蘇る昭和の音
駅のホームで若い女性二人が踊っている。
二人の前にはスマホが置かれ動画を撮影している。
動画共有サイトに投稿するためだろうか。
最近ではよく目にする光景で珍しい事ではない。
「実家の大掃除をしていたら、懐かしいカセットテープが発見されたのでCDにダビングしてお送りします」
送ってくれたのは中学の時の同級生。
当時私は自分で作った曲を弾き語りで録音していた。そのテープが友達から友達へと渡っているうちにどこへ行ったのかわからなくなっていた。
久しぶりに聴いた中学生の頃の自分の声。
照れくさかったが、あの頃の気分が一瞬蘇った。
子供の頃、いろいろなものをカセットテープに録音した。
友達から借りたレコード。
テレビの歌番組。
ドラマやバラエティーまで。
当時はまだ家庭用ビデオデッキが普及していなかった。
友達を集めてラジオドラマを作った事もある。
当時流行っていた「太陽にほえろ」のパロディ。
冒頭から順を追ってシーンごとにカットして録音した。
もしかしたらその時の楽しさが後に私を演劇の世界へ導いたのかもしれない。
人が録音したものを聴くのも好きだった。
友達の家族の団欒の様子を録音したものを聴かせてもらった事もある。
姿は見えなくても音で情景を想像するのは楽しい。
最近Z世代を含めた若い世代にカセットレコーダーの愛好家が増えているらしい。
若い層には逆に新鮮なのかもしれない。
新譜をカセットテープでリリースするアーティストもいる。
時代とともに忘れ去られたものは山ほどある。
しかし時を経て再びその花を咲かせる事もある。
ものの価値はいつどこで誰によって見出されるか
わからない。