上にわたって、ほぼ休むことなくレッスンを続けました。その間、教室内の発表会やテクニトーンフェスティバルなど、人前で演奏する機会もたくさんいただきました。映画音楽や「Easy Listening」と呼ばれるジャンルの曲を演奏し、地方大会で優勝して京都の大会に出場したこともあります。
気がつけば、毎晩練習することが習慣となっていました。夜になると、夕食後に自然と電子オルガンの前に座り、指を動かす。音楽が、呼吸をするように自然な営みとなっていったのです。
音楽への愛:偶然が育んだ情熱
振り返ってみると、音楽の道に進んだ理由は、偶然の積み重ねと周囲の人々の支えだったように思います。自分の意思というよりも、環境や出会いに導かれるように音楽の世界に足を踏み入れていったのです。
しかし、その過程で音楽への愛情と情熱が自然と育まれていきました。最初は趣味や課外活動のようなものだった音楽が、いつしか人生の中心となっていったのです。
高校生になる頃には、先生の選曲だけでなく、自分の好きな曲も弾くようになりました。フュージョン系の曲、T-スクエアやカシオペアの曲を弾きながら、音楽の世界にどんどん深く入り込んでいきました。
残念ながら、私に音楽の基礎を教えてくださった先生は2005年に若くして亡くなられました。その悲しみは今でも消えることは決してありませんが、先生から学んだことは私の中で生き続けています。
音楽との出会いと成長の過程を振り返ると、人生の偶然性と、それを育む環境の重要性を改めて感じます。私の音楽人生は、まさにこうした偶然と必然が織りなす美しい旋律のようなものだったのかもしれません。
幼い頃の環境音との出会いから始まり、偶然出会った音楽教室、そして12年にわたる継続的な学びを経て、音楽は私の人生の中心となりました。この道を選んだのは自分の意思というよりも、周囲の環境や出会いに導かれた結果だったのかもしれません。しかし、その過程で育まれた音楽への愛と情熱は、紛れもなく本物でした。
皆さんの人生にも、きっと似たような偶然の出来事があったのではないでしょうか。それが今の自分を形作っているのかもしれません。時には立ち止まって、自分の歩んできた道を振り返ってみるのも良いかもしれませんね。そこには、思いがけない発見や気づきが待っています!
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