外資系企業で学んだ、「アクション動詞」で議事録をとると、会議のあとで差が出る話
自分が出席した会議の議事録って、あとで読み返しますか?
たいてい読みませんよね。
コンサルタントとしてクライアントの経営層と会議をしたり、外資系企業で社長が開く会議に参加したり、役員が開く会議を企画・運営したりという経験を、もうかれこれ20年ほどやってますが、良い会議ではその場でアクション(タスク)を確認します。議事録をあとで回覧・共有するという習慣は、少なくとも私の観測範囲では、ほとんどなかった気がします。
経営者のスケジュールはパツパツで彼らの時間は貴重ですから、生産性を最大限に高める必要があります。お給料が高い人たちが集まる経営会議はその最たるもので、時間をムダにするわけにはいきません。彼らは「あとで議事録を読む」なんてことはしないわけです。
そのために、経営会議やリーダー会議では、議事録はその場でつくっていきます。
「そんなのとっくにやってるよ」という人も多いと思いますが、会議で議論したことをうまくタスクに落とせるかどうかで、実際の仕事の進み具合が大きく変わります。会議をムダにせず、仕事がスムーズに進むコツをつかんで、ぜひうまく活用してください。
会議の結論をタスク化し、その場で全員に見せる
議論を全部書く必要はないが、結論だけでなく、状況認識も書いておく
会議では、ひとつの議題(アジェンダ)に対してすぐに結論が出ることは少ないと思います。事前説明があったり、状況を確認するための質疑応答があったり、いろいろな観点からの意見が出たりします。これらをすべて議事録に書くパターンもあるようですが、これらの情報は重要ではありません。
結局は、「で(議論の結果)、どうするの?」という結論がもっとも大事で、それがわかれば良いというケースが大半です。ただし、結論だけが書いてあっても「なぜそうなった?」がわかりません。そこで、結論に至った理由(状況認識)も書いておくのをおすすめします。
ここで、「B市場を優先する」だけ書いてあると、あとで「なんでそうしたんだっけ?」と振り返って確認することができません。人はだれしも、1ヶ月もしたら自分が決めたことですら簡単に忘れます。この結論を出した理由や前提(状況認識)を書いておくことで、1ヶ月後に「なんかいろいろ議論して決めたけど、なんだったっけ?」と思ったときに立ち戻ることができます。
前提が書いてあれば、それが変わっていたら(他事業との相乗効果がそれほどなさそうだとわかったら)軌道修正しやすくなります。逆に、前提が変わってもいないのに結論を変えようという意見が出たら、それはなぜ?という健全な議論をすることができます。話がコロコロ変わって現場が混乱するのを防げます。
さて、ここまではやってる人も多いと思いますが、大事なポイントはこの結論を「アクション動詞」としてタスク化すること。それをその場で書いて、全員に見せるところです。
結論を「アクション動詞」でタスク化する
先ほどの例では、「B市場を優先する」という結論が出ていました。意思決定という点ではこれで良いのですが、アクション(タスク)ではありません。これで終わってしまうと、実際の仕事は十中八九なにも進みません。
この結論を踏まえて、ではどうするのかをタスクに落とす必要があります。「B市場を優先する」とは、何をすることなのかをハッキリさせる問いを投げかけるのです。
「よい議論でしたし、B市場を優先するという結論になりましたが、そうすると具体的には、だれが何をすることになりますか?」
B市場の顧客をリストアップするのか、すでに顧客のあたりはついてるので個別提案に行くのか、はたまた既存顧客を訪問するのか。
タスクをアクション動詞で書いて、全員で確認する(見る)ことで、「そういう話だとは思わなかった」という悲劇を防げます。
アクション動詞でタスクを書くとはどういうことかは以前の記事で詳しく書きましたが、ここでギュッと凝縮してお伝えすると…
タスクはアクション、つまり実際の行動を表す動詞で書きます。〇〇を検討、〇〇と調整といった、体言止め(名詞)で書くのも、手を動かしてる感じがしない書き方もNGです。P社向けの提案書をつくる(Aさんが△月△日までに)、Q社のYさんに連絡してアポを取る(Bさんが△月△日までに)。議事録にはこういう形で書いていきます。
その場で全員に見せる
なぜその場で全員に見せるのか。議事録に書いておくのと何が違うのか。そう思った方もいるかもしれません。その場で全員に見せることには、少なくとも2つのメリットがあります。
メリット1. 手元メモをつくらせない。関係者の認識ズレを防げる
これは意外と大事なポイントです。各自に手元メモをつくらせると、認識ズレが起きやすくなります。タチの悪い人だと「いや、あのときの議論はこうだったはずだ。私のメモにはそう書いてある」なんて言い出すかもしれません。そういうムダなやり取りを避けるためには、その場で書いて見せるのが一番です。
タスクを全員が見える(あとでいつでも簡単にアクセスできる)ところに置いておくことで、参加者各自がメモをつくる必要がなくなります。
メリット2. アクションに対してツッコミを入れてもらう
A部門についての議題だとしても、そこから生まれたアクションがA部門だけで完結するとはかぎりません。また、解決策を考えるうえでB部門での経験が使えるかもしれません。
根本的な解決策としては、それじゃ足りないんじゃないか?
そんなにのんびりしてていいのか?もっと急がなくて大丈夫なのか?
それなら、B部門でやってたアレが使えるんじゃないか?
そういうツッコミは、その場でしてもらった方が良いのです。
また、実際やろうとすると起こるであろうことを先回りしてツッコんでくる人がいたら最高です。部門間の調整が必要だったら、その場で調整してしまいます。そこに各部門のリーダーがいるんですから。
それをやるとしたら、〇〇部の協力が必要になるんじゃないか?
じゃあ、お願いしますね
とリーダー同士がやり取りしていれば、話が早いですよね。
私は経営会議に出てないし…、ウチの会社じゃ厳しいな… という方へ
ここまで読んで「私は経営会議に出てないし、関係ないなぁ」「ウチの上司には何言ってもなぁ…」「ウチの会社では無理だろうな」と思った方もいると思います。
それはつまり、皆さんが「良いお手本」を見る機会が少なかったということだと思います。新しいことをやるときに、まずはお手本を見て真似しますよね。良いお手本を見たことがなければ、真似することもできません。気づけば、あなたも「見たことある(あまり良くない)やり方」をやってしまっているかもしれません。
せっかくなので、この記事を「良いお手本」として使ってみてください。そして、自分だったらこうするな、とイメトレしてみてください。頭の中でイメージできてたら、急にそういう場に居合わせたとき、自然とスッとできたりしますよ。
もしあなたがリーダー的なポジションならもちろんのこと、そうでなくても、会議に参加している人であればだれでも同じことをしていいんです。だってみんなの生産性を高める手助けになるんですから。
ゆるい形で持ち帰らない・持ち帰らせない
議題に対して必ずアクションを決めるのが基本動作
すべての議題について、基本的にはなんらかのアクションが発生するはずなので、その場で必ず「だれが、なにを、いつまでに」を決めます。
もちろん、その場で結論が出なかったり、明確なアクションが決まらないこともあります。そういうときはどうするか。
仮でもいいので、いったん「だれが、いつまでに、なにをするかを決めて共有・報告するのか」を決めます。いわゆる「持ち帰って検討」をタスク化するわけです。
このとき、期限は「次の会議までに」とはしません。
経営会議やリーダー会議というのは、そんなに頻繁に開催されず、だいたい月1回です。まるまる1ヶ月も掛けて「検討」をさせるようなのんびりした社長やリーダーはまずいません。たいてい「どうなったか今週中に教えて」とか、なんなら「何することになったか明日教えて」となります。
チームの視点で積極的に口を出すのが良いリーダー
先ほどのツッコミ例を見て、他の人(部門)の仕事に口を出していいの?と思った方もいるかもしれません。
私は、むしろそれは必須だと思います。特に、それが経営会議であれば。
経営会議の出席者は各部門のリーダーたちです。経営会議でのリーダーたちの発言が部門代表としての発言だけになっていたら、経営会議になりません。それはただの報告会です。
優れたリーダーは、経営チームのメンバーとして議論に参加し、発言します。課題を経営視点(全社視点)で捉え、各部門の視点に閉じずに議論し、他部門のことも含めて、積極的に口を出します。
全社視点を持ってツッコミを入れるのが社長だけの会社よりも、全部門のリーダーたちがツッコミを入れてくる(アクションを具体化できる)会社の方が、きっと強いですよね。
経営会議でなくても同じことができます。あなたも、同僚の仕事に口出ししていいんです。もちろん配慮は必要ですよ。でも、こうしたら良くなるんじゃないか、ここは自分も苦労したので気をつけてほしい、と伝えれば、きっと相手にもその気持ちが伝わるはずです。すべての会議で、仲間の仕事を良くしようという会話が増えれば、あなたの会社やチームの生産性は爆上がりするはずです。
進行役は経験値がありメンタルが強い人
アクションを決めたはずなのに、なぜか次の会議でまた同じような議論をしている。
こういうことは避けたいですよね。責任者の立場なら「え、なんで進んでないの…」となりますし、担当者からすると「え、前回の話って、そういうことでしたっけ?」となったり。
これは、アクションが明確になってないことが原因です。明確じゃないから、認識がズレる。そこで、タスクを「アクション動詞」で書くために、その場で適切にツッコミを入れていきます。
あいまいだったら、「今までの議論を踏まえると、つまり何をすることになりますか?」とか、「これってだれがやることになります?」とか、「どれくらいかかりそうですか?」と聞きます。「これは1週間後でいいですか?」と絶妙にスピード感の期待値を設定したりします。
こういうツッコミは社長やリーダーがやることも多いですが、進行役がやることもあります。進行役はただの司会ではないんです。むしろ、リーダーなど偉い人たちにツッコミを入れられたり、議論をコントロールできる程度の経験値とメンタルの強さがある人が進行していきます。
会議の最中よりも、会議の「前後」で差が出る
議事録の差は会議の「後」に生まれる
進行のポイントは、会議そのものをスムーズにするというよりも、会議の「後」がスムーズになるようにすることです。
会議がムダだと感じる理由は、そこで何も決まらず、会議の「後」になにも変化が起きないからです。
会議で結論が出て、さらにアクション(いつ、だれが、なにをする)まで決まり、関係者の認識ズレがなければ、会議のあとの「実際の仕事」がスムーズに進みます。
進捗は会議の「前」に確認する
定例会議の進行役の人は、決まったアクション(タスク)の進捗をフォローします。それも、次の会議ではなく、会議の前に状況を確認します。
次回報告してもらう予定ですけど、進んでますか?
明日までに共有することになってますが、大丈夫ですか?
こんな形でフォローしていきます。もし進捗が怪しそうなら「事前に内容を共有してください」と追いかけていきます。思うように進んでいなかったら、関係者間を取り持ったり、連携役になったりします。
こうすることで、会議で「進んでません…」となるのを避けます。単価の高い人たちが集まる会議を無駄にしないために、という観点もありますが、なによりも決めたアクションを進めるのが大事だからです。
議論をムダにせず仕事を進めるなら、アクション動詞で議事録をとる
今回は、仕事がスムーズに進むための会議の進め方と議事録のつくり方のコツをお伝えしました。
会議の結論をタスク化し、その場で全員に見せる
これを実践していけば、関係者の認識ズレがなくなり、ゆるい形で持ち帰ることなく、着実にアクションが実行され、あなたとチームの生産性は高まるはずです。
タスクを書いて見せると、「いや、そうじゃない」とか「ちょっと違う」とか、いろいろ言ってくる人がいて、はじめは凹むかもしれませんが、大丈夫です。むしろ、それはとっても良い兆しです。なぜなら、みんながちゃんと見てるってことですから。だって、今までは議事録を共有しても、だれも見てなかったでしょ?それに比べたら大きな進歩です。
議論したはずなのに進まない、前回と同じような議論してる…と困っている方は、ぜひお試しあれ!
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