米経済をモニターするデータ紹介
先週月曜の「円キャリー取引フラッシュクラッシュ(私の命名)」でクライマックスを迎えた8月の下げはたったの7営業日で戻してしまった。ここからまた下げるのか高値更新かは今後の経済次第。データの王様は雇用統計だけど、先行指数データは他にもある。今日は私が今注目してるデータ情報のシェア。
8月の下げはとりあえず終了
8月に入ってからの米経済指数が予想より悪かったことを受けて下げた米株相場は、先週月曜日に円キャリー取引の急激な巻き戻しによる強制売却でクライマックスを迎えた。
このことは先週の投稿に詳しく書いたのでそちらを見てほしい。
その後、米株相場は8営業日中、7営業日で上げた。8月1日からの下げは水曜日までに全て取り戻した。
さらに木曜はRetail Sales, Initial Jobless Claims, Walmartの決算と全て経済にいいデータが出たのでS&P500もQQQも高い出来高で50日移動平均線を奪還した。
火曜日にはIBDのフォロースルーデーも出て、IBDの見立ても今日は40%-60%投資まで回復した。
私は先週の月曜日に書いたポストで説明したように、今回の下げはFlash Crashに近いので長くは続かないと思い、月曜日にNVDAとMETAを買い足した。
私が買ったところからたった8営業日でNVDAは24%、METAは13%上げた。まさにFlash Crashだった。
でもここから先は経済次第
相場のフォーカスが「インフレ・利下げ」から「経済」にはっきりとシフトしたのは7月のFOMCのミーティング。
よって、今後の相場は経済次第。今は良いニュースは良いニュース、悪いニュースは悪いニュースの相場だ。
つまり、経済で悪いデータが出ればまた株は下がる。
フォロースルーデーが出たからといって、安心はできない。フォロースルーは騙しの時も多々ある。
去年の夏の3ヶ月連続の下げも騙しのフォロスルーデーが何回かあったけど、株価は10月の底が入るまで下がり続けた。
今年が去年と違うところ
去年の夏の下げと比べて、今年の下げの良いところは先週月曜日のVIXのスパイクと大きな出来高を伴う下げだ。
あれはいわゆる「キャピチュレーション(降伏)」といわれる、市場の膿を出す大商いの日と見なしていいと私は思ってる。
去年の夏の下げはキャピチュレーションがなかった。
先週のポストでも言ったけど、VIXが65まで行ったのは過去35年で3回しかない。リーマンショックとコロナショックと今回だ。
あの日でかなりのレベレッジをかけた逃げ足の早いポジションは解消されたのではないかと思う。
今株を持っているのは長期でじっくり腰を据えて持つ余裕のある株主たち。それはとても健全なこと。
私的には月曜の会場前の朝7:30のレベルは経済指数が完全にメルトダウンでもしない限り、今年は割れないのではないかと思ってる。だから私は先週月曜に株を買った。
でも悪い経済データが続けば月曜の底を再テストする可能性は十分にある。
今、データの王様は雇用統計。でも先行指数データもある
この状態で一番相場を動かすのは雇用統計。7月の雇用統計は4.1%の予定だった失業率が驚きの4.3%で株が大きく下げた。
でも8月のデータは9月6日まで出てこない。
そこで、もっと頻繁に見れる先行指数になり得るデータに今投資家たちは注目している。
今日はみんなが自分で一次情報を仕入れられるように、私が今注目してチェックしている情報をシェアする。
毎日見れるデータ
毎日アップデートされる経済の先行指数にOpen Tableのレストランの席予約状況とTSA(Transportation Security Administration・運輸保安庁)のチェックポイントを通過した人の数がある。
Open Tableのチャートはこんな感じ。
これは2023年と2024年の同じ日を比べてるので、季節性を排除して国民が前年に比べて外食をどれくらいしているかが毎日見れる優れもののデータ。
このデータは誰でも毎日無料で見ることができる。
これによると、今の所、経済が減速している様には見えない。
TSAのデータはこんな感じ。
これはTSAのサイトにあるデータを私がエクセルに落とし込んでチャートにしたもの。これもデータは毎日アップデートされる。
このデータはアメリカの空港で飛行機に乗るためにセキュリティゲートを通過した人数を毎年、同じ日で比べている。
コロナで激減した旅行者数は2023年にやっとコロナ前年の2019年のレベルに戻り、2024年は今の所、過去6年間で一番多い旅行者数を記録している。
このデータを見ても経済が減速している兆しはない。
これ以外にもIndeed(転職サイト)の掲載されている仕事の数、とか源泉徴収された税金の金額とか見れるデータは結構あって、今のところ、全て不況の兆しは見えない。
毎週見れるデータ
毎週見れるデータの王様はやはり毎週木曜日のJobless Claims のデータだろう。Jobless Claimsのデータは多少の弱さはあってもまだ安定している。
先週も今週も予想より良かったJobless Claimsが市場を動かした。Jobless Claimsは普段それほど注目されない。それだけ今は投資家たちが経済に注目している証拠だ。
こちらはRodbookの小売業売り上げの前年比。これも毎週アップデートされる。こちらも減速している様には見えない。アメリカ経済は約7割消費者なので、小売業売り上げのトレンドはフォローする必要がある。
Dallas FEDとAtlanta FEDがそれぞれ経済成長予想を逐次リアルタイムでアップデートしていて、こちらも投資家はチェックしている。今のところ、どちらとも経済が不況に向かう兆しは見えていない。
毎月見れるデータ
月1で出てくるデータはあまりにもたくさんあるのでここでは全て紹介しないけど、もちろん王様は第1金曜に出てくる雇用統計。
雇用統計以外で私が今注目しているのはミシガン消費者センチメント。
ミシガン消費者センチメントは毎月500人から600人ほどの一般消費者が50ほどのアンケート質問に答えて集計される。
月の半ばにその月のプレデータが出てきて、月後半に最終データが出る。よって8月の情報が8月の半ばにわかる。かなりの先行データだ。
5月6月7月と連続で下がっているので明日出てくる8月のデータが気になる。大きく動けば、9月頭の雇用統計の先行データになり得る。
3ヶ月ごとに見れるデータ
これもたくさんあるけど、私が今注目してるのは消費者ローンの返済遅延率。これはNew York FEDのウェブサイトで見れる。
今2Q のデータまで出てるけど、クレジットカードの遅延率はちょっと上がっているのでモニターが必要。それ以外のローンの遅延率は割と安定している。
New York FEDはすごい詳しい消費者ローンのリサーチレポートを一般公開してくれているので、クリックして見てほしい。
S&P500はそんなに高くはない
最後にこれは私がエクセルで作ったS&P500の過去のPEの推移と今の株価に基づいた2024年末と2025年末のForward PE。
Estimate の部分はもし今のS&P500 の値段がそのままだったら2025年末までにPEは18まで下がる、ということ。
なぜなら今S&P500の2025年コンセンサスEPS予想成長率は16%だから。
これを見ると確かに今のバリュエーションは過去35年間の平均よりは高い。
今の金利は過去平均より高いので教科書的にはバリュエーションは過去平均より低いべきなのも確か。
でも世紀の大バブル!と騒ぐほどでもないと私は思う。
特にS&P500 のPEはPEの高いマグ7に引っ張られているので全体的には割と健全なのではないか。
でもPEはそこそこ健全だとしても、もし来年不況が来るならこの16%EPS成長率はもっと下がるだろう。
となると、PEのEが下がるのでもしPEはそのままだったとしても、株価(P)はダダ下がりになる。
でも今のところ、不況が迫っている兆しは見えない。
結局、不況は怖いけど経済はわりと堅調で相場は「心配の壁」を登り続ける。逆に心配がなくなった時の方が怖い。
よって私は引き続き、不況の兆候を入念にモニターしつつ、Buy the Dipの戦略で行く。