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M&Aを行うことで成長を遂げてきた特化型フィットネス企業『Xponential Fitness』の買収戦略と買収企業の概要
ブティックブランドを複数手掛けるXponential Fitnessの買収について簡単に調べてみました。
2017年に設立されたXponential Fitnessは、ピラティス、屋内サイクリング、ストレッチ、ボート、ダンス、ヨガを含む、9つ以上のブランドを保有し、世界中に3,000以上のフランチャイズブティックスタジオを運営する企業です。
同社の最大ブランドであり、世界各国で800店舗以上を展開しているマシンピラティススタジオ『CLUB PILATES』を中心に、米国で最初に展開を開始した屋内サイクリングフランチャイズ『Cycle Bar』、1on1のストレッチサービスとグループストレッチサービスを提供する『Stretchlab』、低負荷、高エネルギーの屋内ローイングトレーニング『Row House』、セレブリティトレーナーのAnna Kaiserが開発したインターバルとサーキットトレーニングを組み合わせたダンスワークアウト『AKT』、モダンなヨガブランド『Yoga Six』、バレエバーを使用した体幹トレーニング『Pure Barre』、トレッドミルベースのランニングスタジオ『Stride』などを運営しています。
創業者であり元CEOのAnthony Geisler氏は、大学卒業後にカジノ向けゲームソフトの開発会社を設立し、ラスベガスの大手カジノに65ものソフトを提供する事業で、会社の評価額を1億7000万ドルまで引き上げることで多くの資金を得ました。その資金を活用し、次に目をつけた事業がボクシングフィットネスジムでした。そこで、2001年に個人でボクシングフィットネスジムを買収し、全国展開を行ったことがきっかけとなり、ジム事業を開始しました。その後、2012年にジムを売却するまでの間、35の州でブランドを立ち上げることに成功しました。売却した資金を活用し、2015年にクラブ・ピラティスを買収し、2017年にブティックブランドを買収することで成長を続ける意図で、Xponential Fitnessを設立しました。
共同創業者であり、2017年5月より取締役会長を務めているMark Grabowski氏は、Snapdragon Capital Partnersのマネージング・ディレクターを務める人物であり、過去には、Xponential Fitnessにも投資を行っていたTPG GrowthでtoC分野のパートナーを務めていました。それ以前は、L Cattertonでマネージング・ディレクターを務めるなど多くのtoCビジネス向け企業投資の経験を持つ人物です。Mark Grabowski氏が共同創業者だったことで、ブティックブランドの買収モデルを展開できたことは非常に大きいと思います。
創業者に加えて、グローバル展開を本格化させるべく、2018年から最高開発責任者としてJohn Kersh氏を招き入れています。John Kersh氏は、エニタイムのグローバル展開を成功させた立役者です。
買収戦略:
Xponential Fitnessの事業モデルは、特化型のフィットネスブランドに限定し、買収していくというものです。一方で、特化型フィットネスブランドは、ブランドごとに世界観が異なり1つの会社でマネジメントするには難易度が高いと言われています。そうした中で同社では、ブランドごとに社長やCMO、不動産ディレクター、建設PMをコアメンバーとするフランチャイズパートナー支援チームを組成することで複数ブランドのマネジメントを行なっています。また、買収を効率的に推進するための専門チームも設置しているそうです。
買収企業の概要:
初期の買収は、2017年です。プライベート・エクイティのTPGパートナーズからの資金支援を受け、買収を開始しました。
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初期の買収には、サイクリングフィットネスジムのCycleBar(2017年9月)、ストレッチスタジオのStretchLab(2017年12月)を買収しました。
買収時は、CycleBarの75%の店舗が儲かっていない状況でした。その根本的な原因は、広い面積と多数の機器により、損益分岐点が上がっていたことです。この問題を解決するために、大幅に面積を縮小し、さらにDJスペースや受付スペースの壁などを全て撤去することで、面積を限界まで有効活用することが可能となりました。これらの改善により、既存店を含む全店舗の収益が大幅に改善され、成功を収めています。※スタジオあたりの売上は平均30万米ドル→平均43万3,000米ドルまで改善
2018年前半には、Row House(2018年1月)、AKT(2018年3月)を買収しました。Row Houseは、夫婦によって設立されたフィットネスジムで、初級者から上級者までが1時間以内で効率的に有酸素運動の効果の高いローイング・トレーニングを行うことができます。夫婦が設立したジムだったため、買収当初は3店舗のみでした。しかし現在では、同ブランドは300以上の店舗を展開しています。AKTは、国際的なフィットネスエキスパートで、セレブリティトレーナーでもあるアンナ・カイザーによって設立されました。4つのコアモダリティ(トーニング、ダンス、インターバルトレーニング、サーキットトレーニング)をカスタマイズしてミックスしたフィットネスプログラムを提供しています。
2018年後半には、7店舗を展開するサンディエゴのYoga Six(2018年8月)と、当時Lキャタルトンが支援しており、517店舗を展開するPure Barre(2018年10月)の2ブランドを2018年後半に買収しました。同時に、取締役会長を務めているMark Grabowski氏が運営するSnapdragon Capital Partnersからも出資を受けて入れています。
2021年に、ニューヨーク証券取引所に上場し、MSD Partners、Redwood Capital Managementから資金を調達しました。調達資金を活用し、新たにRumble、Body Fit Training、Lindoraを買収し、現在の規模まで成長しました。