ANDで考える働き方:情報と体験の両方を獲得できる働き方を選択する
僕らは物事を、良いか悪いか、正しいか間違いか、勝ちか負けか、攻めか守りか、すぐに二項対立軸で考えてしまう癖がある。
コロナ禍後、よく話題になる二項対立がある。
果たして、リモートワークか、出社か。オンラインか、オフラインか。
これらの問いは、簡単な問いではなく、複雑性の高い問いだと捉えた方がいい。この問いの答えを出すときは、もっと視野を広げて思考する必要がある。自ら二項対立で考えてしまう罠にハマりに行くのは避けるようにしたい。
ヌーラボはリモートで働いている
ヌーラボは普段、リモートで働いている。2020年8月に行った勤務地条件廃止以降、居住地を問わずに採用活動を進めた結果、従業員の居住地が全国20都道府県を突破した。(参考:2023年06月05日、ヌーラボ、勤務地条件を廃止した採用活動の開始から3年で従業員の居住地が全国20都道府県を突破)
おそらく、フルリモートで上場できた数少ない企業のうちの一つだ。
オンラインで届けられるものは、回線にのって運ばれる「情報」が主になる。互いに離れて働く不便さのもとで、自社のサービスを使って、情報を共有したり交換したり、工夫をしながら日々進捗している。
情報は非常に効率的で加工しやすいし、検索も容易だ。あらゆる仕事をデータにしたり、情報化することによって、共有も容易になる。機械翻訳にかけたり、音声読み上げソフトを利用したりすることで、アクセシビリティも向上する。物事を情報化するメリットは、ヌーラバーであれば誰でも知っている。
そのような状況の中、情報化の難しい体験(身をもって経験すること)を得る施策を二つ実行したので紹介したい。そして、「オンラインか、オフラインか」のような二項対立的な問いから解放され、ベストな解を紡ぎ出すためのヒントを感じ取っていただければいいなと思う。
ここで書く「体験」は、主に人と人とがオフラインで出会い話しあい、そして共感することだ。さらに付け加えると、その他、第五感で感じることのできる全てだ。
リアルな場で開催した「General Meeting(社員総会)」
ヌーラボでは、有志によって実行委員会が毎年結成され、企画・運営する General Meeting (全社総会)が開催されていた。全ヌーラバーが福岡市に一堂に集い、ヌーラバー同士の交流機会を創造し、今後の戦略の共有や、コミュニケーションの促進、そして強烈にポジティブな思い出づくりをしてきた。(参考:「Backlog」の会社がわざわざ年に1度オフラインで集まる理由)
そんな活動も、2020年初期からはら始まったコロナ禍の影響を受けて、停止せざるを得なくなり、しばらくの間、開催がされなくなった。しかし、その間も新しくヌーラボに入社する人も増え、オフラインで交流することもないまま、ここ最近の5年間を過ごしてきた。
きっかけは、「ヌーラボ20周年」だ。コロナ禍の雰囲気もなくなりだした頃、「昔やっていた General Meeting のように全員が一堂に集まることはできないか」という声が聞こえるようになり、それでは20周年という節目ということもあり一堂に集まろうということで、 General Meeting が開催の運びとなった。
日本国外のヌーラバーが参加できなかったという大きな「足りなさ」があったが、それ以外は、実行委員会のおかげで熱気が溢れる「体験」に満ち満ちた催しとなった。(参考:ヌーラボは創業20周年!5年ぶりとなるGeneral Meeting 20th Anniversary Editionを開催しました)
体験は記憶の定着に役立つ。例えば、会場で今後の戦略を聞いたヌーラバーたちに置いては、学習科学の16原則のうちの以下の原則に沿って、情報を体験と紐付けて記憶するなどの効果を発揮するだろうと思う。(参考:【特別公開!】最先端ミネルバ大学で最初に学ぶ思考法を初公開します。)
Evoke Emotion:感情を喚起させる材料を用いて記憶を関連づけ、思い出しを円滑化する
Induce Dual Coding:文章を読みながら情景を思いうかべるなど、五感を複数使うことで記憶は強化される
実施した効果はやがてアンケート結果としてまとめられ、各々の感想はテキストになっていき、情報化されていく。情報は、参加できなかった人たちのための理解促進や、次回開催時のための参考資料として利用される。また、同様の催しをする場合に、経営判断が必要なタイミングで何かしらの引数として活用される。
一方で、一人ひとりの体験は、なかなか情報化できないようなものがあったと思う。さらに言えば、情報化されたとしても、情報を得る方の知識や感情知性が必要になるようなものがあっただろうと思う。そういうものは、もう、共有のできない一人ひとりのための大事な何かだ。
ユーザーに会うためにベトナムのハノイへ「Backlog User Meetup in Hanoi」
コロナ禍の影響があったのは、 General Meeting だけではない。海外出張もできない時期が続いた。その間、得ている情報を見て、契約数の増加具合や、どの国でヌーラボのサービスが使われているのか知ることができていた。
情報は非常に便利で、自分の仕事部屋に居ながらにして、たくさんのことを知ることができる。一方で、ユーザーと会って話しあい、共感しあうような体験がないと、情報の読み方に迷うなどの課題にぶつかってしまう。また、ユーザーの仕事や生活の解像度を高めることも難しい。
今回は、ベトナムのハノイに数名で足を運び、ミートアップや会社訪問などを行った。企業だけではなく、サンアスタリスクさまの協力を得てハノイ工科大学にもお邪魔させてもらい、授業風景を見せてもらったりした。
街の騒がしさ。匂い。埃っぽさ。遅刻して教室に入ってくる学生の緊張感。濃いコーヒー。逆走してくるバイクの集団。飲み会で何度も行う乾杯。ビールの味。会社では靴を脱ぐ習慣。フォーの旨さ。バス停の広告。道路の自由さと、17:00から混みだす交通事情。全て、体験だ。
それらを身をもって感じて欲しく、開発に関わり、後日出来るだけ声を発して周りに共有してくれるだろうヌーラバーと一緒に過密スケジュールをトラブルもありながら体験した。
実際に利用してくれているユーザーやお客さまと対話して、我々のサービスの話だけではなく、どのようなビジネスを展開していて、どのような仕事内容で、どのように他のサービスも含めて利用しているかなどを対話した。体験から得れるインパクトは強烈で、街の喧騒や匂いなど五感と紐付けて持ち帰ってもらいたいものばかりだった。
そして、日本以外の土地であるベトナムのハノイで自分たちのサービスが使われていることについて、「知っている」から「体験している」への変換が行えたと思う。この外から見ても効果がわからないマインドセットの変化が、後々、とても大きな一歩になる。
再度問う「リモートワークか、出社か」「オンラインか、オフラインか」
情報と体験の両方を獲得できる働き方をするのが良い打ち手になると思う。ANDで考えて、どちらもやる。双方のいいところだけ使っていく。
そして、今はヌーラボはリモートワークを中心に働いている。情報は多く摂取できていると思うが、意識して行動しないと、体験を得ていくことは難しい。現時点で言えることは、偏りを避けるように「体験を得るために部屋を出よう」ということだろうと思う。
ヌーラボは本日(2024年3月29日)で20周年。ご支援、誠に感謝している。これからも引き続き、よろしくお願いたい。
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