特許庁の本気…申請手続のデジタル化によって何が変わるのか
はじめに
こんにちは、商標登録サービス Toreru の宮崎です。
今日は、特許庁の申請手続きと発送手続のデジタル化についてお話します。
特許庁の説明によると、「現在電子申請ができない全ての申請書類について、原則として電子申請が可能となります」ということなのですが、全ての書類に一気に対応したことはすごいですよね。
この記事では、特許庁のデジタル化の詳細と、それが企業にどのような影響を与えるのかについて解説します。
特許庁のデジタル化の内容
概要
これまで紙書類が必要だった委任状、手続補足書、移転登録手続などが、インターネット出願ソフトを使って電子申請できるようになりました。これにより、申請作業が大幅に効率化されます。
ただし、印鑑が必要な手続きについては、デジタル庁GPKI電子署名アプリの電子署名が必要となります。そのため、出願人の電子署名が必要な手続きは、引き続き紙書類が必要かもしれません。
申請手続
申請方法
申請は「送付票(XML)」と「申請書類(PDF)」を用いて行います。これにより、申請手続きは大幅に効率化されます。
申請内容
以下の表に、特許庁が提供する申請カテゴリについてまとめました。
全カテゴリの説明はこちらで確認できます。
委任状や、審判関係は特に効率化の影響が大きいと感じます。
発送手続
発送方法
発送文書はインターネット出願ソフトを通じて手に入るようになります。これは紙の手続きが減少するだけでなく、デジタル化した情報が手に入ることにより知財管理ソフトに自動入力できる点で大きな変化です。
受け取る書類の形式
書類は、送付状(XML)、案件一覧(XMLとPDF)、発送書類(PDF)といった形で受け取ります。XML形式のおかげで、後にデータ分析などにも活用できます。
発送内容の詳細
それでは、具体的にどんな書類が発送されるのか見てみましょう。
特許(登録)証
権利として設定登録された証書
※特許(登録)証により、権利者であることを証明するものではありません。
年金領収書
権利維持にかかる登録料の納付があった際に送る領収情報
自動納付関係通知
申出人の申出により、毎年、自動的に予納台帳または指定銀行口座から特許料等を徴収する制度に係る通知
商標更新申請登録通知
商標権の存続期間が更新登録され、商標登録原簿に、納付年分、納付金額、納付年月日を記録したことを納付者に対して通知するもの移転登録済通知
登録原簿に権利の移転や表示の変更等にかかる申請内容を登録した旨を申請人に通知するもの ※通知書が無くとも権利者であることを主張できなくなるわけではありません。識別番号通知
特例法施行規則により申請人等に付与した識別番号にかかる情報を通知するもの包括委任状番号通知
特許出願等の事件を特定しない包括的な委任状が提出された際に、包括委任の番号を通知するもの
特許証や年金領収書などは頻繁にくるので電子化されるととてもありがたいですね。
次に企業や、特許事務所の影響を見ていきます。
企業側の影響
特許事務所を利用している企業
特許事務所に手続きを任せている企業にとっては、大きな変化は少ないかもしれません。ただし、特許事務所から届く書類の頻度が減ることで、ちょっとした手間が省かれます。
自社で手続きを行う企業
自社で手続きを行っている企業にとっては、デジタル化はかなり便利です。ただ、その代わりにXMLの仕様など新しい知識を覚える必要があります。
中小企業の"寂しさ"
中小企業では、特許証や登録証がよく社長室に飾られていますよね。デジタル化が進むと、そのような風景が少なくなってしまうかもしれません。少し寂しい感じがしますね。
特許事務所側の影響
効率がアップ
特許庁のデジタル化によって、特許事務所にも多くの利点が出てきました。その一つは効率化です。今までは、特許証、登録証、年金領収書、商標更新申請登録通知などの書類が大量に届きましたが、これが電子化されると手間がかなり減ります。
新しいスキルの必要性
しかし、全てがメリットばかりではありません。XML形式など新しい形式での知識が必要となるため、その習得が求められます。
移転登録の課題
また、移転登録は企業のPDFの電子署名対応が進んでいないと難しい場面もあります。ただし、電子署名対応をクリアすれば、収入印紙もクレジットカードで支払えるのは非常に便利です。
今後の特許庁のデジタル化で期待すること
インターネット出願ソフトのAPI化
今後は、特許庁がインターネット出願ソフトをAPI化することで、申請手続きがさらにスムーズになる可能性があります。これにより、企業は無料で簡単に手続きを行うことができるようになるでしょう。特に審査請求、特許料納付、登録料納付、更新登録料納付などは無料化していくと予想します。そのため、特許事務所の仕事量は減る可能性もあります。
審査のAI導入
審査がAIによって行われるようになれば、審査の迅速化とコスト削減が期待できます。これは、特許事務所だけでなく、出願人にもメリットがあります。
さいごに
特許庁のデジタル化が進む中で、申請手続きや発送手続きも大きく変わりつつあります。紙の書類から電子書類への移行は、特許事務所や企業にとって多くのメリットをもたらします。
最後までお読みいただきありがとうございました!