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NY不動産サバイバル② 住宅物件の管理と流行りのマンスリーレンタル
【このシリーズについて】
ニューヨークで建築と不動産事業を立ち上げ、順風満帆に見えた矢先に、直面したテナントトラブル…。ニューヨーク屈指の弁護士ですら手を焼いた、まさに"事実は小説より奇なり"な不動産ホラー。足掛け2年以上にわたる攻防の記録を抜粋しながら、試練を乗り越えて得た気づきや実践的な知識をシェアします。
これはまさしくサバイバル。でも、この街には、それを超えるだけの魅力があります。世界中から才能と資金が集まり、不動産市場には無限のチャンスが広がる。この20年間、ニューヨークの不動産価格は上昇を続けています。
こんにちは、Masaaki Itoです。
前回エントリーから続き、ニューヨーク不動産のリアル をテーマに、私が手掛ける住居物件の管理の実態をお伝えしています。
ブルックリンでシェアハウス事業を立ち上げ
現在私が運営するCoralsは ブルックリンのクラウンハイツ、ベッドスタイ、ブッシュイック、ウィリアムズバーグ、グリーンポイント を中心に物件を展開しています。
最近は開発が著しく進み、白人層が目立ってきており、外から人がどんどん流入しているエリアです。
現在の主な入居者は、短期間ニューヨークに滞在したい人々。
”シェアハウス”と聞くとパリピっぽい印象があるかもしれませんが、Coralsの物件を選ぶ方は、清潔で実用的、ジャパニーズモダンの洗練されたデザイン空間を気に入って、選んでくださる方が多いです。
どちらかというと、忙しないニューヨークの街の中で、滞在の目標にしっかり集中できる精神と時の部屋のような宿を提供したいと思っています。
そのため、ほとんどが20〜30代、所得はやや高めな、
企業のインターン生(数ヶ月間だけNYで働く)
短期留学やサマースクールの学生
プロジェクトで一時的に滞在するヤングプロフェッショナル
お試しで数ヶ月間だけNYに訪れる人
が主な入居者層です。
なぜマンスリーレンタルを選んだのか?
もともと私は、1年リースの通常賃貸で物件を運用していました。
しかし、ニューヨークの不動産市場の変化を見据えて、途中から マンスリーレンタル事業 にシフト。
現在は*30日以上の滞在者向けに、家具付きの住居を提供 しています。
*30日ルール:ニューヨークでは、30日未満の短期レンタルはホテル事業とみなされ、規制の対象 となります。合法的にシェアハウス事業を展開するため、30日以上のレンタルが必須なのです。
より柔軟な賃貸モデルを採用したのは、
「熱いパッションでニューヨークを訪れる若者の滞在ニーズに応えたい」
「特に過密になりがちなシェアハウスの生活環境を改善したい…」
という想いがあったためです。
また、ちょうど コロナ禍で「Work from Anywhere(どこでも働ける)」トレンドが加速。
短期間だけニューヨークに滞在したい人が増え、市場の需要にマッチする形でマンスリーレンタルを展開したところ、非常にうまくいきました。
物件の立地選定で意識しているポイント
私は、物件選定では、ニューヨークの通勤・通学事情を考えたエリア戦略をとっています。そのため基本的には「マンハッタンに電車1本で行ける」立地で運営しています。
ただ、自分自身が土地勘を持ち、よく知っているエリアだから というのも大きな理由です。
不動産の購入に関心が高い方からよく「どのエリアが今熱い?」と聞かれますが、私の考えはこうです。
どのエリアにも良い物件も悪い物件もある
大事なのは、自分のビジョンに合う物件を選ぶこと
そのため、まずは 自分がよく知っているエリアからスタートするのが最善だと考えています。
また、物件選定の基準 - どんな物件を購入しているか?について、私は老朽化した物件や違反(バイオレーション)を抱えている物件 を好んで購入しています。
例えば、
廃墟のようなボロボロの建物
構造的に危険な状態の物件
こういった 市場価値が低く見られている物件 に、適切な修繕とユニークなデザインを施すことで、物件価値を向上させ、魅力的な賃貸物件に生まれ変わらせる ことに挑戦しています。
不動産デベロッパーとしては定石かもしれませんが、市場で 敬遠されがちな物件にこそ、大きく化けるチャンスがある! と考えています。
最初のうちは、廃墟の内見で「うっ…」となり怖気づくこともありましたが、いまではボロボロであればあるほどゾクゾクします笑
ニューヨークのテナント法と管理の難しさ
NYの不動産市場における最大の課題、それは テナントの権利が非常に強いこと です。
これは、かつてのニューヨークに劣悪な賃貸環境が多かった歴史が背景にあります。その反動で、今では 「テナント保護法」が極めて手厚い 状況になっていると聞きます。
具体的にどんなルールがあるのか?
30日以上住むとテナントの権利が発生 → 簡単に退去させられない
家賃未払いでも強制退去が難しい
電気・水道を止める、鍵を変更するのは禁止
退去を強要すると「ハラスメント」として訴えられるリスクがある
つまり、テナントを慎重に選ばなければ、問題が起こったときに非常に厄介になります。。
今回はこのへんで👋!
次回は、私が実際に経験した「最悪のテナントトラブル」と、その解決までをお話しします。
お楽しみに。