マッチャー(matcher)でOB訪問を受けた話_その3
3人目は就活を終えた学生さんからの相談であった。
学生のプロフィールを見る。中堅の国立大学で情報通信を専攻している。長期インターンの経験もあるようだ。残りの学生生活の過ごし方や勉強について相談したいとのこと。
いつも通り会社近くのカフェで待ち合わせして話を聞いた(※コロナ禍前の話です)。3人目となるとだいぶ慣れてくるものである。
長身、整った顔立ち、程よい体格と、印象はとてもよかった。それだけではなく、少し話しているだけで頭の回転の速さやコミュニケーション力に長けているのがわかる。いいなあ。
話を聞くと、学内推薦で大手通信会社に内定をもらったとのこと。彼は学部生なので院生との内部競争にも勝ち抜いたことになる。すごい。
「インターンでは営業が中心だったので技術面を磨こうと思っています。卒業までにプログラミングを覚えておこういますが、どんな言語がいいんでしょうね」
こんな相談だった。うーん、と私は悩んだ。残りの学生生活でわざわざプログラミングを覚えるよりも、海外旅行でもして色んな価値観に触れたほうが刺激になって良いのではないか。いや、ここまで優秀ならば、わざわざ海外旅行しなくてもいいかもしれない。
なんてことを考えていたら、趣味でつながった年上の方に言われた言葉をふと思い出した。
「僕らは利害関係があるわけではないでしょう。だから敬語なんか使わずに普通に喋ってくれていいんだよ」
私は年長者とコミュニケーションをとるのが苦手である。どんなに仲が良くなっても敬語を使って話していた。思春期を過ぎた頃、久々に会った祖母に敬語を使い、寂しそうな顔をされたのを覚えている。
趣味でつながった年長者の方にも常に敬語で接していた。敬語がいけないというより、私が敬語で話すことで壁を作ったように接していたことを気にかけていたのだろう。
それを思い出して彼にはこんなアドバイスをした。
・今のうちに会社の外でつながれる人を作っておくと良い。利害関係がないような趣味友達などがオススメ
・会社内でも新たなつながりはできるし仲良くなれると思う。しかし同じ職場で仕事をしている以上、利害関係が生まれ、対等な関係でなくなることもある
・プログラミングは入社してからで間に合う
そんな感じで1時間の相談会は終わった。彼は参考になっただろうか。話しているだけでとても要領が良いのがわかる。常に先を見据えて器用に行動してきた、順風満帆な人生なんだろうな。そんな印象を受けた。
帰りの方面が同じだったので、一緒に電車に乗った。車内で彼は自分の話をしてくれた。
「俺、本当は◯◯大学(難関国立大学)に行きたくて模試もA判定だったんです。だけど失敗して家族に迷惑かけたくなかったので、より確実に合格できる今の大学を受けたんです」
なんということだ。彼は周りに驚くほど気を遣っていた。器用に人生を謳歌してきたと思い込んでいた私は少し恥ずかしくなってしまった。
マッチャーをしていて嬉しくなるのは、学生の人となりを知れた瞬間である。おそらく私に対する警戒を解いてくれたからこそ、そんな話ができるのであり有難いことである。
彼に対して尊敬の念を抱いた瞬間、彼はこんなことも言った。
「今、保育士の卵と付き合っているんです。普段の会話?難しいですね。でも可愛いんです。自分、メンクイなんで。でへへ」
やはり器用な学生さんであった。
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