『一見さんお断り』であるということ
少し前、私がフォローしている西山氏がお茶屋さんの話をしていた。
お茶屋さんと言えば「一見さんお断り」であることは良く知られたことだと思う。
今回は私が体験した「一見さんお断り」のエピソードについて書き綴っていく。
お茶屋さん
10年以上前、お茶屋さんへ連れて行って貰ったことがある。
「一見さんお断り」のお茶屋さんに、当時20代、小僧だった私が入れるはずがない。
20歳以上年上の大先輩に連れてきてもらった。
正直、お茶屋さんのシステムを知らないまま、お茶屋さんへ入った。
舞妓さんと芸妓さんの違いも知らない私に、舞妓さんがお茶屋さんとその周りのシステム概要を教えてくれた。
――― ようするにAKBみたいなものか?
と尋ねたところ「そんなところです」と舞妓さんは答えた。
舞妓さんは、頭が良い。
そして、よく訓練されており、頭の回転が速い。
ちなみに、お茶屋さんは1回、2回行ったところで、本当の楽しさを知ることはできないと思う。
私には、歌の言葉の意味を理解することすら困難だった。
合いの手のタイミングも、笑うべきタイミングも掴めない。
こういう場所は、何度も通って、遊び方をマスターしてこそ、好きになるところなのだと思う。
さて、このお茶屋さんの一見さんお断りシステム。
これは正確に言うと「会員制」のようなものらしい。
つまり、会員およびその同伴者が利用できるということになる。
これはお茶屋さんに限った話ではないが、高級店には高級なものが置かれていることが多い。
酒に酔って壊すようなことがあったら、高級車1台分の金など一瞬で溶ける。
こういった理由から、一見さんお断りシステムを採用して、信用に担保を付けている側面が強いのではないかと推測している。
京都の「JCお断り」飲食店
今もあるかは分からないが、十数年前は京都の飲食店の入り口に「JCお断り」という札が付いていることがあった。
JCには「京都会議」なるものがあって、日本全国からJC会員が集まるイベントがある。
総会に相当するイベントだ。
この日の夜は、全国から集まったJC会員が会場周辺の飲食店に流れ込む。
――― その一見さんをお断りする「JCお断り」だ。
ただし、これは「二度と来店しない人」という意味の一見ではない。
一部のJC会員の素行の悪さから、他のJC会員全体の入店を禁止しているという側面が強い。
「二度と来ないで欲しい人たち」という意味の一見だ。
とても残念な「一見さんお断り」システムと言える。
ちなみに、私もJCに在籍していたことがある。
日本JCへ出向して、京都会議の開催を担当したこともある。
善良なJC会員の名誉のために言っておくが、JCは傲慢な人ばかりの集団ではない。
たしかに、傲慢な人は多いが、謙虚な紳士もたくさんいる。
六本木の会員制クラブ
入り口に暗証番号を入力する機械が設置されていた。
10歳ほど年上の先輩に連れられて、4人で入った。
店内はクラブというより、ラウンジのような印象だ。
最初の違和感は、ボックス席に通された時。
その時、既にフルーツ盛り合わせがテーブルに置かれていた。
当時20代中盤の私にとって、過去に見たことがないくらいお洒落なフルーツ盛りだった。
テレビを見ない私には、誰なのかよく分からなかったが「元芸能人」のステージがあった。
モノマネを専門とする人らしい。
――― 二時間ほど経って、会計の時
予想をはるかに超える会計金額に驚愕した。
一瞬、皿洗いとして何日働けば、この店は許してくれるか?という計算が頭の中を走った。
もちろん、実際には先輩が一人で黒いカードを出し、全額ご馳走になった。
ちなみに、この先輩は今「政治家」をやっている。
この店は会員制なので「一見さんお断り」に等しい。
会員になるには、会員からの紹介が必須とのこと。
実は、この店にはその後2回ほど行くことになった。
この店が「一見さんお断り」システムを採用しているのは「場の空気」を大切にしているからだと推測している。
よくあるクラブのような騒がしさは一切ない。
お洒落な金持ちの家で「宅飲み」しているような空気感だった。
この空気感を体験した上で、気に入った人だけが会員になるのだと思う。
結局、一見さんお断りとは?
一見さんお断りと言うと「金の無い人は来るな」という意味だと思われていることが多い。
それも少しはあると思うが、実際はそうではない。
一見さんお断りシステムを採用する店は「空気感を大切にする」という想いが強いと思う。
正直、金を持っている人は、場の空気感に拘りがある人が多い。
金を払って「気を抜きに来ている」ことが多い。
もしそこに「空気感をブチ壊す、絵に書いたような成金」が現れたらどうなるか?
そんなことが続くと、常連さんは来なくなる。
実際、成金は「高級なものを手当たり次第」に体験しようとする人が多い。
別に、本人に悪気はない。
しかし、貪欲な気持ちと傲慢な姿勢は紙一重だ。
店側にとっては「金持ち初心者」である成金に、店側が必死に作り上げてきた「空気感」を壊されることは、恐怖以外の何物でもない。
きっと、これが一番守りたいもの。
一見さんお断りは、決して悪くない。