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シリア

いろいろな国を周って文明や文化の違いはあれど、基本的にみんな感じることは一緒だとよく思いました。どこの国の人もおもしろかったら笑うし、悲しかったら涙が出て、お腹が空いたらおいしいものが食べたくなります。

ただ、海外にいると露骨な差別を受ける事がたまにあります。だいたいが発展途上国の国で「外人料金」という、現地人の決めた訳のわからない料金を請求されたりボッてきます。あちらの言い分は「うちらは貧乏人、あんたらは金持ち。だからお金もらう」という事を、真顔で言ってきます。

最初はいちいち腹が立ちましたが、そのうちこいつはどんな事を言ってくるのかなと、楽しみになる時もあります。ただ、こっちが疲れていたり機嫌が悪かったりする時は、背負ってるバックをおもいっきり顔面に投げてやろうかなと、思ったりもします。

人種的な差別もたまにうけたりします。シリアでは、途中まで目的地が一緒だった日本人男性のタロさんと行動していました。ユーフラテス川があるデリゾールという街に、夕方ごろ着きました。宿に着くと夜にお祭りがあると知り、二人で見に行きます。川沿いに屋台が並んでいて、みんな楽しそうにしているのが印象的でした。

ぶらぶら歩いていると、シリア人2000人ぐらいに対して日本人は僕ら2人なので、やたら好奇な目で見てきます。旅をしていて現地人に見られるのは慣れていたけど、露骨に見られるのはなかなか気持ちいいものではないです。

現地の若者が「ヘイ、チーノ!」と、ゲラゲラ笑いながら通り過ぎて行きます。「チーノ」はスペイン語で「中国人」という意味で、あからさまにアジア人を差別した感じで呼んできます。「どうでもいいけど僕たちは日本人だし、中国の都市の文明を知ったらお前ら驚くぞと」と、思いつつ無視します。

特にタチの悪いのは、僕らの周りを何人かで囲んできて、歩きながらちょいちょい蹴ってきたり、足を引っかけたりします。さすがにこれには怒り心頭。タロさんもやられているし「おい、クソガキ。おまえの栄養不足そうな細い足なんか、ボキンって折っちまうぞ」と思いながら、若者の一人を捕まえようとしたら、その一部始終を見ていた近くのおじさんが、若者にアラビア語で怒り石を投げて追い払ってくれました。おじさんに「ありがとう」と英語で言ったら「まあ、気にすんな」みたいな事をアラビア語で言われ(言われた気がする)宿に戻ります。

帰り道に「タロさん、あのガキどもには腹立ちませんか?久しぶりに喜怒哀楽の怒でいっぱいでしたけど」と、言うと「うん、でも俺らに問題を起こすのも現地の人だけど、解決してくれるのも現地の人だからね。現地の人がいなきゃ俺らは飯も食えないし、宿も泊まれないわけだからさ」と、なかなかイケメンのタロさん。言うこともイケていました。

確かにどこの国に行っても現地の人々は、優しくもてなしてくれるし(時にはしつこいぐらい)、道を聞いたら一生懸命に教えてくれて(あってるかどうかは別にして)、いい人は圧倒的に多いです。

でも、嫌なことが一つでもあると、今まで助けてくれた人のことを忘れて、嫌なほうの印象が深くなり、その国が嫌いになったりする時もあります。そんな時はタロさんの言葉を思い出します。僕もイケてる旅人になりたいと思った夜でした。


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