「緻密なラリー戦略とサーブの好調」ATP500 ロッテルダム1回戦 錦織VSオジェ・アリアシム レビュー
始めに
今回、紹介する試合はATP500ロッテルダム、1回戦、錦織圭VSフェリックス・オジェ・アリアシムの一戦です。
両者共に全豪オープン以来の公式戦。
錦織は復帰後3大会目にして、昨年の全仏オープン以来の勝利を得たいところです。
一方、オジェ・アリアシムは昨年この大会で準優勝しており、得意の大会で今年も好成績を残したいところです。2021年は全豪前哨戦で準優勝、全豪オープンでは3回戦でシャポバロフを破り、ベスト16と好調です。
復活を期す錦織と好調のオジェ・アリアシムという構図となりました。
試合は7-6(4) 6-1で錦織が勝利を挙げました。
この試合を考察していきます。
オジェ・アリアシムのサーブ・フォアを軸とした攻撃
オジェ・アリアシムは武器である、サーブとフォアを軸として、攻撃的にプレーします。特に、サーブ、フォア共に錦織のフォア側への強打からの展開を活用します。錦織はフォアのグリップが厚く、フォアへの強打やサーブに苦労をする傾向があります。錦織のフォア側へのサービスや強打は、対戦する選手の多くが錦織対策として採用する作戦の1つであります。
オジェ・アリアシムは錦織のフォア側へのサーブやラリーでの強打から有利な展開に持ち込むプレーを行います。リターンにおいても、セカンドサーブのリターンにおいて、ポジションを上げず、しっかり構えて、錦織のフォア側に強打します。
一方の錦織は、フォアスライスによるリターンを打つといった対策をします。
錦織はデュースサイドのワイドサーブに徐々に対応していきます。第1セットタイブレークのファーストポイントのリターンエースは象徴的な場面でした。
錦織の真ん中を活用したラリー戦略
錦織はラリーの中で、オジェ・アリアシムの武器であるフォアの強打を徹底的に封じようとします。ラリーの基本はオジェ・アリアシムの弱点といわれるバックハンドへの配球を基本とします。フォアに配球する際には、オジェ・アリアシムが悪い体勢で打たされるボールを配球します。配球やタイミングによって、如何にオジェ・アリアシムに良い体勢でフォアを打たせないかを軸とします。
そして、「真ん中への配球」を活用します。角度をつけるのが難しい真ん中深くに配球する事で、オジェ・アリアシムのミスを誘います。オジェ・アリアシムは真ん中のボールをフォアで回り込んでのミスを多発します。第1セット最終ゲームからタイブレークにおいてオジェ・アリアシムは真ん中のボールのフォアでのミスを5本犯します。真ん中への配球が第1セットの勝負の分かれ目となりました。
そして、要所で、錦織のストロングショットである、バックのダウンザラインを叩き込みます。
セカンドセット以降は、オジェ・アリアシムが右脚を痛め、フォアでの踏ん張りが効かなくなり、錦織は、フォアへの配球を増やし、ラリーを支配します。
好調だった錦織のファーストサーブ
この試合の勝利の大きな要因として、錦織のファーストサーブの好調さが挙げられます。
この試合の錦織のファーストサーブ確率74%、ファーストサーブポイント勝率85%と高い数字を残しています。
2021年のこれまでの3試合の平均が、ファーストサーブ確率67%、ファーストサーブポイント勝率57%であり、この試合でのファーストサーブ関連のスタッツはこれまでの試合と比較して、非常に高いものでした。
これまでの試合では、サーブから中々ポイントが取れず、サービスゲームに苦しんでいたものの、この試合ではサービスゲームを全てキープしており、良いリズムで試合を進められていたと考えられます。
本人の試合後のインタビューで「サーブが良かった。非常に高い確率で入って、ポイントにもつながった」と話しており、サーブの好調が勝利に繋がりました。
しかし、セカンドサーブポイント勝率が41%であり、次の試合での改善が必要と考えられます。
まとめ
錦織の対TOP20からの勝利は2019年ブリスベン決勝のメドベージェフ戦の勝利以来約2年2カ月ぶりの勝利となりました。
怪我からの完全復活を期す錦織にとって非常に大きく、重要な勝利となったのではないのでしょうか。
内容としても、課題であったサーブの好調も見られ、非常にポジティブな内容でした。
2回戦の相手はオーストラリアのデミノーに決まりました。
長期離脱前、最後の試合である2019年全米オープン3回戦で負けている相手です。
1回戦の様な良いプレー、好ゲームを期待したいです。
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