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企業は会社に金を貯め込んでいるのか?
企業の内部留保が12年連続で過去最高を更新し、600兆円になったという記事を見た。
「嘘だろ?」と思った。
しかし、これには何とも言えないカラクリがあった。
今回はこの辺りについて書き綴っていく。
私は以前にこんな記事を書いた。
上記記事の中で「利益剰余金が増えないと内部留保も増えない」という旨を書いた。
私の知る限り、内部留保と言う項目は決算書の中にはない。
何を持って内部留保とするかは、人それぞれだという認識でいた。
内部留保は一般的に「会社が持っている現金」というイメージで使われている。
私の場合は「現金およびすぐに現金化できるモノから、負債分を引いた金額」が内部留保だと考えている。
単純に決算書を眺めても、この数値は出てこない。
各業種、各社、自社にとっての内部留保の考え方は変わるかもしれない。
ただ、経営者であれば、この「名前もなき数値」がいかに重要であるかが分かると思う。
しかし、どうやら、私のこの認識が大きくずれているようだ。
――― 内部留保は、利益剰余金
これが税理士などの専門家の認識らしい。
これもまた「嘘だろ?」と思った。
ただ、もし「内部留保=利益剰余金」であるとするならば、冒頭に書いた「国内企業の内部留保が600兆円」というのは納得できる。
利益剰余金など、順調に黒字経営を積み重ねていけば、増えていくのは当たり前だ。
ここからがややこしい。
一般的なイメージは「内部留保=会社の現金」だが、専門家は「内部留保=利益剰余金」だと言う。
全く、意味が違う。
以下、よく聞くフレーズ。
「内部留保が多いのは、企業が投資もせず、給与としても還元せず、会社が金を貯めこんでいるからだ。」
いや、違う。
このフレーズは、全く意味をなさなくなる。
利益剰余金を内部留保へ置き換えると
「内部留保は、会社が積み立てた累計利益だ」ということになる。
――― 我ながら、分かりづらい説明だ
乱雑にまとめてしまおう。
つまり、一般的に内部留保と言うと「会社に残った現金」というイメージがある。
しかし、専門家が言う内部留保はそれとは違い、会社の累計利益である利益剰余金のことを指す。
そもそも、健全な企業は利益剰余金として積み上げた利益の中から、現金を消費して積極的に投資をする。
投資した金額が資産へと移り、その年の経費(損金)で処理できるとは限らない。
だから、利益剰余金が多くても、現金が多く残っているとは限らないということだ。
今一度、よく聞くフレーズを記載する。
「内部留保が多いのは、企業が投資もせず、給与としても還元せず、会社が金を貯めこんでいるからだ。」
ここでは、給与として還元していないかどうかは置いておく。
しかし、おおよその会社は投資をしている。
多くの利益を出す会社ほど、積極的に投資をしているはずだ。
こういった会社にとっては「内部留保が多い」のと「投資をしていない」というのは、おおよそ無関係だということになる。
さて、最後の問題。
マスコミは「内部留保=利益剰余金」であり「利益剰余金は会社の累計利益」という前提を正しく持っているのだろうか?
その上で「企業が投資をしていない」かつ「積み重なった内部留保が問題になっている」と言っているのだろうか?
もし前提を理解した上での記事であれば、少しばかり悪意を感じる。
私自身も「内部留保」というものの考え方を改める良い機会になった。
一般的なイメージと専門家が言う内部留保の違い。
両方の認識を頭に入れておかなければならないと感じた。
ただ、経営者の私としては「内部留保=利益剰余金」は、かなり違和感がある。
決算書の資産の部にある項目の数値は、数値通り会社に留保して現金化できるとは限らないのだから。
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