経営者と犯人捜し
何かトラブルがあると、真っ先に犯人を捜し始める人がいる。
もしくは、真っ先に自分が犯人ではないことを証明しようと動く人がいる。
今回はこの辺りのことを書き綴っていく。
犯人捜し症候群
おおよそのトラブルには、対応する原因がある。
そして、その原因をつくった犯人を捜すことになる。
――― なぜ犯人を捜すのか?
ここが一番のポイントだ。
世の殆どの人は「犯人は謝罪して責任をとる必要がある」と考える。
その結果、トラブルが発生すると、真っ先に犯人を捜そうとする人は多い。
また、自分が犯人ではないことを証明しようとする人も多い。
両者とも、本質は同じだ。
――― 自分が犯人だと思いたくない
こんな感情に振り回されている。
・〇月〇日のメールに〇〇だと記載してあります
・過去の記録を調べたところ、○○だという情報はありませんでした
・私の担当した〇〇には、問題がありませんでした
困ったことに、こんなことをするのにも、労力や時間が掛かっている。
本来、真っ先にやらなければいけないのでは、トラブルへの暫定処置だ。
しかし、それを投げ出し、犯人捜しに走る人が多い。
犯人を特定し、それが自分ではないことに対する安心感。
これを強く望む人は、もはや「犯人捜し症候群」と言える。
トラブル再発防止の障害
起こってしまったトラブルは、もう仕方ない。
重要なのは、最速でトラブルを解決すること。
そして、同じトラブルを繰り返さないことだ。
犯人を特定しなくても解決できる問題なら、犯人捜しは後回しだ。
犯人など無視して、最速でトラブルを解決すれば良い。
誰かが犯人捜しをはじめたら、それは制止すること。
経営者として最も気になるのは、同じトラブルを繰り返す可能性だ。
そのために、トラブルの本質を理解しなければいけない。
そして、そのためには犯人を特定し、本質的なことを調査をしなければいけないことが多い。
困ったことに、犯人捜し症候群の人は、調査をスムーズにさせてくれない。
重要なことを言わなかったり、虚偽の報告をすることもある。
これは、自分が犯人である場合のみに限らない。
犯人ではない人も、調査のプレッシャーに構えてしまい、誤った行動をしてしまう場合がある。
最悪の場合、犯人は消えてしまう。
複数の犯人捜し症候群が徒党を組み「犯人はいない」という状態をつくりあげてしまう。
問題は、犯人と同時にトラブルの本質が隠蔽されることだ。
こうなると、トラブルの再発防止対策は、暗礁に乗り上げてしまう。
そして、同じトラブルを繰り返すことになる。
脱・犯人捜し症候群
トラブルを再発防止まで含めて解決するには、犯人捜し症候群を排除する必要がある。
少なくとも、一定以下に抑えないと、慢性的にトラブル再発防止ができない体質の会社になってしまう。
つまり、犯人捜し症候群を発症しない環境をつくりあげるしかない。
――― なぜ犯人捜し症候群が発症するのか?
ここが難しい。
私は、多くの場合「ミスに対してのペナルティー」を必要以上に恐れることが原因だと思う。
トラブルに発展するほどのミス。
これは本来であれば、上司が責任をとるべきだ。
この場合の責任とは、問題報告、謝罪、トラブル解決、再発防止、完了報告の5点セット。
私は、上司に信頼がおけるのであれば、犯人捜し症候群は発症しないのではないかと考えている。
この場合の信頼とは、上司が責任を持つということ。
ミスをした部下。
その上司。
さらに、経営者および経営陣。
このラインのどこかで信頼が失われていると、そのポイントで犯人捜し症候群が発症する。
そして、そのラインの大元となるポイントは経営者だ。
トラブルは、いろいろなことを教えてくれる。
弱点が炙り出される。
より業務の強度を高めるチャンスにもなる。
そして、何よりも社内の「信頼関係図」が描写される。
これは、経営者にとって非常に重要な情報だ。
大きなトラブルでも、犯人捜し症候群が発症しない。
そんな会社と経営者でありたいと思う。
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