
従業員の給与をどう捉えるか?
経営者は「従業員の給与」をどのような感覚で捉えているのだろうか?
私が見た限り、大きく分けると3つに別れると思う。
但し、今回は新入社員など、投資的な一面は除く。
1.仕入
2.固定費
3.利益の還元
今回はこの辺りのことについて書き綴っていく。
給与は仕入
製造業など、単純労働を主な仕事とする職種は、この傾向が強い。
これは致し方ない気がする。
しかし、それ以外の業種でも「給与は仕入」だと考えている経営者はいる。
そして、こういった経営者は「差が利益」だと考えていることが多い。
かつて商売の基本は「安く仕入れて高く売る」というものだった。
しかし、今時は「付加価値を付けて高く売る」という時代だ。
その時代において「差が利益」だと考えている会社は、かなりクラシックだと言える。
この手の会社は、人材派遣的な色が強い。
従業員を「人日や人工」という単価で評価する。
一日仕事をアサインして、いくら売り上げるか?
そして、そこから会社の利益を差し引いて、従業員の給与が決まる。
従業員はいくらでも代わりが効くと考えている場合も多い。
もし、この手の会社に勤めていて、もっと給与が欲しいと思う人がいたら、転職した方が良い。
転職が一番、給与が上がる可能性がある。
給与は固定費
このパターンが一番多いと思う。
従業員の給与は固定費であり、その固定費を使って可能な限り利益を上げるべきだという考え方。
固定費以上の粗利が会社の利益となるため、従業員の教育にも力を入れる。
各自の強みを生かし、弱みを他者がカバーするのは当然と考える。
チーム感が強く、チームの考え方を大切にする。
一方、チームになじめない人や自分の給料以上の粗利を出せない人に対して冷ややかな傾向がある。
もし、この手の会社に勤めていて、冷ややかな目で見られている人がいたら、転職した方が良い。
おそらく、その会社では自分の力を生かせない。
給与は利益の還元
最近は比較的このパターンが増えてきた気がする。
給与は利益の還元であり、利益を出した人により多くの還元をするべきだという考え方。
職場には活気があり、スタッフはオフィスを急ぎ足で歩く。
チームは、プロジェクト毎に立ち上がるものであり、会社全体が一つのチームとは限らない。
実力主義の傾向が強く、年功序列や役職にそれほど拘らない。
それに合わない人は、自主的に退職していく。
経営者として、どれを選ぶか?
経営者は「従業員の給与」をどのような感覚で捉えるべきか?
1.仕入
2.固定費
3.利益の還元
私は、全てが重要だと考えている。
1.仕入
まず、仕入。
「仕入」と考えてしまうのは味気ないが、そのくらい淡々とやらなければならない作業というのは、どの会社にも絶対にある。
――― 誰がやっても同じ結果になる作業
これは、悪いことではなく、むしろそのレベルまで一つの作業を分析するべきだ。
アルバイトや外注で済むなら、その方が良い。
2.固定費
多くの人は、自分の給与は固定費であって欲しいと考えている。
自分が使う経費、そこから上げる利益など、考えるのは面倒だと思っている。
それよりも重要なのは、安定した給与。
そして、少しずつ昇給すれば良い。
これが主流派だ。
経営者は、この主流派の想いへ答えなければならない。
この主流派に「経営者的な目線を持て」などと叱るのは言語両断。
昇給に対応する経験と実力を地道に積み重ねてもらうことが重要だ。
その上で、会社に利益を出す人材で居続けてもらう。
長いスパンで考えた高度なマネジメントが必要だ。
このボリュームゾーンである主流派をどれだけ生かせるか?
これが会社の重要度として、かなりの比率を占める。
長年、少しずつでも前進していく会社の経営者は、この主流派との付き合い方が絶妙だ。
――― 経営を長く続けたいなら、主流派を抑える
私は、現実として、これが非常に重要だと考えている。
3.利益の還元
本来なら、全ての人の給与が「利益の還元」であるべきなのかもしれない。
しかし、現実的には上手く行かない。
例えば、営業職であれば、利益の還元という給与査定が比較的簡単にできる。
プロジェクトリーダーなども同様だ。
しかし、全ての人の仕事の成果を数値で表すことは難しい。
私の会社では、比較的「利益の還元」という意識が高い。
仕事の成果は、可能な限り数値化するし、その数値を可能な限り各自に割り振る。
バックヤードの担当へも、案件毎の粗利からパーセンテージで数値を割り振る。
しかし、それだけでは上手く行かない。
毎年、各自の数値はブレるし、パーセンテージで決めた数値が現実的な給与額にならないこともある。
最後には、人間的な判断が必要となる。
ただ、熱意と自信に溢れる人へは、積極的に「利益の還元」として給与査定を取り入れると良い。
ワンチャン、化ける可能性がある。
多様性のジレンマ
この世が「多様性」という言葉で溢れ返って随分経った。
しかし、多様性などと言う言葉は、経営者にとってあえて使うような言葉ではない。
特に、中小零細企業の経営者にとっては、当たり前のように「多様性」と付き合っていかなければ、会社の存続すら難しい。
自分の給与が仕入であって欲しい。
固定費の方が良い。
いや、利益の還元であるべきだ。
組織の中には、いろいろな人がいる。
従業員が10人もいれば、その組織は既に荒ぶる船だ。
――― 多様性と戦わなければいけない
幸い、大手企業ほど、多様性を受け入れるのは難しくない。
ガチガチのルールで統治する大手企業と中小零細企業は大きく違う。
逆に、必要なのは多様性を扱う力。
正確に言えば、多様性を認めさせる力だ。
多様性は、不公平感の始まりだ。
誰かに何かを認めると、他の誰かから不平不満が出たりする。
それが、当たり前だ。
――― 不平不満を吹き飛ばす
経営者には、そのくらいの何かが要る。
それは、人望、人柄、カリスマ、情熱など、それらに近いが、それとは断定できない何かだ。
経営者として、その何かの力の正体を追求し続けることが重要だと思う。
もちろん、今の私では、到底足りていない。
いつか、その正体を具体的に説明できるようになりたいものだ。
いいなと思ったら応援しよう!
