空き缶でしあわせ#26
ずいぶん前に見た景色を思い出す
ずっと前、もうかれこれずっと前。誰かと見たこの景色を思い出してみた。何をしに行ったのかも、何をしていたのかも覚えていない。いや、何をしたかは覚えている。コーヒーを買って近くの講演を散歩した。コーヒーを買っている時に座ったベンチからの写真だ。この時は、カメラにも慣れていなくて、F値とかシャッタースピードとか、全然わからなかった。その証拠に右下に指が入っている。指だ。なぜ気づかなかったのか不思議でならない。でも、指が写っている。
この時は冬の終わりころで、寒さが少しづつ柔らかくなってきたときだったように思う。春が来るのが待ち遠しいような、この寒さと離れるのが寂しいような、そんな気持ちだった。懐かしい。
散歩した公園は、お城の跡地で歴史の教科書で見たようなポールが立っていたり、石垣があったり、お城がまだ建っていた時の面影が感じられた。全てがその時代のものではないんだろうけれど、昔住んでいた人と同じ場所を歩いている感覚はすごく楽しかった。昔の人は誰と歩いていたんだろう。何を考えながら歩いていたんだろう。もしかして「~~なりけり」とか心の中でおしゃべりしていたんだろうか。そう考えながら歩くだけで楽しかった。
もちろん友達とのおしゃべりがその時のメインイベントだったのは言うまでもない。だけど、あまり何を話したが覚えていない。かたじけない。でもその時間があったからこそ色んな感情を感じたし、自分の言葉で話すことができたし心をたくさん動かすことができた。
あの時間に戻りたいと思うけれど、あの時より素敵な時間を作りたいとも思う。