
気分が良くて何が悪い?|2025,Week07.
最近使い始めたアプリに「muute」というのがある。
いわゆるジャーナリングアプリでその時の出来事や感情を記録し、自分自身の内省を深める…といったことができます。僕はもともと、日々の行動記録をこまめに記録するのが好きで、これまでもアナログ、デジタル問わずいろいろな方法を試しては辞めて…を繰り返していたのだけれど、このアプリは割と楽しんで使い続けられています。

muuteのジャーナリングの何がそんなに良いのか。いろいろと理由はあるが、1つ挙げるとしたら「自分自身の感情」にアプローチできることかなと思う。
muuteは自分で自由に思いや考えを書き込めるのだが、それを書いた後に「どんな気持ち?」という問いかけをしてくれて、3つだけ自分の感情に近いものを選ぶことができる。例えば、「満足」や「感謝」、「好き」「楽しい」のような比較的ポジティブな感情から、「不安」や「疲れた」「恐れる」や「怒り」、「嫌い」というようなネガティブなものまで。これがなかなか面白いもので、書いているときは「ムッ」としていても、いざ感情を選ぶ段階では「いや、意外とそんなにムッとする内容ではないよな」というように、タイミングが分かれていることで一歩引いた状態で、自分の感情を冷静に捉え直すことができる。
当たり前のことではあるが、生活をしていれば、いろいろな物事に反応せざるを得ない。例えば、朝の満員電車に「嫌だな」と思ってしまったり、難しい仕事に「できるかな」と不安になったり、はたまた、日常の些細な出来事に「うれしいな」と思ってみたりも。絶え間なく我々の心はさまざまな物事に反応してしまっている。特に、こういうことが続けば「はいはい、またこのパターンね」というような具合で心も学習し、まさに「パブロフの犬」といった様子で、即座に反応してしまう。
muuteを使い始めてみて思ったのは、僕らがいかに反射的に物事を解釈しているのかということ。思考を書き出していざ、感情を考えてみると、さっきまで思っていたこととは違う感情に移り変わっているとわかる。良くも悪くも、本当に気分に左右されるのが人間なんだなと、つくづく思わされますね。
『World's Smallest Violin』AJR
AJRというインディーズポップバンドの曲に『The Smallest Violin』という曲がある。タイトルだけ聴くとなかなかピンとこないだろうけど、ここ数年流行しているショート動画のBGMとしてよく使われていた曲だから一度聴いたらわかると思う。
World’s Smallest Violin. 直訳すると「世界でもっと小さなバイオリン」だが、これはいわゆるスラングみたいなもので「些細な悩み」とか「不平不満」的な意味があるらしい。文脈も踏まえて簡単に訳してみれば「誰か僕の愚痴を聞いてくれ」。
Oh my god, that’s so insane
(最悪だ、ばかげてるよ)
Oh my god, that’s such a shame
(最悪だ、恥ずかしい)
Next to them, my shit don’t feel so grand
(おじいちゃんたちと比べたら、僕の悩みなんてちっぽけすぎる)
But I can’t help myself from feeling bad
(でも、僕はどうしようもなく悲しい気持ちになっちゃうんだ)
I kinda feel like two things can be sad
(彼らもまあ、悲しいと思っているだろうけど)
The World’s smallest violin
(世界でもっとちっぽけな悩みだけど)
Really needs an audience
(誰かに聞いてほしいんだ)
歌詞を引用するために書いてみたんだけど、なんとまあ悲観的だなあと思う。確かにまあ、こういう気分になることってまぁまぁあるけれど、それにしたってもう少し自信を持っていいんじゃないかとも思ってしまう。あくまでポップ・ソングの1つだから、そんなに細かいことを言う必要はないのだけれど。
Somewhere in the universe
(宇宙のどこか遠くで)
Somewhere someone's got it worse
(僕よりももっと悪いことが起きている人もいる)
Wish that made it easier
(そう思えたら気持ちが楽になるって)
Wish I didn't feel the hurt(そう思えたら傷つかなくなるのにって)
でもまあ、こういう悩みって誰しもが感じたことがあるのだと思う。他の人にとっては些細なことでも、当の本人にとっては重大事項になりうる。逆もまた然り。要は、悩みそのものはあくまで絶対的なものであって、相対的な価値基準によって判断されうるものではないということです。
よく、「宇宙から見れば、今抱えている問題なんて〜」とか「あなたよりもっとつらい人がいる〜」とかって言い始める人がいるが、それは物事を極端に矮小化しているだけだと思ってしまう。
以前、といってもだいぶ前だけどフリーアナウンサーの宇垣美里が、テレビか何かで「私には私の地獄がある。あなたにはあなたの地獄がある」と言っていた。僕の解釈としてはこちらのほうがしっくりくる。「地獄」という言い方は置いとくとして、それぞれに抱えているものがあるのだからあまりズカズカと入らずに、愚痴や悩みを受け止めようとすること。つい、反射的に解決策とかそれこそアドバイスなんかをしちゃいそうになるところをぐっと抑えて。感情の赴くままに話してもらう。まあ、なかなか難しいことなんだけれど…。
The World’s smallest violin
(世界でもっとちっぽけな悩みだけど)
Really needs an audience
(誰かに聞いてほしいんだ)
So if I do not find somebody soon
(もしすぐに誰か見つからなければ)
I'll blow up into smithereens
(僕は粉々に吹き飛んで)
And spew my tiny synphony
(しょうもない交響曲を奏でるだろう)
Just let me play my violin for you
(だから君だけには、僕のちっぽけな悩みを聞いてほしいんだ)
何気ない会話で救われることもあるよねと
だいぶ話はそれちゃったんだけど、意外と人と話すことで気持ちが晴れたり、心が軽くなったりすることってあると思う。僕自身はあまり人に悩みや愚痴を言うタイプではないけれど、それでも気のおけない人たちとの会話でだいぶ気持ちが軽くなるし、物事の捉え方も前向きになったりしている。本当のところ。
つい最近は、そういう心の動きみたいなものに鈍感になっていたから、muuteのジャーナリングなどもきっかけにしつつ、自分のスタンスを見直していきたいよねと思う。別に何か問題があったわけじゃないけれど、まあ季節的なタイミングとして。