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卒業制作 アニマルタクシー配車サービス”ZOT”を解説してみた
はじめまして。桑沢デザイン研究所夜間部2年のmasaです。
卒展で展示予定だったWebサービス制作課題について、展示が中止になってしまったこともあり、ここに記そうと思います。
私が制作したアニマルタクシー配車サービス”ZOT”は、「タクシーをタノシク」がコンセプトです。働く子育て世代をターゲットに、大人も子どもも楽しめるタクシー配車サービスを考えました。
ZOTというタクシー配車サービスの企画・サイトモックデザインをしました。ビジネス・中高年向けという既存イメージから、働く子育て世代にも使ってもらえるタクシーになるよう、動物柄や配色を用いて楽しく可愛いイメージに仕上げました。子どもが楽しめて、大人も休めるサービスです。#桑沢展2020 pic.twitter.com/JaDeePXHKr
— 𝙈𝘼𝙎𝘼 (@msdc1804) February 28, 2020
トップ画は可愛い感じですが、制作プロセスは考えを積み上げて作っていったので、思考プロセスをメインに書いていきます。
DeNA様からの課題:タクシー配車サービスのWebブランディング
今回の課題は、DeNAのタクシー配車サービスMOVのアートディレクターの方から出題されました。課題は選択式で、以下のどちらかを選ぶことになっていました。
1.MOVの前身サービス「タクベル」のリブランディングを行い、新たにWebサイトをデザインする。
2.自分で新たにタクシー配車サービスを考え、新たにWebサイトをデザインする。
私は最初、1番の課題を選び制作することにしました。自分で新たに考えても付け焼き刃なものができてしまうかもと思ったからです。
ターゲットはすぐ決まったけれど…
課題を頂いてすぐに考えた仮説がありました。タクベルや今のタクシー業界は、すでにタクシーを使っているビジネスマンを中心に相手しているけれど、本当に相手にすべきは今までタクシーをあまり使ってこなかった若い世代ではないか、ということです。
少し古いデータですが、総務省によれば、15歳以上の就業者・通学者の利用交通手段を見ると、ハイヤー・タクシーの利用率は全交通手段のわずが0.1%だそうです。(2010年 国勢調査)0.1%の既存ユーザーやその周辺にいる人たちを奪い合うよりも、残りの99.9%のタクシーをふだん使っていない人、中でも流行を広めていく力のある人たちをターゲットにした方が、競合ともぶつからず戦略的だと考えたのです。
新しいもの好きの若い世代がまず飛びついて、徐々に他の世代にも広まっていく。そうやって新しいものは広がっていくことが多いと思います。(イノベーター理論というやつですね)なので、ターゲットは20~30代の若手社会人を軸に据えることにしました。
また、今使ってない人を相手にするので、早くて便利という既に認知されているタクシーのメリット以外に焦点を当てたいと思いました。そこで、タクシーに乗っている時間に価値を見出し、乗車時間にくつろげて楽しめる、「エンターテイメント」を主軸に置いたタクシーを作ろうと決めました。
ここまではすんなり決まったんです。ですが、具体的な案出しで行き詰まりを迎えまして…。
うすいメリットあいまいなロゴ
「エンターテイメント」というテーマが決まったはいいものの、「じゃあどうやってタクシーで楽しませるの?」という問いに対する回答が全然ありませんでした。最近のタクシーには乗客用にモニター設備があるので、これを活用してyoutubeとかNetflixとか観られれば楽しいかなーとか考えてました。
ですが、後から考えるとタクシーに乗っている時間なんてせいぜい10~20分ぐらいだし、動画観るためだけにタクシー乗るって考えづらいですよね。
また、他にも問題がありました。メインターゲットを20~30代としていましたが、タクベルは最終的には全国・世界進出をにらんだサービスです。そのため、完全に若い層に振り切ったコンセプトにもしづらく、この時考えていたロゴは非常に狙いがわかりづらいものでした。
※初期段階で作っていたロゴラフ案。como(center of mobility)という名前にしようとしていた
実際、中間プレゼンでもみんなの反応はイマイチ…、という感じでした。
方向転換:誰かの課題を解決する尖ったサービスへ
プレゼンの反応を受けて、私は自分の案を反省しました。その時出た改善点は以下です。
1.タクベルのリブランディングをしようとして薄い案になるなら、いっそ別サービスにしてしまった方がいい
2.世代で限定するのではなく、そのサービスを求めている人の顔が浮かぶぐらい、特定の誰かの課題を解決するサービスにしよう
3.わかりやすくキャッチーで、惹かれるビジュアルのサービスにしよう
でも、若い世代がターゲットというのは変えたくなかったので、何かその中で特別なニーズがないかなと、毎日毎日他の課題をやっている時も考えていました。若い世代のニーズとして、小さい子どもの送り迎え、写真映え、小旅行などを考えましたが、先に進みませんでした。
そうだ動物園にしよう!
締切が迫り、具体的なまとまりがまだ見えない中、たまたま学校近くの無印良品前で動物園イベントのビラをもらいました。それをみて閃きました。
「動物の柄タクシーについてたら可愛くね!!!?」
そこからはもうどんどん考えが進みました。これなら子どもが喜びそうだし、親御さんもタクシー乗って子どもが動画観ててくれてたら休めるし、写真映えもするから他の若い世代にも展開しやすそう。動物柄もいくつかあるからパターン展開できるな。これはよいぞ!
アニマルタクシー配車サービス”ZOT"
そんな考えのもとに生まれたのが、”ZOT(ゾット)”です。”ZOT”とは”ZOO(動物園)”と“TAXI(タクシー)"を合わせた造語です。特に意識したのは、子どもが呼びやすいかでした。"ZOT"は「ぞっとする」みたいな言葉とダジャレにもできるので、覚えてもらいやすいかなと考えました。
サイト設計は、子育てに忙しい親御さんにも見やすいよう、ワンカラムのシンプルな構成にしました。主に意識したことは、メリットや世界観がダイレクトに伝わることです。
※ちなみに、レスポンシブにもなっています
ビジュアルイメージは、カラフルで楽しい雰囲気にすると同時に、幾何学形を使った動物イラストで、子どもっぽくなりすぎないようにしました。サイト自体は親御さんが使うことを想定していたからです。個人的な話なのですが、イラストは周りがとても上手くて、在学中ずっと苦手意識がありました。それでも今回はイラストメインでいきたいと思って、何度も描き直しながら制作しました。
結果この作品は同級生にも先生にも大変好評で、卒展出展作品として選んで頂くことができました。(残念ながら展示できなかったのですが…)
せっかくだからムービーも作りたい
展示にあたって、わかりやすいムービーも作りたいなーと思い、30秒のPVも制作しました。夜間部であることを生かし、同じクラスのお姉さんにママになってもらって撮影しました。(抱っこ紐の中身は秘密です)
学校生活で動画制作をやる機会は少なかったのですが、制作がものすごく楽しかったです。
卒業展示はなくなってしまったけれど
正直、卒展がなくなってしまったことは本当に寂しいです。デザインをやる志を持った自分の一区切りとなる機会だと思っていたので、喪失感がものすごいです。でも、だからこそ皆さんにこうやって見て頂けているのかなとも思います。ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます。
最後に。今回の制作で意識したのは、「楽しく問題解決をすること」でした。ただ問題解決をするだけじゃなくて、思わず使いたくなる。そんなデザインを、もっと技術レベルを高めて、これからもしていきたい。そんな気持ちをもって、卒業を迎えようと思います。