「AI vs 弁理士」からAIと弁理士のこれからの協業体制を考える
はじめに
こんにちは、商標登録サービス Toreru の宮崎です。
先日、Toreru Media で「AI vs 弁理士」第二弾の記事が公開されました。知財相談の対決で、弁理士が2勝、AIが1勝という結果が出ました。(ちなみに、第一弾のイベントはこちら)
この記事では、「AI vs 弁理士」からわかってきたAIと弁理士が今後どう協力していくべきかの話をしたいと思います。
AIと弁理士は協業体制が基本になる
AIが得意なのは、大量のデータを素早く解析、処理すること。一方で、人間、特に弁理士が得意なのは対人関係や総合的に考えること、クリエイティブに考えることです。
AIだけでは品質は上がらず、人間だけでは生産性が向上しない。そのため、今後はAIと弁理士の協業体制が基本になります。
どのように分業するか
では、どのように分業すれば良いでしょうか。下記の4項目で考えていきます。
平均値の回答はAI、外れ値の回答は人間
表現を整えるのはAI、人間味のある回答をするのは人間
多くの案を出すのはAI、その中から選ぶのは人間
60点の案を出すのはAI、それを90点に引き上げるのは人間
(1) 平均値の回答はAI、外れ値の回答は人間
AIはデータをたくさん読み込んでいますから、一般的な質問、例えば「商標登録とは?」に対して、瞬時に一般的に最も適切とされる回答ができます。
しかし、特許明細書や商標の意見書など、より専門的で個別的なケースでは力を発揮できません。こういった局面で人間が強いです。人間は柔軟に考え、個々のケースに適したアプローチができます。
(2) 表現を整えるのはAI、人間味のある回答をするのは人間
「AI vs 弁理士」で分かったことは、"人間味のある"対応が好まれることです。AIがどれだけ優れていても、感情や文脈を理解することは得意ではありません。なので、その部分は人間が担当するのが良いと思います。 一方で、正確な文法や流れるような文章が必要なときは、AIが得意としますので、その部分はAIに任せると良いでしょう。
(3) 多くの案を出すのはAI、その中から選ぶのは人間
AIは数秒で多くのアイデアや案を出せますが、その中で「これだ!」という最高のものを選ぶのは苦手です。人間はその選択において非常に優れた直感と判断力を持っています。
そのチェックや選択は人間の大きな仕事となります。
(4) 60点を出すのはAI、それを90点に引き上げるのは人間
AIが手早く基本的な60点の案を出してくれると、それは人間にとってかなり楽になります。具体的には、「中小企業が知財戦略をどう組むべきか?」という複雑な問題に対して、AIがスピーディーに初期の案を出してくれるのです。
たとえば、AIが「権利を棚卸して、取得していないブランド名の商標登録と特許取得をまずは検討することが重要」といった基本案を出してくれると、人間はそこから細かい戦略を練りやすくなります。
このような初めの一歩があるだけで、その後のプロセスがずっと効率的に進行します。
その後、人間がその60点の案を受け取って、自分の専門知識やセンスを活かし加筆修正します。文脈を読み取り、ニュアンスを加えることで、その案を80点、90点に仕上げていくわけです。この協同作業により、全体の品質が格段に高まり、より完成度の高い成果物が生まれます。
結論として
AIと弁理士がうまく協働することで、知財戦略が新しい段階に進む可能性があります。AIは表現の正確性と処理速度で優れていますが、人間のような洞察力や柔軟性は持っていません。逆に言えば、弁理士が持つ人間らしさは、AIが補完できない部分です。
この二つがうまく組み合わさることで、クライアントに対してより高品質なサービスがコストパフォーマンス良く提供できると考えています。これからもどのようにAIと人間が協力していくかを探り、そのバランスを取りながら進んでいきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!