《椿の花咲く頃》〜 ロマンスでミステリー
Netflixおすすめに従ってみた。
従ってよかった。
力強い一人の味方がいれば
オンサンという狭い街で、街の男たちの憩いの場所ができた。
【他所からきた】【シングルマザー】の【若い美人】(コン・ヒョジン)が【お酒を提供する店(スナック)】を開いたのだ。
街の女たちが胡散臭く思う気持ちがわかる。
自分の夫たちが夜な夜な通う。
なんとなく嫌だ。そんな気持ち。
そのモヤモヤは、それぞれの夫にも向かうけど、そんな店を開いた【よく知らない若い美人】にも向けられる。
夫たちの知らない、知ろうともしない、昼間の街の澱み。
その【若い美人】が必死で子育てして生活してるのも分かってる、自分の夫たちなんか相手にしてないことも分かってる、けどモヤモヤ。
【若い美人】側も、生い立ちのせいもあるが、同じ女性としてそのモヤモヤが分からなくもないから、身を縮めてる。
その状況を、空気を読まない正義漢(カン・ハヌル)がぶった斬る。
ストーカーすれすれに、一目惚れからの猛アタック。
「あなたが好きだ」「あなたはきれいだ」そして「あなたはあなたのままで素晴らしい」「何があっても自分はあなたの味方でありたい」「あなただけではなく、子どものことも大切に思ってる」
幼い頃からの辛さで頑なになっていた心がゆるゆると解けていく描写が素敵だ。
そして身を縮めていた彼女は、本来持っていた明るさと強さを花開かせる。
突き抜けた明るさのカン・ハヌルと 妻へのコンプレックスのオ・ジョンセ
カン・ハヌルの明るさがいい。
ド天然の地元産の警官の熱苦しさがあってこそ、と思える。嫌味がない。
その熱苦しさで、猟奇的連続殺人犯をも追い詰めていく。
オ・ジョンセは、初めましてが《サイコだけど大丈夫》だったので、この作品での『妻のことは嫌いじゃないんだけど出来過ぎてて、なんかイヤ』のコンプレックスに囚われる、ちょっと若い美人と見れば下心を持つ中年男姿にいい意味のショック!
その『できすぎた妻(ヨム・ヘラン)』も違う方向で悩んでる。それを言葉数少なく、でもしっかり観てる側に伝える。
二人は【俳優さんの層の厚さ】の象徴的存在感だ。
誰もが持つ『コンプレックス』〜 プラスに転じるかマイナスに転じるか
どんな人も何かしらの『コンプレックス』を持っていると思う。
「無い!」と言い切れる人っているんだろうか?
スナックのバイトさんヒャンミも、引きずった『コンプレックス』によって善悪の境い目を見失ってしまう。
この作品での猟奇的殺人犯も『コンプレックス』に振り回され過ぎて、越えてはいけないラインを越えてしまった。
だからこそ『コンプレックス』をどう捉えていくか、生きていくためにプラスの材料にしていけるか、をこの作品は問いかけているように思えた。
作品全体の色調
なんだか暖色。
オンサンという街の住人が、基本的にはいい人たちなんだと、画面の色味から伝わってくる。
間に挟まるサスペンスシーンとの対比になってて、いい感じ。
この作品に限らず、陰影やコントラストの対比がドラマの主題をより鮮明に伝えてくれる。
照明スタッフと脚本家と監督の方向性が一致してるんだろうな。