動物園をつくる経営者
今回は私の先輩であり、友人の経営者(以下、N氏)を紹介する。
私の目には、彼が「動物園」でもつくっているように思える。
犬の話
現在50代に入ったN氏は30代の頃、急に犬を飼い始めた。
その犬をはじめて見た時、私にはそれが「牛」に見えた。
犬種は「グレートデン」。
その中でも特に大きな個体だと思う。
ゴールデンレトリバーが子供のように思える大きさで、犬好きの私も最初は触るのに躊躇した。
N氏は、その犬を自分が経営する会社の敷地内で飼っていた。
私が会社に遊びに行くと、事務所の中に居たりもした。
私が事務所内でケータイの充電をしていたら、犬が充電ケーブルに足を引っ掛けた。
充電器の電源プラグが見事に曲がった。
そのくらい、迫力があった。
N氏は、その後も飼う犬を増やし続けた。
一番多い時、8頭ほど飼っていたと思う。
全部、闘犬のようなサイズの犬だ。
私から見ると、N氏は一日中、犬の散歩をしているように見えた。
何せ、1頭ずつしか散歩ができない上に1頭あたり1日2回以上の散歩をしていたらしい。
その後、N氏は会社の土地とは別に、山の方に土地を買った。
そこで、ドッグランのような施設を自分でつくりはじめた。
そして、その施設のことをNベースと呼ぶようになった。
水族館の話
ある日、私はNベースに呼ばれた。
相変わらず恐ろしいサイズの犬たちが私に向かって吠える。
到着して案内された場所には、巨大な水槽があった。
そして、その水槽の中には、巨大な魚たちが泳いでいた。
その巨大な水槽の水の中に、カメラを取り付けたらしい。
しかし、取り付けたカメラをディスプレイに表示させるまでの配線や設定が分からない。
そこで、私が呼ばれたというわけだ。
配線、設定はすぐに終わった。
その後、いろいろな話を聞いた。
魚は、広く、深い水槽で飼うことでサイズが大きく成長するらしい。
水圧が関係しているとか、他にも何かと必死のレクチャーを受けた。
この辺りで、私はN氏がNベースをどうして行きたいのかに興味を持つようになった。
この時点では「趣味」だと言っているが「何か仕事にできたら」という思いもあるようだ。
フェネックの話
Nベースにフェネックが来た。
とても可愛らしい。
Nベースに住んでいる動物で一番可愛いと思う。
しかし、遊ぶことはできなかった。
N氏曰く、「人になつくと子供を産まなくなる」らしい。
ブリーダーでも目指しているのか?と思った。
ウミガメの話
Nベースにウミガメが来た。
とにかく、デカい。
はじめて見るサイズだった。
ウミガメを獣医の元へ連れて行った時の動画を見せられた。
大人4人がかりで持ち上げて、車に積んでいた。
大変なことだ。
私が「獣医はどうやって探すのか?」と聞いてみた。
N氏曰く、「動物好きのネットワークがあり、そこで紹介してもらう」とのこと。
キリンの話
ある日、N氏と酒を吞んでいた。
その時、N氏の携帯電話へ相談の電話が来た。
その会話の中で「1500万」という言葉が出てきた。
電話の後、「1500万とは何のことか?」と聞いてみた。
どうやらそれは、「キリン」の価格らしい。
また、キリンを買うための要件、条件なども説明されたらしい。
私が「なぜそんな話があなたに来るのか?」と聞いてみた。
N氏曰く、「手放さなければいけないが受け入れ先がないからだ」とのこと。
どうやら「動物好きのネットワーク」には、動物園の関係者も含まれているらしい。
動物園が動物を手放す必要がある時、同じく動物園の中から受け入れ先を探すらしい。
しかし、受け入れ先がない場合もある。
そんなときに「動物好きのネットワーク」の存在が重要になるとのこと。
その「動物好きのネットワーク」は、かなり特殊なものだと知った。
少なくとも、動物愛が非常に強く、経済的に恵まれた人でなければ、そのネットワークに入れない。
そのネットワークの中でも、信頼が厚い人だけに「キリンの話」が持ちかかるのだろうと推測した。
ちなみに、N氏は結局、キリンの話は断ったようだ。
十分に運動させられるスペースが足りないとのこと。
ペンギンの話
ある日、N氏と同じ「動物好きのネットワーク」に所属している人が専務を務める店へ行った。
高級クラブだ。
その時、専務が携帯電話で撮った写真を見せてくれた。
なんと「ペンギンが犬を枕にして寝ている写真」だ。
室内でペンギンを飼い出したらしい。
専務へ「ペンギンは部屋の中で飼えるのか?」と聞いたところ。
専務曰く「犬が住める環境であればペンギンも住める」とのこと。
私はペンギンは涼しい環境を用意しないといけないものかと思っていた。
彼らの「動物好きのネットワーク」は、私の想像以上に奥が深いことを知った。
キャンプ場
Nベースは、徐々に山を切り開き、キャンプ場になった。
動物の飼育スペースとテントを張るスペースの他、コンテナハウス、動物用のプール、遊園地にあるパンダカーやライオンカーも置いてあった。
私が「このキャンプ場は一般の人が利用できるのか?」と聞いたところ。
N氏は「今のところ、その予定はない」と答える。
私が「Nベースは何かしらマネタイズはしないのか?」と聞いたところ。
N氏は「そうしたい」と答える。
N氏は、不思議だ。
Nベースがどうなっていくか興味は尽きない。
マネタイズと新会社の設立
彼は突然、自分の会社の代表取締役を降りた。
部長だった弟が代表取締役となった。
そして、N氏は新しい会社を設立した。
Nベースを利用して何かをやるのかと思った。
しかし、その後2年ほど、新会社が何かをしている気配は無かった。
それがつい最近、動き始めたらしい。
N氏から連絡が有り、Nベースへ行った。
そこで見たのは「4匹のペンギン」だった。
どうやら「動物の劇団」を結成したらしい。
元動物飼育員のスタッフが加わり、最初のステップとして「ペンギンによる芸」を開発しているのだという。
正直、私が見た時点では「芸」として成り立っていなかった。
それでも、大きな可能性を感じるものではあった。
既にSNSに投稿した動画がバズり、大手メディアからの取材も受けている。
あとは、マネタイズ方法を確立していくことが目標だ。
私は、今後もN氏とNベース、そして新しい劇団の活動を特等席で見守っていこうと思っている。