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空き缶でしあわせ#69
タクシーの中で一方的な会話
「Hi」と気さくに挨拶をしたつもりだった。内心はすごく怖くて、これからどんなマシンガントークをされるか怯えていた。
つもりとは、すごく便利な言葉であり、自分勝手な言葉だ。やった”つもり”、言った”つもり”。自分はやったんだからいいだろうという考えである。
旅行に行った時のタクシーの会話ほど恐怖することはない。英語を堪能に話せるわけではない僕が、英語のマシンガントークを聞くと思考停止することがある。簡単な受け答えくらいはできるが、自分の想いや感想を話すとなると頭の中が真っ白になってしまう。
逆に、何も話されないことも恐怖である。その時、僕は気さくに挨拶をしたつもりだった。しかも、日本語ではなく世界共通語と言われる英語を選択した。心の中はいつも食らうマシンガントークの始まりに恐怖していた。すると、どうだろう。挨拶からなにも言われない。びっくりした。何を聞いてみても何も話してくれないのだ。目的地にあとどのくらいで着くかも分からない。目的地に着くかもわからない。Googleマップを凝視して、現地警察の番号を調べてた。
恐怖には、種類がたくさんあることを知った。