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空き缶でしあわせ#36

1人でカフェに入って考えることといえば


はじまり

 異国の地で一人でカフェに入った。そこのカフェは青い飲み物が有名で、SNSでも紹介されていた。その国の下調べの時から行こうと決めていた。

 人は不思議なもので、行くのにどれだけ時間がかかろうとも「決めた」予定であれば頑張ろうと思うものである。


寄り道

 その日は、午後にカフェに行こうと思っていたから、午前中は身体が軽かった。楽しみがあると、何でもできそうな気がするものだ。午前中に何をしたかはもう覚えていないが、何を見てもきれいだと思ったし、どこを歩いても楽しいと思った記憶がある。あ、午前中はウィークエンドマーケットに行ったんだ。

 少しマーケットについて書くと、そこはお土産は何でもそろっている所で、お腹がすくと外に屋台のような出店が数えきれないほどあった。良い匂いだが、日本では嗅ぎなれない香辛料の香りがしてきて異国を感じる。楽しいくてたまらない。行くなら丸一日使えば良かったと思いながら午前中でその場所を後にした。

 午後も街を少しだけブラブラしながらいろんなものを見る。楽しい。歩くだけで楽しいなんて、どれだけ幸せな時間を過ごしているのだろう。そう思いながら街を歩く。


ついにカフェへ

 時間を気にしないで歩いていると「ちょうどよくおやつの時間になった。」と自分の中でつぶやく。カフェに行くことを思い出した。地図を確認すると、徒歩30分と表示される。おっと、意外と長い。だけど行くと決めていた手前「行かない」という選択肢が自分の中に無かったのである。

 今回の旅で気づいたことは、目的地を見つける「あの感じ」が好きだということ。どこにあるんだろう、と見つけたいのに見つからなくてドキドキする感じ。どんな外観なのか地図に載っている写真の通りなのか、ワクワクしながら歩く感じ。とても好きな感覚だと気づいた。

 今までは、行き当たりばったりでお店を見つけ、一期一会的な旅をしていた。それもとても楽しいし、充実したものだと感じていた。しかし今回の旅では、行きたい場所を選んで予定を立てていたため、目的地に着くまでの旅の楽しさも感じることができた。どちらも楽しいので、次回からは目的地を決めて予定通りに過ごす日と、行き当たりばったりの日を作ろうと心で決める。

そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にかカフェに着いていた。


カフェで考えることといえば

  カフェは自分が思っているよりもこじんまりした雰囲気だった。扉を開けると外の蒸し暑さを忘れるような涼しさで気持ちがいい。

 目的の青い飲み物を頼み、2回の席についた。小さなテーブルに、背もたれ付きの小ぶりな椅子が2脚ある席だった。1人なのに申し訳ないと思っていると、他の席は全部4人掛けになっていた。

 飲み物が来て、まずは写真を撮る。スマートフォンでも取るし、フィルムカメラでだって取る。ここで撮らなきゃ一眼レフの意味がないんだ。なんて思いながら。「おいしそう」と小さな声で独り言ちながら、一口飲む。

 カフェで考えることといえば、飲み物の感想とか、お店の雰囲気が好きかとかそんな感じだ。入って少ししか経っていないのに、次はどこに行こうかなんて考えてみる。ふと他の席に目を向けると、日本人の親子と思われる人が2人で来ていた。もうやり残すことはないですか、空港まではタクシーでいいよね、とか話していた。あの親子は、私より先にこの国に着いて旅がそろそろ終わりになるんだな、と一人でノスタルジーを感じる。


帰り道

 一人で色んな事に考えを巡らせ、飲み物を飲み終えた。帰り道だ。ホテルまでの徒歩時間を見ると45分。おっと。なんか来た時よりも長くなってるぞ。来るときは、ホテルから出発していないことを思い出し、自分が思っているより疲れていることに気づく。

 それでも、歩きたい衝動にかられ歩くことにする。そういえば今日はスコールに当たっていないな、なんて思いながら。

現地の人の帰り道に混ざって自分は観光客として歩く。

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