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鼻歌は作曲技法を確立するための最善の方法

作曲家として、また大学教員として音楽と向き合う日々。その中で気づいた、意外な創作の武器があります。それは誰もが持っている「鼻歌」です。一見取るに足らないこの行為が、実は音楽創造の源泉となり得るのです。今回は、この身近な「楽器」の可能性について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

鼻歌:頭の中のメロディーを解き放つ鍵

皆さんは日常生活の中で、ふと鼻歌を口ずさむことはありませんか。お風呂に入っているときや散歩中など、無意識のうちに「フフーン♪」とか「ララーン♬」といった鼻歌が出てくることがあります。実は、この何気ない行為に大きな意味があるのです。

特に作曲をする人にとって、頭の中に浮かんだメロディーを外に出すことは非常に重要です。五線譜に書き起こしたり、PCに入力したりする前に、まずは頭の中にある音の塊を具現化することが創作の第一歩となります。

鼻歌を歌うことで、頭の中のイメージを言葉やメロディーとして吐き出します。そして、その声を自分の耳で捉え直すことで、新たな創造のサイクルが始まるのです。このフィードバックのプロセスを通じて、アイデアを補正したり、深化させたりすることができます。

即時性がもたらす創造性の解放

鼻歌の最大の利点は、その即時性にあります。頭の中に浮かんだメロディーを、瞬時に音として表現できるのです。これは他の楽器にはない大きな強みです。

例えば、クラリネットやフルートなどの管楽器で作曲することを想像してみてください。頭の中でメロディーが鳴っていても、楽器を取り出し、準備を整えるまでに時間がかかります。その間に、せっかく思いついたメロディーを忘れてしまうことも少なくありません。

一方、鼻歌なら瞬時に音として表現できます。この速攻性が、短期記憶の中にあるアイデアを捕まえるのに非常に有効なのです。頭の中で出てきた音の塊を、すぐに声に出して、それを自分の耳で聞いて脳に取り込む。このプロセスを経ることで、メロディーがより鮮明に、より強固に定着するのです。

作曲能力を高める身近な「楽器」

このように、鼻歌は作曲能力を伸ばす上で非常に有効なツールとなります。それは、最も身近で、最も即時性のある「楽器」だからです。

私自身は、常にピアノを弾ける状態にしていますが、それでも鼻歌ほどの即時性はありません。鍵盤を押すには、やはり身体的な動作が必要で、ピアノの前に座るといった動作であっても、わずかながらタイムラグが生じます。その点、声や鼻歌は、即座にトライアル&エラーできる最適な作曲道具といえるでしょう。

もしかすると、「こんな簡単な鼻歌で本当に曲になるのだろうか」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、安心してください。メロディーさえあれば、曲作りの8割は終わったようなものです。最近では、編曲やオーケストレーションなどは専門家に任せることも増えています。なんならAIで伴奏を入れることも(かなり不完全ではありますが)可能っちゃ、可能です。しかし、メロディーを作ることは依然として難しく、多くの音楽家が苦心しているのが現状です。

結局のところ、メロディーを生み出す能力は、小説を書く能力に似ています。簡単には身につかないものです。しかし、鼻歌という身近な「楽器」を活用することで、その能力を徐々に高めていくことができるのです。

音楽創造の世界では、このような些細な気づきが大きな成果につながることがあります。皆さんも、日常の中で鼻歌を意識的に活用してみてはいかがでしょうか。きっと、新たな創造の扉が開かれることでしょう。

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