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ニッポン狂時代【1】

ボクの果てしない旅路はいったいどこまで続くのやら。今日も今日とて一文無しのくせに。長距離バスを乗り継いで地平線の向こうへ意味もなく突き進んで行こうと思いたったのだが、はてさてどうなるものやら、だ。
 
バスタ新宿で「安曇野・大町・白馬」行きに定刻ギリギリで乗り込めたのは僥倖だったが、外国人観光客が占領する車内のかまびすしさに呑み込まれ、髭面の白人男の隣しか空いていなかったのはラッキーなのか? 間違いなく靴は右足から履いたはずだぞ。

終点着が明朝6時32分。宿なんてのは取ってない。何しろ一昨日の日暮れ、異国のバザールさながらのちっぽけな商店街の「今年も終わりだ! 歳末大放出抽選会」というやけっぱちのガラポンで1等のこのチケットをゲット。その瞬間に宝くじの恩恵は私怨の塵となって成仏したのだから、当選ナンバーなんて確認するべくもなかったのに……。おめでたい朝陽を惰眠でやり過ごし、べらぼうに遅い朝飯を食いながら啓示に打たれた計画なんて推して知るべし。

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芥川賞作家・丸山健二の超訳「白鯨物語」(原作・メルヴィル「白鯨」)の連載を始め、小説、コラム、エッセイなどを収録した、言葉を駆使するエクス…

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