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【訪問看護の経営】月商300万円と1,000万円には大きな壁がある!?【3つのポイント】

訪問看護ステーションの運営は、地域に根差した医療サービスの提供として、社会にとって欠かせない役割を担っています。

これからも需要が伸びる業界であり、起業を目指している人もいるかと思いますが、スタートする際には多くの障壁が待ち構えています。

挙げれば数え切れないくらいの障壁があるかと思いますが、その中でも月商によって大きな壁があることはあまり知られていません。

今回は、その月商による壁に触れるとともに、訪問看護の経営・運営で重要な3つのポイントまでをお伝えします。

実際、私はえん訪問看護ステーショングループという訪問看護ステーションを経営していますが、その経験をもとに書いているので、これから訪問看護事業を始める方や、すでに運営している方はぜひ参考にしてみてください!


訪問看護事業のスタートアップの壁⁈

訪問看護事業を起業するのであれば、どんどんと売り上げを伸ばしていきたいと思うのが当然でしょう。

月商100万円、300万円、500万円、1,000万円…と夢は膨らむばかりですが、私は「月商300万円」と「月商1,000万円」には大きな壁があると思っています。

つまり、売上が足踏みしやすい額ともいえ、多くの事業所が停滞し、成長を阻まれてしまうことが少なくないと考えています。


月商300万円の壁

訪問看護ステーションを立ち上げた多くの経営者から、月商300万円前後で足踏みしてしまうという相談をよく受けます。

結論、この段階での壁は、主に「採用力」と「マネジメント力」の不足が原因と言い切れます。

採用が難航してスタッフの充実が図れないと、売上を上げるための訪問件数が増えず、300万円を超えるのが難しくなります。

この壁を突破するためには、採用とマネジメントの強化が不可欠です。

月商300万円の壁をこえ、一度500万円を超えてしまれば、1,000万円までは比較的順調に成長していける印象を持っています。

そのため、最初から高みを望みすぎるのではなく、まずは月商300万円を超えるためにはどうしたら良いかという点で経営を始めていくのが重要になります。


月商1,000万円の壁

その次に訪れるのが「月商1,000万円」の壁です。

これは、1事業所としてのマネジメント能力の限界が見え始める売上ラインでもあります。

1事業所で月商1,500万円から2,000万円を超えるケースは少なく、それを達成するには、組織をチームに分ける、もしくはマンモスステーションとして成長させるような初期構想が必要になってきます。

経営が安定し、利益が出てくるこの段階では、次の成長ステップとして新しい事業所の展開が考えられます。

しかし、ある程度の利益は得られている状態のため、多くの経営者はリスクを恐れて2店舗目の立ち上げに躊躇する傾向もあります。

結論、新しい事業所を展開するか、現状のステーションで維持するかの正解はないと思っています。

経営スタンスは人それぞれなので、どこまでやっていくかは経営者次第です。

ただ、まとめると月商300万円前後で停滞している状態は超危険であることには変わりありません。

この段階では、売上の停滞が経営リソースやスタッフに悪影響を及ぼし、最悪の場合、事業そのものが停滞し続けてしまう「沼」に陥るリスクが高まります。

まずは300~500万円以上、できれば1,000万円を安定して超えることを目指していきましょう。


訪問看護ステーションの運営・経営で大事なポイント3つ

では、その月商の壁を越えていくためのポイントをお伝えしてまいります。

月並みのポイントになってしまい申し訳ないのですが、やはり以下の3つはどこにいっても超重要になります。

  1. 「マネジメント」

  2. 「採用」

  3. 「エンゲージメント(離職率)」


1. マネジメント

マネジメントは、訪問看護ステーションの運営において最も重要な要素の一つです。

具体的には、ルール設定とその適切な運用、スタッフへの公平な評価、厳しさと愛情を兼ね備えた関わり、そしてスタッフや管理職が成長できる環境づくりが求められます。

特に訪問看護の現場では、スタッフ一人ひとりの自主性が重要です。

そのため、マネジメントが甘すぎても厳しすぎても組織全体の成長を阻害してしまいます。

【具体案】

  • ルールを明確に設定し、スタッフ全員に共有する

  • 公平な評価制度を導入し、定期的にフィードバックを行う

  • スタッフが成長できる研修プログラムやキャリアパスを提供する

  • 厳しさとサポートのバランスを取り、スタッフの成長を促す環境を作る


このように、スタッフが仕事を通じて成長できる環境を提供することが、モチベーション維持につながります。

適切なルールを設け、それに基づいて公正な評価を行うことで、組織全体のパフォーマンスを引き上げることができます。


2. 採用

採用は、訪問看護ステーションの運営を成功させるためのカギとなります。

現在、訪問看護業界はレッドオーシャン化しつつありますが、各社採用力が弱いため、採用力を強化すればまだまだ優位に立つことは可能です。

特に小規模な事業所では、資金力が限られているため、人材紹介会社に依存することは難しいでしょう(というか人材紹介会社を乱用してたら利益はほぼ残らない…)。

そのため、SNSやホームページ、リファーラル(紹介)採用などを活用して、独自の採用戦略を打ち出すことが重要です。

【具体案】

  • SNSやホームページを活用し、効果的な採用戦略を展開する

  • リファーラル(紹介)採用を推進し、スタッフからの紹介を活用する

  • 採用プロセスを迅速化し、適切な人材をタイムリーに確保する


弊社も採用がすごく強いわけではありませんが、高知県の地域では頭2つくらい抜けているため、採用にはそれほど困っていません。

しかし、全国展開を加速するためには、さらなる戦略的な採用活動が必要だなと感じる今日この頃です。。


3. エンゲージメント(離職率)

エンゲージメントの維持、すなわち離職率の低減も重要なポイントです。

訪問看護業界では、離職率が30%以上に達する事業所も少なくなく、一斉退職といった話もチラホラ聞きます。経営者としては目も当てられない状況です。

一般的な企業の平均離職率は約15%前後とされていますが、訪問看護業界ではそれを大きく上回るケースが多く見られます。

私自身、一定の退職は組織の新陳代謝として肯定的に捉えており、通年で離職率5〜10%程度は良しと思っていますが、以下になると注意が必要です。

  • 10%以上:危険信号

  • 20%:要注意

  • 30%:組織崩壊の兆し


離職率が高いと、組織の稼働率が低下し、採用活動がうまく進まない場合にはスタッフの負担が増え、さらなる退職を招く悪循環に陥ることがあります。

そのため、スタッフの働きやすい環境を整え、組織のエンゲージメントを高めることが重要です。

【具体案】

  • 定期的な面談を通じてスタッフの意見や不満を把握し、解決に努める

  • ワークライフバランスを重視した勤務体制を整える

  • 職場環境の改善や福利厚生の充実を図る


3つの要素の複合的な重要性

以上、ご紹介した「マネジメント」「採用」「エンゲージメント」の3つのポイントは、単独ではなく、複合的に作用しています。

1つの要素だけを強化しても、訪問看護ステーション全体の問題を根本的に解決することは難しいでしょう。

3つの要素すべてにバランスよく取り組むことで、強固な経営基盤を築き、地域社会における訪問看護サービスを安定的に提供することが可能になります。

現在、訪問看護業界において、これら3つの要素を十分に実行できている事業所は少なく、その意味ではまだブルーオーシャンであると言えます。

利用者満足度を高めつつ、マネジメント、採用、エンゲージメントに取り組むことで、地域で頭一つ抜け出た存在となり、生き残りを図ることができるでしょう。


【ちょっと一言】スタッフを「駒」として扱うなよ。

最後に、訪問看護の経営において根本の部分に触れておきたいと思います。

訪問看護ステーションの成功には、スタッフや管理職の存在が欠かせません。

そのスタッフと管理職の人たちを『駒』として雑に扱う経営者は絶対に、絶対に苦労します。どれだけ採用・マネジメント・エンゲージメントに注力していたとしてもです。

仮に現在、上手くいっていたとしても、どこかで、誰かに梯子を外されるでしょう。

訪問看護の本質は「人」にあり、スタッフ一人ひとりの取り組みが会社全体の成果に直結します。

スタッフや管理職も、自分の大切な時間を費やして働いており、その働きが訪問件数や売上、そして最終的な事業の成長を支えています。

管理職はスタッフの指導やクレーム対応など、重要なマネジメント業務を担い、事務スタッフは事務作業やレセプトの処理など、運営を支える不可欠な役割を果たしています。

これらの人々の努力が積み重なり、訪問看護事業が成り立っているのです。

もちろん、経営管理上は、スタッフ数や訪問件数といったKPIを基に判断する必要があります。

しかし、それはあくまで経営戦略のための指標であり、現場のスタッフをただの「駒」として扱うこととは異なります。

スタッフや管理職一人ひとりには、それぞれの思いや家庭があり、その人生の一部を会社に捧げています。

そのため、スタッフが働きやすく充実した環境を提供することが、結果的に利用者満足度の向上につながります。

ここで重要なのは、単に甘やかすのではなく、厳しさと愛情を持って接することです。

スタッフがやりがいを持ち、成長できる環境を整えることで、訪問看護サービスの質も向上します。

私自身、そうした良い循環を生み出す会社をこれからも作り続け、スタッフが何百人、何千人と増えても、常に一人ひとりに意識を向けられる経営者でありたいと考えています。

会社の環境をより良くし、スタッフや利用者にとって魅力的な職場を作ることが、経営者としての大切な役割です。

これは最近、同業の経営者との対話を通じて、自戒の念を込めて感じたことでもあります。

将来、もし私がこの思いを忘れ、スタッフを尊重しなくなってしまったときには、ぜひ「燻んでいるぞ!!」と教えていただければ幸いです。


まとめ

訪問看護事業のスタートアップには、売上の「壁」が存在します。

月商300万円と1,000万円の壁を乗り越えるためには、適切なマネジメントと採用戦略、そしてスタッフのエンゲージメントを高めることが必要不可欠です。

これらを複合的に強化し、そしてスタッフ一人ひとりの努力や思いに敬意を払うことによって、事業の安定化と成長が実現できるでしょう。

訪問看護業界はまだまだ発展の余地があるため、経営者が適切な戦略を持つことによって生き残ることができると考えています。

この記事がこれからの経営の一助になれれば幸いです!


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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