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空き缶でしあわせ#49

この夜が遠い過去になる前に


あの日の夜

 親友と夜の街へ繰り出した。ワクワクしていたのは当然のことだけれど、夕暮れのノスタルジーを感じながら街の雰囲気にも酔っていた。私は、お酒がなくても雰囲気で酔えるタイプなので、とても安上がりなのだ。

 みろく横丁とは、八戸にある。せんべろの聖地に見えるように、たくさんのお店がひしめき合っていた。昭和を過ごしたことはないけれど、どこか懐かしい雰囲気で、気を許すと”ただいま”といってしまいそうな雰囲気だった。



決死のおもいで

 親友とジンジャーエールを酌み交わしている頃、離れた席に日本語を話さない人が座った。英語を主に使う国から来たようだ。こうみえて(どう見えているか知らないが)英語を少しだけ勉強している私は、ネイティブと話すチャンスが到来したことに興奮していた。

 しかし、その時の私は話しかけようにも緊張が止まらず、チラチラ見るにとどまっていた。すると、ネイティブの隣に座っていた人が会話を始めたではないか。こうなると、親友との会話が耳に入ってこなくなってしまう。ごめんなベストフレンド。会話が入ってこないだけでなく、自分たちの会話もいつの間にか海外の話に、いや、そのネイティブの話になっている。本当にごめんな、ベストフレンド。

 そうこうしていると、私はネイティブと目が合った隙に話しかけていた。自分の英語が通じていることに興奮を覚えながら、気づけば2時間、話通していた。正確に言えば8割は話を聞いているだけだったけれど。


この夜が遠い過去になる前に

 親友と、ネイティブと八戸の夜の街。私にとってはとても楽しい思い出になった。みろく横丁だけでなく、その後親友と2人でマックに寄って語り明かしたことは、誰にも奪われない私だけの大事な時間としてしまっておこう。

この夜が遠い過去になる前に。

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