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【訪問看護の人材育成】管理者に求める10の役割と具体的なタスクまとめ【完全保存版】

「訪問看護ステーションにおける管理者の役割は多岐にわたる」
「管理者の責任は大きく、多面的な角度から役割を果たさなければならない」

訪問看護では上記のような言葉をよく聞きます。

もちろん間違いではなく、管理者の役割は多岐に渡りますし、責任も大きいです。

しかし、いざ実際に働いてみると、「あれ?結局何をやればいいの…?」と悩んでしまう管理者も少なくありません。

実は抽象的に「役割が多い」と自覚していても、具体的な役割やタスクは認識できておらず、現場で悩んでしまう管理者が多いのです。

また、経営者からもどのような役割を与えればいいのか悩んでいるという声も聞きます。

この記事では、訪問看護ステーションの経営者(えん訪問看護ステーショングループ)である私が、訪問看護ステーションにおける管理者の役割を示すとともに、具体的なタスクまでを説明していきます。

管理者をしているけど何をすれば良いか分からないと悩んでいる人、今後管理者を目指したい人、訪問看護ステーションを経営している人は、ぜひ参考にしてみてください。


訪問看護ステーションの管理者に求める10の役割と具体的なタスク

では早速、訪問看護ステーションの管理者に求める役割を10個ご紹介します。

私が考える、管理者に求める役割は以下の10個です。

  1. 売上管理

  2. 粗利管理(or営業利益)

  3. 採用戦略(SNS&リファーラル&人材紹介)

  4. 定着&離職率に関する戦略

  5. 訪問稼働率に関する戦略

  6. 営業活動

  7. 病院やCMとの関わり

  8. 利用者様の管理

  9. リスク管理

  10. 事業所全体の運営管理


もちろん、会社によって与えられる役割は変わってくるかと思うので、所属している会社の状況と照らし合わしながら参考にしてみてください。


1. 売上管理

まずは売上管理です。

訪問看護ステーションの売上は、提供するサービスの量と質によって決まります。

管理者は、売上目標を設定し、スタッフがその目標に向かって効果的に働くように指導する責任があります。

売上を最大化するためには、新規利用者の獲得だけでなく、既存利用者の継続利用を促進するための施策も重要です。

【具体的なタスク】

·目標設定: 定期的(例:月次・四半期・年次など)の売上目標を設定し、スタッフと共有する。

·業績モニタリング: 売上データを定期的に分析し、進捗状況を確認する。

·営業活動: 新規利用者を獲得するため、居宅や病院などに営業を実施する(詳細後述)。


2. 粗利管理(or 営業利益)

粗利や営業利益は、ステーションの経済的な健康状態を示す重要な指標です。

管理者は、コスト管理と収益最大化のバランスを取る必要があります。

スタッフの労働時間や資源の無駄を最小限に抑えつつ、質の高いサービスを提供することで、健全な利益を維持します。

【具体的なタスク】

· コスト管理: 予算を設定し、無駄な出費を抑える(例:消耗品の使用を最適化するなど)。

· 収益分析: サービスごとの利益率を分析し、利益が低いサービスの改善策を検討する。

· スタッフの効率化: 労働時間の管理を行い、適切なシフトを組むことで、スタッフの生産性を向上させる。


3. 採用戦略(SNS&リファラル&人材紹介)

適切な採用戦略・人材の確保は、訪問看護の質を維持するために不可欠です。

一般的な採用手法としてはSNS、リファラル、人材紹介会社経由などがあります。

これらの手法を組み合わせて、最適な採用戦略を構築します。

【具体的なタスク】

· SNS活用: SNSで定期的に投稿し、広く応募者を募る。

· リファラル: 既存のスタッフに知人や友人を紹介してもらうよう働きかける。

· 人材紹介会社との連携: 人材紹介会社とのやり取りを行い、質の高い人材を確保する。


4. 定着率&離職率に関する戦略

スタッフの定着率を高め、離職率を低く保つことは、訪問看護における質の維持に直結します。

管理者は、働きやすい職場環境を整え、キャリアパスの提供や研修プログラムの実施を通じて、スタッフの満足度を向上させることが求められます。

また、定期的なフィードバックを行い、スタッフの悩みや課題を解決するためのサポートも重要になります。

【具体的なタスク】

· キャリアパス: スタッフの成長とキャリアアップの機会を提供し、長期的なモチベーションを高める。

· フィードバック制度: 定期的な面談を実施し、スタッフの悩みや希望を聞き取る。

· 職場環境: 休憩スペースの充実やワークライフバランスの推進など、働きやすい環境づくりを行う。


5. 訪問稼働率に関する戦略

訪問稼働率は、スタッフがどれだけ効率的に訪問を行っているかを示す指標です。

管理者は、スケジュールの最適化や移動時間の短縮を図り、効率的な訪問を目指さなければなりません。

また、訪問のスケジュールを立てる際には、利用者のニーズやスタッフの能力を考慮し、適切なマッチングを考慮することも重要です。

【具体的なタスク】

· スケジュール最適化: 効率的な訪問スケジュールを作成し、移動時間を最小限に抑える。

· スタッフ配置: スタッフのスキルと利用者のニーズをマッチングさせ、適切な配置を行う。

· ITツールの活用: 訪問ルートを最適化するためのツールを導入するのも効果的。


6. 営業活動

新規利用者の獲得には、積極的な営業活動が不可欠です。

管理者は、地域の居宅介護支援事業所、病院やクリニック、福祉施設などとのネットワークを構築し、訪問看護サービスのメリットや自社の特徴などを効果的に伝えることで、利用者の増加を図ります。

また、必要に応じて地域のイベントやセミナーに参加し、自社の認知度を高める努力も必要になってきます。

【具体的なタスク】

· ネットワーキング: 関係各所との関係を強化し、定期的に情報交換を行う。

· 営業訪問: 定期的に居宅介護支援事業所や医療機関に訪問し、自社サービスの広報を行う。

· マーケティング資料: 自社サービスのメリットや実績を示す資料(チラシなど)を作成し、営業活動に活用する。


7. 病院やCMとの関わり

病院やケアマネジャーとの良好な関係は、スムーズなサービス提供に不可欠です。

新規利用者がスムーズに訪問開始できるよう働きかけることはもちろん、利用者の状況に変化があったときなどは逐一報告するよう働きかけます。

また、スタッフに対してこのような報告文化を醸成するよう働きかけるのも役割の一つです。

【具体的なタスク】

· 新規利用者の調整: 新規利用者がスムーズに開始できるよう調整を行う。

· 利用者に関する情報提供: 日々の訪問で変化があった場合などに情報提供を行う。

· 報告文化の醸成: スタッフが関係機関に報告・連絡・相談できる文化を醸成する。


8. 利用者の管理

利用者一人ひとりに対して、適切なケアを提供するための管理が求められます。

管理者は、利用者の状態を常に把握し、多職種との連携を図りながら、個々のニーズに応じたケア・リハビリが提供できているかを把握します。

また、定期的なモニタリングを行い、状況の変化に迅速に対応することが重要です。

【具体的なタスク】

· ケアの把握: 利用者のニーズに応じたケア・リハビリが提供できているかを把握する。

· モニタリング: 利用者の状態を定期的にモニタリングし、変化に応じて迅速に対応する。

· コミュニケーション: 利用者とその家族とのコミュニケーションを密にし、安心感を提供する。


9. リスク管理

リスク管理は、利用者の安全を守るために非常に重要です。

管理者は、リスクアセスメントを行い、予防策を講じることで事故やトラブルを未然に防ぎます。

また、万が一の際には迅速な対応ができるよう、スタッフに対して適切な教育を実施します。

【具体的なタスク】

· リスクアセスメント: 定期的にリスクアセスメントを行い、潜在的なリスクを洗い出す。

· リスク管理に関する教育: スタッフに対して定期的にリスク管理の教育を実施する。

· 緊急対応時の計画: 緊急事態に備えた対応計画を策定し、スタッフ全員に周知徹底を行う。


10. 事業所全体の運営管理

管理者は現場のフォローや管理だけではなく、事業所全体の運営管理(財務管理、人事管理、施設管理など)をする役割も担います。

効率的な運営を維持するために、定期的に業務プロセスの見直し・改善を行い、ステーション全体のパフォーマンスを最適化します。

【具体的なタスク】

  • 新人教育、研修の整備、管理者の後任育成、労務管理、新店舗構想、採用戦略など。


以上、訪問看護ステーションの管理者に求めたい役割を10個ご紹介しました。

私個人の経営感覚として、一つの事業所の管理者であれば4〜10の役割は必ず押さえておいて欲しいと考えております。

複数事業所を管理する場合は経営者視点も多くなるため、1〜3の役割も求めていきます。

このように列挙してみるとやることの多さを実感しますが、この役割を果たすことができれば、どこの管理者になったとしてもある程度結果を出せる人に成長します。

もっといえば、訪問看護を起業しても周りがついてくる人に変化してると思っております。


訪問看護事業の範囲は在宅かつ介護と医療という特徴もあり、知識や対応する幅がその他の介護保険サービスよりも多岐に渡ります。

また、訪問という形態上、一旦外に出てしまうと目に見えない部分が多くリスク管理やマネジメントが難しい側面もあります。

このように、確かに訪問看護の管理者の業務は難易度が高いです。

難易度が高いからこそ、管理者力の底上げをしたり、管理者を育てられる会社創りや負荷軽減に関する施策を、会社単位で行っていくことが重要だと考えております。


確かに管理者の役割はたくさん!バーンアウトしないためには長期的な視座が必要

ご紹介したように、管理者の役割は多岐にわたります。

しかし、明日すぐにでもやらなきゃ!とは思わなくて良いです。

業務や役割を背負い混みすぎて、バーンアウトしてしまったら元も子もありません。

管理者として長く続けていくためには、「長期的な視座」が必要になってくるのです。

訪問看護の管理者は、課題や役割をすぐに果たそうとするのではなく、最低でも3〜6ヶ月先、長期的には1年後の事業所のイメージを持っておくことが重要です。

特に管理者経験が浅い方は、目の前のToDoで精一杯になりがちです。

しかし、目先ばかりの判断や対処では、事業所の抱える中〜長期的な課題に取り組めません。

日々のToDoで埋もれてしまうという管理者にオススメの行動は以下の通りです。

  • 休みの日を利用してちょっとお出かけしてスッキリする

  • 別の環境で業務の整理や棚卸しをする

  • 訪問看護で素敵だなと思う事業所に見学に行く

  • 壁打ち出来る相談先(業界で自分より一歩先に行く人、もしくは異業種でもOK)を見つける

上記のような行動をして、月に数回は追われている現実から遠ざかってみるのも良いと考えております。

いざ環境から離れてみると、抱え込んでしまっている”だけ”のことも結構あったりします(意図的に環境から離れないと分からないことが多いです)。

少し離れた環境に身を置くことで、自分が任せられてる事業所を俯瞰的に見みることができ、組織課題も浮き彫りになってきます。

その未来構図を経営者と擦り合わせて、日々のToDoに入れ込んでいければベストです。

これらは一朝一夕ではどうにもならない、半年〜年単位のスパンで考えていくべき事業所課題です。

そして、そこに対しての経営者の理解はもっと大切ということは念を押しておきます。


まとめ

訪問看護ステーションの管理者は、売上や粗利の管理、採用戦略の構築、スタッフの定着と離職率対策、訪問稼働率の最適化、営業活動など、多くの役割と責任を負います。

ただし、これらの役割は長期的な視点を持ち、焦らず着実に業務に取り組むことが大切です。

管理者の成長は、ステーション全体の成長、そして訪問看護業界の成長に直結します。

ともに訪問看護業界を盛り上げていきましょう!


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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