誰からも好かれたい人に贈る「嫌い」という言葉
「いろんな人に好かれたい。」日本人の多くの人はそう思っているのではないでしょうか。いや、「嫌われたくない。」そう思っている人の方が多いのかもしれません。
「あなたのこと嫌い」って言われたら誰でも落ち込みますよね。でも今日はあえてそんなあなたに「嫌い」という言葉を贈ります。
そう思わせてくれたのは北海道の旅する作業療法士・まさやんさんです。まさやんさんは作業療法士の仕事をしがてら、仕事外の活動にも参加し、今年の2月から「北海道ランニング旅」と銘打って北海道をランニングして北海道中の人に会って回られるそうです。
そんな交友関係の広いまさやんさんですが、口から出てきたのは「僕は本当に自分の大切にしたい人とだけ関わるんだ!」という言葉。
まさやんさんの5つの分岐点のストーリーを通じて、「嫌い」という言葉の深さに迫ります。1つの映画を見ているように読んでみてください。
分岐点① 人生最大の挫折から這い上がり、交友関係を広げる
まさやんさんは作業療法士の助手として社会人デビューを果たしました。
ーーまさやんさんは最初からやりたいことや交友関係があったんですか?
いいえ!そんなことありませんよ!僕国家試験1点差で落ちて。その当時は人生最大の挫折だったんですよね。
作業療法士の助手をしながら国家試験の勉強をしていたんですけど、当時の先生に「働きながら勉強して受かった人を見たことがない」と言われたのがマジで悔しくて。
だからそのときは働きながら毎日6時間勉強してました。睡眠時間は3時間で、職場に通うまでの移動手段は自転車かランニングでした。
ーー努力量がすごい。。
本当にやりすぎるぐらいやってて。半年間はそうやって勉強していました。それから自分の努力の限界が異常なまでに上がって。そのあとはとことん健康について追及してやろうというモチベーションに変わりました。
ーーとことん決めたらまっすぐなんですね。
はい。それからリハビリ関係の研修とか健康にまつわる研修とか行きまくったんですよ。その中で人脈や関わる範囲が広がってきて、医療従事者だけじゃない方々とのかかわりが増えて、『みんなに好かれたい』、というふうになっていきました。社会人2年目から5年目ぐらいまでで一気に広げました。
作業療法士をしながら、健康を究め、交友関係を広げていくまさやんさん。ここで人生2度目の分岐点を迎えます。
分岐点② ばあちゃんの病気をきっかけに「生きがい」を見つめなおす
あれは社会人4年目のときでした。ばあちゃんが余命を宣告されたんです。
そうなったときに今までは健康を追求してたのが、『生きるってなんだろう』。って生死のことを考え始めて。そもそも生きがいって何だろう。人生ってどう歩んだら幸せだろう。っていうのを考え始めました。
仕事してる時間が生きがい?家族と一緒に過ごす時間が生きがい?スポーツしてる時間?人の笑顔を見ること?人によっていろんな定義があるなって思って。
ーーなるほど。どんどん人について深く考えるようになっていったんですね。
はい。もうちょっと解像度を上げていくと地域に住んでる人とか、環境面ってどうなんだろうとかそういうのに関心を持ち始めて、個人的に地方に行ってあちこち視察しに行きました。
地方の高齢化率だったり、どんなサービスに取り組んでいるかっていうのを。それから環境っていうものを見るようになって。深くなっていきました。
生きがいを持っている人は自分の人生に納得している
どうやら現場を見てると、生きがいを持っている人って、「自分の人生に納得してる」なって思って。
自分のやりたいことや自分の好きなことで生きていくってちょこちょこ目にすると思うんですけど自分が納得している選択をしていたら、たとえ悪い方向に向かったとしても「どうやったら改善できるか」って考えるんですよね。
ーーなるほど。その生きがいを持った人って例えばどんな人だったんですか?
2年前くらいから1年間ぐらい担当している80代のおばあちゃんなんです。その人は東京の大学教授で。当時は女性で教授をやってる人なんていなかったので50~60年前にはなかったところを開拓していった人なんです。
その人は本読みすぎて、歩きながら本読んでるぐらいです。でもそのおばあちゃんはビジョンややるべきこと生きがいが明確だからたとえ体がしんどくなっても80代になっても論文書いてるんです。
だからおばあちゃんは僕に聞いてくるし、自分も話すから会話のキャッチボールをしてる感覚になれたんです。80代で意見が言えてこれが生きがいだって明確に言えてるのがほんとにすごいなと思いました。
ーーすごい。僕までエネルギーが伝わってきます。
生きがいを持ってる人は自分の人生に納得しているんです。だから文句が出ない。よいうより、文句が文句で終わらないのかもしれませんね(笑)
自分の人生に生きがいを持った人と出会えたまさやんさん。ここから自分の人生軸を形成していくようになります。
分岐点③ 『旅する作業療法士』を決めた覚悟
僕は2019年1月から「旅する作業療法士」と肩書きをつけて覚悟を決めました。この時に健康で生きやすい社会づくりをするっていうビジョンを決めたんです。
ーーすごい覚悟ですね。「旅する作業療法士」を名乗りはじめたきっかけを教えてください!
医療・介護は人と関われるんですけど「自分しか関われない関わり方をしよう」と思ったのが一番の理由ですね。
理学療法士、言語聴覚士、作業療法士合同の協会ができて北海道の各市町村に担当者を作り、北海道の医療福祉をサポートする感じができました。でも圧倒的にスピード感がなくて。。自分は早く動いて、生の声を聴きたいと思うようになりました。
ーー「旅する作業療法士」にはどんな意味が込められているんですか?
1つ目は物理的な旅です。実際に色んな地域に行って生の声を聞きたいなと思いました。
2つ目は経験を旅するという意味です。何もチャレンジしてない自分から、何かチャレンジした自分、そのプロセスが旅のようだなと思ったからです。このプロセスってチャレンジしなければ生まれないから、やったことない挑戦をこれからしていきたいと思って「旅する作業療法士」と覚悟を決めました。
10万ぐらいかけて書家の先生に書いてもらったぐらい思い入れは強いですね。
ーー名乗り始めてから2年経つと思うんですけど紆余曲折とかなかったんですか?
ありましたよ!2つですね。
1つ目は始めたことをやめちゃったことです。
2019年は大きく4つのことをはじめました。Youtube、ブログ、お試し1か月移住、あとクラウドファンディングの4つです。
でも、中には辞めちゃったものもあって。迷惑をかけた人もたくさんいます。
ただそれでも、「何かチャレンジするときのハードルが下がって、一歩踏み出しやすくなった」ことはほんとにやっていてよかったなと思っています。
2つ目はいろんな人と付き合いすぎて、冷たい目線を何人かに向けられていたことです。
安定を求める人たちには冷たい目線を感じてましたし、家族からも「なにやってんだ!」と全然理解されませんでした。
でもあまりにもいろんな人に好かれたかったので、「好き嫌い」の線引きができなかった2019年だなと思います。
紆余曲折がありながらも色々な場所に出向いて交友関係を深めていくまさやんさん。そんなまさやんさんについに限界が来ます。
分岐点④「誰かに好かれたい」の限界
去年の話です。介護の会社に転職したときにドクターストップがかかりました。
その会社はやりたいことをやらせてもらえないし、駒のように使われるような環境でした。
会社外でやってた取り組みが楽しくて±ゼロでメンタルを保ってたんですけど、会社の時間が長いから気持ちがマイナスよりになってきました。そんなある日、初めて社会人になってブチギレたんです。
ーーブチギレた...何があったんですか?
デイサービスの送迎で認知症のおばあちゃんを迎えに行ったんです。事前に社長が電話したときは「いくよいくよ」と言ってたんですけど、結局僕が行ったら「行かない」の一点張りだったんです。
社長は「1回行くと言ってるんだから連れてこい」って言われて。結局連れてこれなくて口論になって。これがきっかけにはなりましたけど誰もに好かれたいと思っていた日々のフラストレーションがたまって限界を迎えたのだと思います。
そこから自律神経がおかしくなったんです。通勤中に吐き気やめまいを感じるようになって。最終的には笑えなくなって感情を失いました。怒りも喜びも嬉しさもない。まさにピークでした。自分は笑顔が強みなのに放心状態で。人じゃなくて機械のような状態でした。
2020年3月12日にドクターストップがかかって。正直死にたくなったし人にも会いたくなかったです。
ーー本当につらかったんですね。
はい。ごはん食べて風呂入って寝る、そんな最低限度の生活だけでした。でも、それでも、こういう今のリアルな状況を発信してみようと思ってSNSで公開してみたんです。
そしたらいろんな人が声かけてくれて。
1回しか会ってない道外の人とかも連絡くれたんです。実験的だったけどアクションを起こしてよかったなと思いました。共有することで同じような経験する人が思ってたよりいるんだなと思って、兆しが見えました。
少しずつ会話のキャッチボールを始めるもまだ「当時は本気で笑えなかった」と話すまさやんさん。そんなまさやんさんは「心からの笑顔が戻ったきっかけがある」と言います。
分岐点⑤ あたたかさを感じ、「誰にでも好かれたい」から「この人は好き・嫌い」へ。
僕がどん底まで落ちたときに、8月奥尻島ゲストハウスの「imacoco」のオーナーの人に「放っておけないからおいで」って言われたんです。
このオーナーは子どもが3人いて、滞在中は子どものお世話をしていました。子どもの無邪気な笑顔につられて自分も笑えるようになりました。
気分転換に海沿いを走っていると、海が荒れてきて、「このまま飛び込んだら死ねるな」と思ったんですけど死を覚悟したら「やっぱり死にたくないな」と思って。
やっとそこから「自分って何やりたいんだろう?」と思い始めて、関わる人も自分の好き嫌いで厳選するようになりました。自分の直感を信じて自分の本当に大切にしたいもの、人と関わることを決めました。
ーーすごい、その判断ができるんですね!
はい!一回人間不信になってるから薄っぺらいこと言ってる人は直感でわかるようになりました。初めて出会ったのに初めて出会った感がない人は「この人のこと好きなんだろうな」と思います。
逆に僕の「嫌い」の指標は
・発言一つ一つに薄っぺらさがあって深みを感じない人
・めっちゃ説得してくる人。会話のすり合わせができない人。
です!
ーー誰にでも好かれたい人が「嫌い!」と言われる人になったんですね。
自分が嫌いって厳選できるのは自分が納得した人生を送れている1つの基準になると思います。好き嫌いを言えないって納得してないってことです!
「嫌い」という言葉を口に出すことで前を向くことができたまさやんさん。勇気を出して「嫌い」ということで本当に大好きな人は誰か、大好きなことは何か。そんな軸が定まるのではないかと思いました。
「誰からも好かれたい人」「誰にも嫌われたくない人」は「嫌い」ということばを口に出してみてはいかがでしょうか。そうやってストレスをため込む人が少しでもスッキリすることを願って今日は筆をおきたいと思います。
北海道に移住した新社会人・まーきち
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