編集は悪なのか?:ギタリストの宅録仕事事情

僕が京都に住んでいながら、細々とではあるけど楽曲制作やギターの録音を続けていられるのは、作業が自宅のパソコンで完結出来るようになったからであるのは間違いない。

(今もそういうお話を下さるクリエーターの方々のお陰なのは言うまでもない)

DAW = Digital Audio Workstation、僕がパソコンで音楽制作をやりだした頃はオーディオを扱うことは出来なくて、いわゆる「打ち込み」しか出来なかったのでDTM = Desk Top Musicと呼んでたけど、「パソコンで音楽を作るソフト=DAW」という解釈で問題ない。楽曲制作もギターの録音も、DAWソフトを使ってやる。僕はDigital PerformerというDAWを使っているけど、業界標準のPro Toolsじゃなくても、特に問題感じることなく作業出来ているので、自分の好きなのを使えば良いと思う。

これなんか、恐れ多くもウォーキング・ベースを弾いてる。。。

アコギもこれくらいの音で録れる。これは曲自体も凄く気に入ってる。

この2曲は「これくらいのクオリティで録音出来る」という例。自分でギター・パートをアレンジしてるので、当然、再現不可能なフレーズを編集で作るようなことはしていない。ベースに関しては、アイデアと自分の技術のバランスが全く釣り合ってない時もしばしばあるので、↑ のウォーキング・ベースなどはとても人様にお見せ出来ないような過程を経て完成させている。

僕にギター・ダビングを依頼して下さるクリエイターの方々は、自分ではギターが弾けない方が多い。自分で弾けるなら、余程特殊なことでもなければ自分で弾くよね、そりゃ。

ギターが弾けない方が考えるフレーズを実際にギターで弾こうとすると、必然的に無理がある部分が出て来る。最近はギターの指板の絵が出て来て、それを使って打ち込むことが出来る音源もあるので、「このコード、どうやっても押さえられない😭」というのは減っていると思うが、「押さえられはするけど、異常にコード・チェンジが難しい」とか「異常に速い」というフレーズとは頻繁に出くわしてる。もっとも、それは僕が「無茶振り歓迎キャラ」で今まで生きて来ているから、そういうお話をいただけているだけかも?なので、宅録案件を請け負っているギタリストが全員、そういう困難に立ち向かっているのか?は未知数だけど。

僕の場合は、打ち込みで作られたギター・パートを差し換えて行くことが大半だ。その過程で、実際には演奏不可能なフレーズの場合とどう向き合うか?は人によって差が出て来ると思う。「ギターのことは詳しくないので、弾き易いように変えていただいて構いません!」と発注メールに書いてあることも少なくないけど、僕の経験では、フレーズを変えると「んー…何か違う。。。」ということもあったので、今はほぼ100%、提示されたフレーズ通りに弾くようにしている。

こんなフレーズ、ギターでは再現出来ない!と言うことは簡単だけど、そうすることでクリエイターの創造性を限定することもしたくないので、「出来ません」とは絶対に言わずに今に至っているけど、大変なことも少なくない。

こういうことを言うと「今は編集でどうにでもなるから」と言う人がいるけど、実際にはならないことの方が多いと思う。もっとも、ギター・ダビングに「何を求めるか?」にもよるので、「どうにでもなる」という価値観の人もいるとは思うけど。

僕が録音する時には

・実際にギターで弾いたニュアンス

・より良いサウンド

↑ を求められているので、編集することはあっても「ちゃんと弾いたみたい」に聴こえさせる為には、結局、ある程度弾ける必要がある。

例えば、コード・チェンジが難しいからといって、一つ一つのコードを別で録って行くことも出来るけど、実際に弾いた時にどういう風に聴こえるか?が分かってないと、編集で繋がったとしても不自然になるだろうことは想像に難くない。異常に速いフレーズも然り。「一部分だけなら速く弾ける」ことを繋いでも、絶対に不自然になるだろう。

こういうことを実現する為に、ギターが弾ける人は、まず通して弾けるように頑張ると思う。僕も昔はそうしてたし、それ以外の方法は考えられなかった、と言って良い。

何でもすぐに弾けるようになるくらい上手い人であればそれでも良いだろうが、僕の場合、全ての案件を実際に弾けるようになってから録音しようと思うと時間が掛かり過ぎてしまう。〆切があるのが仕事なので、実際に通して弾けるようにする自分の拘りよりも、〆切に間に合わせることを優先しないといけない、と思う。

そのためには編集もするようになったし、「1部分だけチューニングを変える」「1部分だけカポを付けて弾く」なんてこともしょっちゅうある。

(その方法をすぐに見付けられるか?も、わりと重要なポイントだと思う)

この一連の作業を「誤魔化してる」と思うのか「手段を選ばず、出来ることはなんでもする」と思うのか、ギタリストによって変わって当然だとは思うけど、僕個人の考えでは、ある程度は対応出来た方が良いと思う。そうすることで宅録のダビング案件をいただけるようになるかも知れないしね。

とはいえ、「何でも弾ける!」とは言えないのが現実でもある。
例えば、グルーヴ感満開なファンキーなカッティングを編集で作るのはまず無理だし、センスが問われるようなアドリヴ / ソロ、「ジャズっぽく弾いて下さい」みたいなオーダーは(今のところ)僕には来ないけど、実際にオーダーいただいても、とても苦労すると思う。この辺りのプレイはちゃんと弾くしかないと思う。

実際にどんな編集作業しながら録ってるのか?をお見せするような機会があっても面白そうなので、そういうセミナーとか出来たら良いね。

(♩=180で16分音符が延々続くフレーズとか、僕のテクニックでは再現するのはほぼ不可能だし。。。)

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