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廃城にて

その部屋の光景を目の当たりにすると、彼は小躍りするほど喜んだ。そこらじゅうに剣や槍、盾等が散らかっていた。
「こりゃ、とんでもねぇ部屋にぶち当たったもんだぜ」
高価そうな武器や盾をかき集めると両手で抱え、出口へと向かった。相当な重量であろうが彼の足取りは軽かった。強欲の為せる業であろう。
ふと横を見ると、薄暗がりの中に大きな宝箱らしきものを見つけた。
「ああ、チキショウ。もう持ち切れねぇ…。まぁいいさ、急ぐことは無ぇ。こんな辺鄙(へんぴ)な所に来る物好きな奴は居ねぇ。街でコイツ達を売っ払ったら直ぐに戻ってきてやる。待っててくれよ、俺のお宝ちゃん」

後ろ髪を引かれる思いで部屋を出ようとする彼の背後でなにやら宝箱が音も無く蠢き始め、直ぐに牙だらけの顔が浮かびあがり、それは強欲な獲物を目掛けて飛びかかった。

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