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性教育で子どもたちを守る:体の権利、同意、避妊方法を教える 〜特別支援学校知的部門高等部〜


特別支援学校高等部知的部門で性教育を行いました。今回メインティーチャーとして性教育を担当するのは初めてでした。なので、一から教材研究を行いました。その過程での学びや準備したこと、授業内容を書きたいと思います!

◯授業が始まる前の約束

性教育は大切な話ですが、普段しない話でもあります。特別支援学校に来る子どもたちの中では性に関することにトラウマを抱えている子どもがいる可能性もあります。なので、下記の2点を最初に約束しました。

・他人が不快になる言葉は言わない
・しんどくなったら無理せずに近くの先生に伝える

上記の約束をしてから授業を開始しています。
授業を進める上で誰かが傷ついたり不快になることは避ける必要があります。最初に約束したことで、無理せずに教室から離れた子供もいますし、不適切な発言もありませんでした。

◯自分の体の権利

『自分の体は誰のもの?』という問いから授業をスタートしました。
自分の体の権利は自分にあることを軸に同意や避妊・性感染症の予防についても話をしています。

全員が『自分のもの』と答えることができていました。子供達にとっても当たり前のことではありますが、確認のため押さえておくべき大切なポイントなので、あえて冒頭で押さえました。

◯セックスの種類と同意

子供たちには3種類のセックスがあることを伝えます。
①赤ちゃんを産むセックス ◯
②ふれあいのセックス ◯
③支配・暴力のセックス 
✖️

③の支配・暴力のセックスはしてはいけないセックスだと伝えた上で①②と③のセックスの違いについて問いかけました。

答えとしてはお互いの同意です。二人が同じ気持ち=セックスがしたいと思えているかどうか?が大切です。

片方がYESでももう一人がNOであれば、それは支配・暴力のセックスになることを伝えます。

◯赤ちゃんを育てるのに必要な条件

赤ちゃんを育てるために必要な条件とは?と子供達に問いかけをしています。

赤ちゃんを授かることはとてもおめでたいことですが、一人では生きていけない未熟な赤ちゃんを育てていくことの大変さを理解してもらうことが大切だと考えています。
短絡的な快感だけを求め、望まない妊娠をしてしまった場合に中絶や生まれたあとの虐待・ネグレクトに繋がってしまう危険性が高いです。

そんな悲劇が起きないようにするためにも、赤ちゃんを授かる上での必要な条件を知ってもらうために小さい子供がいる先生に体験談や心構え、必要な条件を話してもらいました。

子供を育てるということは自分自身の生活を一人で成り立たせた上で、さらに赤ちゃんのお世話をする力が必要とされてきます。

子供が好きだけでは、現実問題厳しいことが子供達にも伝わったようでした。

〇コンドームの使い方


望まない妊娠や性感染症を防ぐ手段の一つとしてコンドームに関する知識を学んでもらいました。今回は取り扱い方の注意点を伝えるのと、実際にコンドームをペニスの擬似模型へ装着してもらいました。

子供たちの様子や感想を見ていると全員がコンドームを触るのは初めてだったようです。
わざわざ機会を作らないと触ることはなかったと思います。いざ、本番で使う時に初めて触るのでは、間違った使い方をしてしまうリスクが高いと改めて感じました。子供によってはうまく扱えなかったりヌルヌルとした感触を嫌がる子供もいました。

なので、保管方法→装着時の注意→捨て方まで工程ごとにポイントを丁寧に説明しています。

〇保管方法

財布の中に保管する人がいますが、その場合は劣化の原因となります。百均に売っている缶ケースに保管しておくなど持ち運びにも工夫が必要です。

財布での持ち運びは🆖
缶ケースでの持ち運び例

〇使用期限と袋の開け方

使用期限があります。商品のパッケージに使用期限が記載されています。そんなに短いわけではありません。使用期限を過ぎると劣化の可能性が高いです。

袋を開ける際は下記の2点を注意してください。

①コンドームを袋の端っこに寄せる

②袋の切れ端は全て切り取る

上記の2点をまもることで、袋のとんがった部分がコンドームにあたり破れの原因になることを防げます。

〇表と裏に注意

表面と裏面があります。
表と裏はイラストで示します。

パッケージに男性側や裏面など表記がある場合もありますが、表記がないものは現物を見て判断しなければなりません。

裏と表を間違えてしまった場合、やり直すのではなく勿体無いですが、そのコンドームは捨てて新しいものを使用する必要があります。一度装着したことにより、精液が付いているので、性感染症や妊娠のリスクがあります。


〇根元まで装着する

ペニスの根元まで装着することが大切です。
根元までつけないと性液が漏れる原因になります。根元までつけるためには、一度コンドームを上まであげて皮と馴染ませることが大切です。

〇万が一の時は


万が一、コンドームが破れてしまった時は、緊急用ピルを72時間以内に使用する必要があります。

◯抑えるべきポイント

性教育は、はどめ規定や過去の訴訟の事例など大切な内容である一方、おさえておくべきポイントもある。


・児童生徒の発達段階を考慮すること
・学校全体で共通理解を図ること
・保護者や地域の理解を得ること
・集団指導と個別指導の内容の区別を明確にすること

文部科学省

今回、気をつけたポイントを紹介します。

◯保護者への案内

保護者へは二度に渡り性教育を行う上での案内をしています。今回はコンドームの使い方や性行為に踏み込んだ内容となっているからです。
一度目は外部講師を招いての授業であったこととこれまでの性教育の中で、より踏み込んだ内容だったため、個別懇談会で案内しています。

そして、2回目は案内文を配布している

案内文に織り込んだ内容は下記の内容である。

  • 授業内容

  • 発達段階に応じてグループ分けを行っていること


◯校内での情報共有

特別支援学校はサブティーチャーと協力して行うこともあるので、参加する先生方への目的の共有や内容の共有は欠かせないです。グループ活動などは個別の支援が欠かせないために、内容を情報共有されてないとうまく個別支援ができないためです。

また、性行為の中身に踏み込んだ性教育なので管理職への確認も欠かせません。

◯子供達の発達段階に応じたグループ分け

【内容の取り扱い】
妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の過程は取り扱わないものとする。

中学校学習指導要領 H29

高等部3年生とは言え、様々な発達段階の子どもたちがいます。上記の指導要領は中1段階のものです。中1段階の発達段階であれば、今回の授業内容は発達段階に見合わないものとなります。従って、グループを分けてコンドームの装着方法を取り扱うグループとプライベートゾーンについて学ぶグループと分かれています。

◯性教育の視覚支援

◯イラストの活用

口頭指示では伝わりにくいこともあります。コンドームの装着方法はほとんどの生徒が初めての体験だと思われます。口頭指示だけでは伝わりにくいことばかりです。少しの誤りが性感染症や命に関わることです。従って視覚支援が大切です。そこで活用したイラストの無料提供サイトをご紹介します。


これらのイラストを活用して、手順を示しています。コンドームの裏表なども口頭指示では伝わりにくいこともあるので、イラストで一工程ずつ示したり、大切な部分をイラストで補っています。

◯動画を用いてコンドームの装着方法を

イラストでの視覚支援に加えて動画での視覚支援も行いました。動画の中では付け方以外に装着のタイミングや避妊確率の話など、より詳しいお話を聞くことができます。

◯絵本の活用

発達段階を考えた上でコンドームの話は難しいも考えたグループの子供達には絵本を使ってプライベートゾーンを中心に授業を行いました。

●プライベートゾーンを知る
自分の体はどこも大切だが、他人に見せないところがどこなのか?絵本を通して教えることは大切です。


◯参考にした文献

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