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店をオープンするまで / (2)コーヒーをサーヴィスする人

レコールバンタンでのバリスタ課程はゴールが資格取得でした。JBAバリスタライセンスは一般社団法人日本バリスタ協会(JBA)が認定していて、イタリアンバール(イタリアのコーヒー店)のスタイルを下敷きにした資格です。

・・・あれ? と疑問に思った方は鋭いです。レコールバンタンは資格取得ではなく技術習得に重きを置いている専門学校なのですが、バリスタ課程のゴールは資格取得です。ですが、この資格は実技に8割の重心が置かれている実践的な資格です。バリスタ課程で実技を学び、その成果として実技の資格であるJBAバリスタライセンスを取得するまでが一連の流れになっています。

資格認定の試験はペーパーテストもありましたが、試験の本体はやはり実技です。制限時間10分の間にエスプレッソ8杯、カプチーノ6杯を連続作成する内容なのですが、それだけではありませんでした。

試験は、始めますと宣言して試験官にお水をサーヴ(提供)するところからスタートします。エスプレッソも抽出するだけではなくきちっと試験官にサーヴして、それからカプチーノの作成に戻ってまたきちっとサーヴして終わります。

作成中に衛生面の考慮をしているか、所作は丁寧か、飲食業に従事するプロフェッショナルとしての心配り、熱意、明るさを意識できているかなど、コーヒー店に立って仕事をするために必要なサーヴィス面の技能、ふるまいも重視されています。そのうえで、当然ながらエスプレッソとカプチーノの味、見た目といった出来栄えと作成プロセスが中心に評価されて、さらに10分以内に収めますのでなかなかの高いハードルでした。

作成オペレーションを無駄なく組み立てないと時間内に収まりませんが、カップのクオリティーは何よりも重視されていましたし、サーヴィス面の評価を得られるオペレーションにする必要もありますので、ただ早ければいいというものではありませんでしたが、ぼくも一生懸命やってどうにか試験1回で合格、認定をいただきました。

お客様にコーヒーをサーヴするときのカップの向きの意味、スプーンの置き方の意味、カップの扱い、そしてバリスタとはどんなことをする仕事なのかなど、技術のみならずモノの捉え方、そして店に立って仕事をするということの基礎を実践的に教えてもらえましたから、ぼくは飲食業で働くことが初めてだったものの、アルバイトとしてコーヒー店で働いたときも、その後自分の店で営業をスタートしたときも、こうしたサーヴィス面で困ったことはありませんでした。

こういうサーヴィス面のことはテキストに載っていて、座学で学び、それを実践するということではなく、カプチーノ6杯、エスプレッソ8杯の連続作成をトレーニングする中で実地で教わっていきました。ぼくにとってはそのスタイルが相性よく、自然と染み込むように吸収できました。

たとえばエプロン。エプロンの前面には手で不用意にベタベタ触れませんし、荷物など持ち上げるときも荷物はエプロンに接触させません。エプロンの前面はキッチンと同じですので、コーヒーをつくるカウンターテーブルと同じレベルで衛生的に取り扱います。エプロンは公私を隔てる境界でもあります。

レコールバンタンで受講したJBA仕込みのバリスタ課程では、こんなふうに仕事としてコーヒーをサーヴィスする人の基礎も実践的に修得することができました。

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