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イーサリアムはペクトラアップグレードで何が変わるのか
2025年第1四半期にイーサリアムで
ペクトラアップグレード
が予定されています。
このアップグレードでは
EVM Object Format
PeerDAS
EIP-7702
が実施される予定になっています。
とはいえ、このような専門用語を並べられても
「よくわからん」
となってしまうのが普通の人の感覚でしょう。
実際web3エンジニアの私でも、この情報だけ与えられたら
「EVMのformatに改善が入って、DA(データアベイラビリティ)にでも変更を加えるんだろうか」
くらいしかわかりません。
なので、やはり皆さんと同じように調査が必要になります。
そして調査をした結果、現時点でわかっていることをまとめたので、今回noteの記事として公開します。
というわけで今回は
イーサリアムはペクトラアップグレードで何が変わるのか
ということについて記載します。
具体的には
EVM Object Format
PeerDAS
EIP-7702
について説明します。
EVM Object Format
最初は
EVM Object Format(以下EOF)
です。
EOFは一連のEIPで構成されるEthereum仮想マシンの重要なアップグレードです。
EIPとは、Ethereum Improvement Proposalsの略で、イーサリアムをより良いものにするために議論される改善提案です。
EOFのEIPは以下が示されています。
EIP-3540: EOF - EVM Object Format v1
EIP-3670: EOF - Code Validation
EIP-4200: EOF - Static relative jumps
EIP-4750: EOF - Functions
EIP-5450: EOF - Stack Validation
EIP-6206: EOF - JUMPF and non-returning functions
EIP-7480: EOF - Data section access instructions
EIP-663: SWAPN, DUPN and EXCHANGE instructions
EIP-7069: Revamped CALL instructions
EIP-7620: EOF Contract Creation
EIP-7698: EOF - Creation transaction
特設サイトのリンクも貼っておきます。
おそらく、読者のほとんどの人は読み飛ばしたか、読んでも理解できないと思います。
しかしご安心ください。
web3エンジニアでも95%のエンジニアは理解できません。
なので、要点だけをかいつまんで説明します。
これらの改善は
イーサリアムの心臓部であるEVMの問題点を解決し、性能を向上させる取り組み
になります。
具体的には
jumpの改善による、ガスコストの削減、優れた解析特性の追加
より効率的なコンパイラ開発が可能になることで、開発者の効率が上がり、より幅広い開発者の参入が期待できる
などの効果が期待できます。
あなたが開発者であれば
EVMバイトコードが改善される
と理解しておきましょう。
EVMバイトコードとは
6080604052....
のような16進数を並べたコードです。
solidityで記述したスマートコントラクトのコードをビルドをすると、このバイトコードに変換されます。
さらにバイトコードは、EVMが理解できるオペコードに変換して利用します。
6080604052....
↓
PUSH1 0x80 PUSH1 0x40 MSTORE...
つまりEOFとは
スマートコントラクトのビルド等で作成されるバイトコードとオペコードの追加仕様
です。
この改善で、より効率的な開発ができるようになることが期待されています。
PeerDAS
PeerDASは
データ可用性サンプリング(Data Availability Sampling)ソリューション
です。
PeerDASにより
すべてのノードがすべてのデータをダウンロードすることを必要としないでも、すべてのデータが利用可能であることを保証することが可能になります。
これにより
レイヤー1のデータ可用性(Data Availability)がボトルネックになってしまっているレイヤー2のRollupシステムの中で、イーサリアムユーザーにスケールをもたらすことができます。
しかし、PeerDASは、2024年8月現在でもまだReviewの状態です。
https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-7594
なので、2025年第1四半期には間に合わないのではないかと個人的には思っています。
EIP-7702
EIP-7702は
スマートアカウントの新しい実装
です。
スマートアカウントを知らない人は、以前に解説記事を書いたので一読ください。
EIP-7702では、新しいトランザクションタイプ(EIP-2718)を追加することで、EOA(外部所有アカウント)でスマートコントラクトを使えるようになります。
このEIPの特徴は、最終的なアカウントの抽象化と前方互換性があるように設計されていることです。
前方互換性とは
新しいシステム向けのデータなどが古いシステムでも使用できること
です。
具体的には、
白黒テレビがカラーテレビ放送を受信して白黒で表示できること
などが挙げられます。
EOAがスマートコントラクトアカウントになるまでには、まだ時間がかかるでしょうが、この規格によってスマートアカウント導入が少しづつ進むことを期待したいです。
まとめ
今回は
イーサリアムはペクトラアップグレードで何が変わるのか
ということについて記載しました。
この記事を書いている2024年8月時点では、仕様が100%固まっているわけではありませんが、大枠の内容は決まっています。
結論としてペクトラアップグレードの改善については、web3のシニアエンジニアは内容を把握しておく必要がありますが、それ以外の人は何も知らなくて良いと思います。
なので
ペクトラアップグレードによってネットワークに不具合がでないように無事実行されることを祈っておきましょう。
また、このアップデートは地味なので、イーサリアムの価格が大きく動くことも考えにくいです。
ただ、イーサリアムの将来に必要な大切な改善なので、将来の投資だと思って、気長にイーサリアムの成長を待つことにしましょう。