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森について
自然溢れる限界集落!?
コロナパンデミックを機に、マンションの12階暮らしから、人口270人、消滅寸前の限界集落に一家移住して5年になります。
移住してきた当初は、鬼ヶ城山系と呼ばれる標高1000m級の山々に囲まれた目黒集落は素晴らしい自然の中にあると毎日感動していました。
松野町のオフィシャル・キャッチコピーが「森の国」であることに象徴されるように、豊かな森に囲まれた場所です。
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ただ、時を経て色々と知るうちに、少し違った見え方がしてきました。
松野町が「森の国」と言われる理由、それはかつて林業が盛んに行われていたからです。
今は270人の目黒集落も昭和の最盛期には、林業関係者を中心に2000人が住んでいました。
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やがて、林業が斜陽化していく中で目黒は限界集落となっていく訳ですが、そこで問題となってきているのが、人工林なんです。
林業では、森を切り拓いて成長の早いスギやヒノキを植林します。
まっすぐ伸びるスギやヒノキは、等間隔に密植され約50年ほど経つと伐期(ばっき)となり伐採されます。
ところが、林業が衰退しスギやヒノキが売れなくなってしまった現在、多くの人工林が放置され問題となっているのです。
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おじいちゃんの世代が、孫の時代の財産にと、せっせと植えた木々が今や大きな負債になってしまっています。
お金にならないものは放っておく、、ここにも資本主義経済の歪みが生まれています。
私が移住した頃、自然いっぱいに囲まれて素晴らしいと感動していたこの森は、悲しいかな、実はほとんど人工物だったという訳です。
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せっかく都市を離れ、人工物がないところにたどり着いたと思っていたのに、実は人工的なものに囲まれていたと気づいた時は、結構ショックを受けました。
豊かな森は自然の宝庫かと思いきや
移住生活も長くなってくると、町や集落の事情も深く知るようになります。
自然豊かな森も、表に見えにくい裏側があるとということが分かってきました。
四万十川の源流域にあたるある山林では、いまも全伐(山を丸ごと伐採)がなされ、その上にヒノキが植林されています。
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等間隔に植えられているヒノキの苗は、鹿などの害獣から守るためにネットで保護されています。
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このふもとには、四万十川が流れています。
伐採が始まってから、下流域では泥水が増え、鮎がめっきりと取れなくなったと多くの鮎漁師が口を揃えて言います。
鮎だけではなく、四万十川名物だったアオサ(青のり)に至っては、今は全く取れなくなったそうです。それもここ数年の話です。
壊滅状態に陥った流域の漁師さんたちは本当に困っています。
森をRegenerateする
あんまり嘆いていても仕方ないので、私たちは動き出しました。
もはや失われた自然は元には戻らない。でも、この現状を少しでも多くの人々に知ってもらい、環境意識の変革につながる活動に変えていきたい。
そんな想いを抱いている時に、「滑床千年の森を作る会」の会長安藤哲次さんに出会いました。かつての強豪登山部、名門宇和島南高校の監督を務められた森のスペシャリストです。
ご縁を頂き、安藤会長から次の会長を譲っていただくことになりました。
「あと980年、よろしくお願いします」
最初は冗談かと思いましたが、安藤さんの本気の想いにほだされ、引き受けさせて頂くこととなりました。
私たちが千年の森を作るためにまず始めた活動は間伐です。
間伐は前述の全伐と異なり、人工林に並ぶ木々の間の木を切り倒していく作業です。いわゆる間引きと同じことです。
間引きをすることで、鬱蒼としていた人工林の間に木漏れ陽が差し込み、新しい草木が芽吹き始めます。
そこから生まれる草花は、多様な微生物を生み出し、森の土壌を豊かにしていきます。
多様な草花には多様な昆虫が集まり、それらを捕食する生物も多様性を持ち初めます。色々な鳥や動物が集まるようになると、森全体が多様に循環を始めます。
それはまさに森が生き返った(Regenerate)状態です。
天から降った雨は、森の豊かな土壌を通じて、やがて渓谷に流れ出てきます。森のミネラルをたっぷりと含んだ豊かな水は、集落の真ん中を流れ、水田や畑に流れ込みます。
その豊かな圃場で育まれたお米や野菜を、私たちはまさに戴いている、この実感を持つことが、つながりを感じる第一歩かと考えています。
森全体を一つの生態系として捉え、そこからつながる命をいただいているということ身体で感じるのです。
つながりを学ぶ
東京の中野区に新渡戸文化学園という高校があります。昨年は、ここの女子高生たちが、修学旅行で滑床渓谷を訪れ間伐を体験しました。
女子高生にチェーンソーを持たせるのは、危なっかしい感じもしますが、きちんと安全に配慮して指導員立ち合いの下で行います。
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生物多様性のない薄暗い人工林と、鳥や昆虫など生命の息吹を感じられる自然林の違いを体感します。
そして、新たな生命の息吹を吹き込むように、人工林の間引き作業を行い、木洩れ陽が差しこむことを感じます。
汗をかいた後は、渓谷の美しい川に飛び込み、森と身体を接続したら、今度は美味しいご飯と温かいお味噌汁で体の内側から森の恵みを感じます。
多感な時期の高校生にとっては、これらがとても新鮮な原体験になります。
特に普段、都市部で生活している子たちは、机上で学ぶサスティナブル論とはまた違った学びを、自然から教えてもらうのです。
あめつち学舎では、高校の3年間でこの学びを日常的に営みの中に取り入れていきます。
そして、自分が地球、大地とつながっているということを日々体感しながら、大人へと成長していくことを目的としています。