LayerXのFinTech事業部 Q&A
LayerXから三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)に出向し、Engineering Managerを務めるmasudaです。
今回は、よく頂くご質問であったり、そもそも事業として何をしているの?というのを纏めてみました。
はじめに
FinTech事業部はLayerXでは何か業務をしているの?
FinTech事業部のメンバーは、三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社(以下、MDM)へ全員が出向して日々業務を行っていますので、LayerXの社内で業務を行うことは殆どありません。定例やイベントごと等には出席しています。
ちなみに2023年7月時点ではLayerXと同じビルに入居していまして2F, 3FがLayerX、4FがMDMになっていますのでイベント参加などは気楽に移動が可能です。
出向しているMDMってどんな会社?
三井物産・LayerXを主要株主として2020年4月に設立された会社です。
投資家の皆様から、資金調達を行った資金で、不動産・インフラへの投資を行うファンドを組成・運用する「アセットマネジメント事業者」です。
アセットマネジメント事業とは?
投資家と投資対象となるアセットを実際に、お繋げして、資金調達して投資・運用・リターンをお返しする。このプロセスを運営する、いわゆるファシリテーター的なことを行う業態になります。
大まかにですが、以下のような業務の組み合わせで成り立っています。
投資するための物件やインフラ等のアセットを探しに行くソーシング
投資したい投資家さんを探してくるマーケ活動
アセットに実際に投資するというマッチングをしてファンド組成
ファンド組成後に資産運用を通じて投資家さんに資産状況をレポート
証券売買のための流動化
ファンドの契約期間満了による解散
このようなプロセスになっています。
そのアセマネ会社では何に取り組んでいるの?
経営理念は「眠れる銭」を、Activateせよ。と金融のいわゆる固い会社にしては、キャッチーなキーワードを使わせていただいています。
日本には沢山のお金が眠っていますが、お金というのは巡れば巡るほど、社会に様々な便益が生まれていくので、この眠っているお金をデジタル技術で、どうやったら活かしていけるのか。より社会を豊かにできるのか。
アセマネ事業を行いつつ、その為の資産運用に関する様々な負の解決に取り組んでいます。
MDMが取り組む社会課題
そもそも眠っているお金とは何?
日本における個人資産が、どのような運用をされているのかというのが以下の図になります。
貯蓄性資産とありますけれど、いわゆる貯金や預金、保険などもありますが、ほぼ利回りのない動かないお金というものが沢山あり、これらの比率が、米国やユーロエリアなどの地域と比べても、非常に大きい状態になっています。それこそ預金が50%を超えるような状態で運用しているというのは、世界でも珍しい状況です。
貯蓄から投資が謳われて久しく、国からも実際にお金を運用してほしいと様々なメッセージもでていますが、なかなか投資に動いていかない状態になっています。
なぜ眠っている状態なの?
1つは感情的な部分もあるかなと考えていて、投資についてどういうイメージを持つかというアンケートの結果が以下の図になります。
半数以上がネガティブな感情を持っていることがわかります。怖い、ギャンブル、リスクがあるというものですね。何を行うにせよリスクはあって然るべきものですが、こういった後ろ向きな感覚をお持ちの方が多くなっています。
とはいえ高リスクの商品で、生活に支障をきたすという事例も存在はしているので、どうしてもこういった領域に進めないというケースはあるのかなと考えています。
そして、投資先の商品が投資信託とか、運用をほぼお任せするというものが多かったりすると思うのですが、投資初心者など向けには、投資信託とか、運用をほぼお任せするというものがありますが、以下の図から投資信託のコストは意外と高いというのが見えてきます。
運用損益をコストとリターンで足しあわえていくと、コストが年間手数料2%かかることでリターンがなかったり、ないしは、マイナスになってしまっていたりするわけです。
金融商品という性質上、コストがかかってしまうのは仕方がないところがあるのかもと思いつつも、なかなか安定した資産形成に対しては、ネガティブになってしまうのも理解はできるなという状態だったりします。
安定した投資商品って少ない?
安定した資産形成を謳うときに、それに見合う投資商品が、とても少ないと感じています。例えば、我々個人が投資できるものの多くが、株、REIT、為替取引などの価格変動が大きい商品であったり、一方で貯蓄性資産にほぼ近いものであったり、という二極化が進んでしまっているという状況と考えています。
この二極化の間に、一応真ん中のアセットは存在するものの、個人には供給が、ほぼないゾーンになっています。
プロ向けには、不動産やインフラなど立地が優れた大規模で安定して利用される資産があるのですが、一口の投資サイズが数億円だったりします。その代わり運用のプロが管理運用するので、比較的安定した投資商品になりやすい性質があります。
一方で、個人向けの証券化商品(REITは除く)というのもの存在はするのですが投資対象の規模が小さめになりがちだったりします。一口の投資サイズは小さくできるので、様々な方が投資することはできるのですが、販売することが主目的になってしまったり、運用管理等が行き届いていないことがあったり、調べてみると色々な行政指導とかもあるケースもというところで、プロ向け商品との差が非常に大きく開いている状況です。
なぜプロ向け商品は、大きな単位でしか投資できないの?
優良な大きな資産の多くは私募によって成り立っています。私募というのは法律上、多くの人数にアプローチできないのですが、非常にアナログなプロセスで管理されています。
そのプロセスの中では、多数の契約書や報告義務等の、いわゆる重い事務処理がありますので投資家さんが増えれば増えるほど手続きがとても多くなり、コストとして反映されてしまいます。
例えば100億円の不動産を買いましょうという場合に、10億円単位で集めるのと、100万円単位で集めてくるのだと対象となる投資家数が物凄く変わってしまいます。投資家数が多くなるとコストも増えてしまうので運営が非常に難しくなってしまいます。
仮に、それでも提供しようとするとコストが上がり、つまり手数料が高くなり、利回りを圧迫してしまうという、トレードオフな関係になっていて、大口投資しか受け入れられませんとなっているのが現状になります。
なぜそんなにコストが高いの?
金融機関ではその他の事業会社以上に、ガバナンスやコンプライアンスに関する法律をきちんと遵守して守ることが必要になります。
この守っていますというのを証明するためにも、従来は紙とハンコでワークフローを作ってきました。
本当に、すごい量のワークフローがあり、それをこうポチポチポチポチ…やりながら運営をしています。
投資家さんや扱うアセットが多ければ多いほど、個別対応する必要がありますので手数料は高くなりやすい構造になっているのです。
課題へのアプローチ
上記の課題があるからこそ、デジタルで変えられるんじゃないか。というのが我々エンジニアの存在意義になっています。
ゼロからデジタルなアセマネ会社を作り直したらどうなるんだろう?ということに対して様々な取り組みをしています。
手数料による利回り圧迫について、どう対応している?
利回りを圧迫しているコストが発生している基本プロセスを観察し、それらをデータ化して業務をソフトウェアに乗っけていき、どれだけ省コストにできるかということに挑戦しています。
これがうまく進むと、業務プロセスが半自動化、ないしは、自動化されていきコストがどんどん落ちていき、そうすると、沢山の物件を扱っても利回りを圧迫しないようになり、管理等の手続きコストも小さくなってくる。
コストが小さくなるということは、結果として多くの方に魅力的な投資商品をお届けすることもできるようになる。
社内で「AMDX: Asset Management DX」と呼んでいるチームでの取り組みがここに該当します。
最低投資単価のハードルについて、どう対応している?
AMDXの取り組みに加え、規制上必要なやり取り等もWeb経由で完結できるようにすることや、新たな手法を活用することで、いままで個人が投資できなかった大規模不動産などを小口化して小さく投資できるプロダクトを作っています。
わかりやすい事例としては是非ALTERNAを見ていただければと思います。
先に見据えるコトは?
アセマネ事業として、ただ単に1つの金融商品を作っていこうというだけではなく、もっと先に見据えるものもあります。
こちらMDM代表の上野が書いたものなのですが、明治においては銀行からの融資によって大きな会社が生まれて、新しいサービス等も立ち上がっていき、経済発展していきました。預金している人はそれで利潤を得ることができていたのですが、この仕組みが現代になるにつれ、だんだんと行き詰まってきてしまったというのが現状だと思っています。
結果として今個人資産は約2,000兆円あり、その半分の1,000兆円が預金になってしまっています。融資にまわらず行き場もなく眠っているというのは価値を産んでいない状況と言っても言い過ぎではないと思っています。
この1,000兆円が仮に1%動くだけで10兆円という規模になります。これを動かしていくことで再びお金がいきいきと社会を変える原動力になっていくのではないだろうかと思っています。
何が金融事業者として面白いのか
ライセンスについて
この金融商品を作るところ、運用するところ、そして売るところを一気通貫で扱える非常に重い金融ライセンスを取得しています。
ここまで一気通貫で扱っている会社というのも非常に少ないというのと、それこそスタートアップでは簡単にはできないことかと思っています。
事業の状況はどういう感じなの?
例えば我々は既に2,300億を超える不動産を実際にファンドとして取得し、運用している形になっています。※2023年4月時点
これほど大きなお金を創業3年のタイミングで巻き込めるスタートアップは国内だとかなり珍しいと思います。それができるのも三井物産様をはじめとした強力なパートナーシップがあるからだと思っています。
開発者としての面白さは?
課題へのアプローチでも少し触れましたが、AMDXの取り組みを通じて新たな業務プロセスや非常に難しい社会課題に対してアプローチできるチャレンジングな仕事ができるというのがあると思います。
高トラフィックを捌くような難しさは現状ありませんが、どう業務を再定義して、それをガバナンスを保ちつつ、ソフトウェアに乗せていくのかという難易度は高いと思います。
アセマネ等に関する各プロフェッショナル人材と、LayerXのソフトウェアの知見を掛け合わせることでMDMというのが成り立ち。一気通貫のライセンスを取得して開発を進めたりということが実現できている形になっています。
こちらの記事も参考になるので、興味があれば覗いてみてください。
大企業連合とスタートアップの滑らかな連携
ここまで大企業の連合とスタートアップが滑らかに連携ができている事例というのも、珍しいのかなと思っています。
半沢直樹的なイメージでいうと出向というと多少ネガティブな印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではなく本当に優秀なメンバーが集まり、本気になって取り組んでいるのも大きな理由かと思います。
以下の記事に詳しく書いてあるので、ご興味があれば読んでみてください。
体制ってどうなっているの?
MDM全体の組織規模は?
2023年7月時点のMDMは各出向者、プロパー含めて50名弱の組織規模になっています。
取締役にソフトウェアが分かる人はいるの?
LayerXの代表取締役CTOの松本含め、経営の意思決定にエンジニア、元エンジニアが関わっています。
LayerX FinTech事業部の出向者はどれくらい?
このうちソフトウェア開発においては約20名がLayerX FinTech事業部からの出向者になります。
エンジニアの人数は?
12名になります。
内訳はALTERNAの開発に6名、AMDXの開発に4名
CorpOps(情シスやセキュリティ)に1名
加えてLayerX代表取締役CTOの松本となります。
エンジニアチームの年齢層は?
20代〜40代まで幅広く在籍しています。
30代前半がボリュームゾーンになります。
AMDXは、どのような開発を行っているのか
技術スタックってどうなっているの?
金融の開発ということで、物凄く難しいことをやっているのではないかと言われることもあるのですが、開発チームとしてやっていることは一般的なWeb開発を想像していただければ良いかと思います。
インフラはAWSのECSを主に利用し、GoとTypeScriptでアプリケーションを作っています。
より詳しい概要は以下の記事を参考にしていただければと思います。
一方で、金融ならではのガバナンスを保たなきゃいけないという点はあるので、その部分についてはシステムガバナンスも含めてコードで定義しながらIaCを回しながら改善していくことに取り組んでいます。
開発フローってどうなっているの?
下記図の形で2週間周期のスクラムにて進めています。
半期に一度、アセットマネジメント部門の方も含め、開発内容の優先度を決定しています。
要件については我々エンジニアが主体的に決定しています。最近は、エンジニア自らがアセットマネジメント業務に取り組みつつ、ドメイン理解を深めています。
開発についてはNotionを利用してプロジェクト管理をしながら、疑問点があればアセットマネジメント部門の方にヒアリングさせていただきつつ進めています。
進め方はGithubを利用してCICDでlintによる構文チェックやTestなどを実行し、PRにてレビューをしつつ進めているイメージです。
また、少数精鋭で開発を行っていることもあり、機能開発するためにバックエンド、フロントエンド、インフラ問わずに必要な実装は全て行う形で進めています。そうは言ってもチーム開発なので得意分野で分担することや苦手分野をフォローしあうことも多く、わいわいやっています。
出来上がった機能などはデモで素直な意見をいただき、それをまたプロダクトに反映して改善していくということをしています。
コミュニケーションの様子について
金融って固そうなので、Privateな場所でコミュニケーションされていたりしないのですか?
必要なコミュニケーションは、ほぼSlackのパブリックチャンネル上で行われています。
もちろん、何でもPublicにすることはせずに金融としてPrivateにすべき法人関係情報や、給与などのPrivateな情報等は関係者のみのクローズドな形で運用しています。
コミュニケーションの取り方に特徴ってある?
有志が社内で料理をつくって、皆でわいわいしています。
代表が自ら麻婆豆腐などを振る舞うこともあります。
大企業や不動産関係のエンジニアとはバックグラウンドが異なるメンバーでも、こういったコミュニケーションなども通じて人間関係を構築しています。
基本的な情報について
休暇はどんな感じですか?
完全週休2日制(土・日)、祝日と年末年始休暇があります。
健康保険はどこでしょう?
LayerXからの出向の場合はIT健保です。
就業時間ってどうなってますか?
9:15〜17:30になっています。
※LayerXと違いフルフレックスではありません
※一方でお子様の送り迎え等、事情に応じて柔軟に対応できる風土です。
リモートはできるの?
リモートは可能です。MDMの場合フルリモートは要相談になります。
※ちなみにAMDXチームは社内コミュニケーションなどを目的として平均週2〜3日は出社しています。
おわりに
MDMではアセマネ業務の業務効率化システムや、デジタル証券で大型不動産やインフラ施設といった安定資産に投資できるサービスALTERNAを一緒に開発してくれるエンジニアを募集しています。
少しでも興味を持っていただけましたら、ぜひお気軽にご応募ください!
また、LayerXではLayerX Opendoorという取り組みで様々な職種やテーマで話を聞けます。
アカウント作成も不要で簡単に申し込みできるので、ぜひ気軽にチェックして申し込んでみてください。
FinTech事業部(MDM)の事業概要や、その他情報はこちらが参考になります。
私のカジュアル面談はこちらになります。