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投球時の肩外転と外旋角度
健常な現役プロ投手(MLB, MiLB)322名の投球中の肩外転と外旋角度の分析がありました。各投手は、十分なウォームアップ後に通常の距離(18.44 m)に座った捕手に全力直球を8から12球、各自のペースで投げました。各球ごとにストライク、ボールの判定もありました。
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各投球メカニクス期における肩外転角度は、ほぼ一定でした。前足接地時の平均が85.5º、肩最大外旋(MER)時が 91.7º、ボールリリース時が 90.7ºでした。外旋角度は、前足接地時の平均が30.9ºでMERの平均は165. 2ºでした。MER時の肩外転角度の大きさで球速に違いはありませんでした。
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前足接地時の肩上方力は、肩外転角度の322名の下位25%以下に比べ50-75%群と上位75%以上群で増加していました。同様に、MER時の肩外転角度の違いから肩上方力に違いはありました。肩上方力は、三角筋の働きが関与し、肩峰下インピンジメントを引き起こすリスクがあります。
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前足接地時の肩外旋角度の大きさで肩前方力に違いはありました(下記の表参照)。
MER角度の大きさ上位50-75%群と75%以上群は、下位25%以下に比べ球速が増加していました(それぞれ138.6, 139.3, 135.7 km/h)。一方で、最大MER角度の大きさ上位50-75%群と75%以上群は、下位25%以下に比べで肩牽引力が増加していました。最大MER時の肩牽引力は、関節唇損傷を引き起こすリスクがあります。
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全投球の回帰分析から前足接地時の肩外転10º増加で肩上方力が2.6% BW(体重比)増加します。さらにボールリリース時の肩外転10º増加で肩上方力が3.7% BW、肩牽引力も11.7%増化します。
MER 10º増加で球速2.2 km/h増加しますが、肩上方力が2.3% BW、肩牽引力も5.9% BW増加します。諸刃の剣と言ったところです。
ボールリリース時の肩外転増は、肩上方力、肩牽引力に相関し、このことからボールリリース時の肩外転10º増加で肩上方力3.7%BW増化します。
腱板内旋筋の肩甲下筋は、肩甲上腕関節の圧迫と関節内の合致に寄与します。しかしMER時は上腕骨頭が外旋と同時に関節上腕靭帯によって後方に押し戻されるので肩甲下筋へのストレスが減ります。しかし肩甲下筋は、MER時の上腕骨頭の上方移動を抑えることを考えると、投球中の肩外転と外旋角度によっては肩甲下筋のオーバーユース障害リスクを高めます。
まとめ
投球フォームは、オーバーヘッド、スリークォーターあるいはサイドスローなどさまざまで行われていますが、あくまでも胴体の傾きであって、肩外転角度によるものではありません。肩外転角度は、前足接地からボールリリースまでほぼ一定です。しかし、少しの角度の違いから肩上方力の大きさが増し、肩峰下にストレスを与えます。