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没個性が肯定される教育を受けた私が、入社前に就職をやめて、レールを外れた話(4/5)
第4回:レールから外れる – “就職しない”選択肢とギャップイヤーの可能性
内定を断った私は、「じゃあ、これから何をするの?」という問いかけと向き合うことになりました。世の中には「新卒で就職=当たり前」という空気がまだまだ根強くありますが、実際のところは選択肢が意外と多いのではないか。そう感じ始めたのです。
就職しないにも、いろんなパターンがある
大学院や専門学校への進学
一度きりの新卒カードを使わず、学びを深める道。ギャップイヤーをとって旅に出る
仕事を始める前に世界を見て回る。あるいは、国内外問わずボランティアなどに参加する。フリーランスや起業
ハードルは高いかもしれないけれど、やりたいことが明確ならば思い切り挑戦してみる価値がある。
こうした「就職しない」選択肢は、「働かない」という意味では決してありません。むしろ、未来に対して主体的に動いている姿だと思うのです。私自身、「海外へ行きたい」「もっと面白い人との出会いを求めたい」という気持ちが強く、心を惹かれるプランばかりでした。
未経験から飛び込んだエンジニアという世界
そんな“レール外し”思考の真っただ中、私はどうしようか悩んでいたときに「まずは行動してみよう」と決めました。そこで選んだのが、まったく未経験からエンジニアに挑戦するという道です。4年生になって数ヶ月経ったタイミングで業務委託の仕事を始め、実際にエンジニアとして働き始めました。
なぜエンジニアだったのか。それは、何か新しいものを生み出すとき、技術があれば圧倒的に可能性が広がると感じたからです。ソフトウェアでもサービスでも、エンジニアの力が必要とされる場面は数えきれないほどある。逆に言えば、自分がその技術を身につければ、どんなアイデアだって形にしやすくなる——このワクワク感に突き動かされたのだと思います。
もう一つ、私の背中を強く押したのは、この言葉でした。
「悩んだときは困難な道を選ぶこと。そしてその道で全力で努力して、その道を正解にしていく」
私は経営学部出身で、プログラミングスクールに通った経験もなければコードに触れたことすらほとんどない、いわば“超ど素人”でした。それでも「困難な道だからこそ、成長できる余地があるかもしれない」と腹をくくり、挑戦することに決めたのです。
自分だけが握る“成功”へのカギ
もちろん、全く未知の領域に飛び込むのは想像以上に大変でした。最初の3ヶ月は「まるで中学生のときに初めて英語を学んだときのような戸惑い」を再び体験する日々。出勤後には「なぜこんな簡単なコードも書けないの?」と自分を責め、涙ぐむことも何度もありました。
しかし、これまでのしんどい経験と違ったのは、「できない理由が自分の中にしかない」という事実でした。人間関係のいざこざもないし、他者の評価に振り回されるわけでもない。自分がコードを書き、エラーを直し、試行錯誤した分だけ成果に近づいていける。それが痛いほどわかるからこそ、諦めずに食らいつけたのだと思います。
半年ほどエンジニアとして働いてみて、アイデアを形にできる手応えは確かなものになりました。私に特別な“適性”があるかどうかは正直わかりません。それでも、「自分の発想が実際に動くアプリや機能になって世に出せる」という事実が大きな自信につながっています。
思い返せば、全くの初心者の 私を採用し、仕事を任せてくれる環境に出会えたのは、本当に人や機会に恵まれていたからこそ。そう考えると、やっぱり行動してみることの大切さをしみじみ感じます。
不安と恐怖はもちろんある
とはいえ「就職しない」と決めた瞬間から、不安や恐怖が一気に押し寄せてきたのも事実です。うつ病を経験しているだけに、「この先ずっと働けないんじゃないか」「周りと比べてどんどん遅れをとるのでは?」と頭をよぎることもありました。
そんな中、同時期に東南アジア各国を回る旅に出て、合計2ヶ月ほど過ごしたのも大きかったです。自分の幸せって何だろう? どう生きるのが自分に合っているんだろう?——そんな漠然とした問いへのヒントを探す旅でもありました。そこで気づいたのは、「他人と比べる」ことで生まれる不安や恐怖は底なしだけど、「自分にとっての幸せ」を基準にすると自然とやるべきことが浮かんでくる、ということ。私にとっては“レールを外す”方がしっくりくると再確認できました。
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需要が変われば社会も変わる
「みんなが“就職して安定”を望むから、企業も今の雇用形態を維持している」とよく言われます。けれど、もし若い世代が「もう少し柔軟な働き方をしたい」「数年間は自分の人生を模索したい」と強く望めば、企業の側も変わる可能性は十分にあると思うのです。
実際に、海外ではギャップイヤーの文化が根付いていますし、フリーランスが当たり前の国だって少なくありません。そういう風潮が日本でも増えてくれば、将来はますます多様な生き方ができる社会になっていくはずです。
次回予告
いよいよ最終回。第5回では、うつ病を経験した私が「他人と比べない」強さを身につけ、レールを外れた先でどんな未来を信じているのかをお話しします。良い面も悪い面も含めて、“今の自分の生き方”を正解にするためにはどうすればいいのか、一緒に考えてみましょう。
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