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売上と従業員数は少ない方が良い

よく「売上(年商)〇〇憶」や「従業員数〇〇〇人」といった数値がアピールされる。
これは、はっきり言って、あまり意味がない。
むしろ、売上と従業員数は可能な限り少ない方が良い。
今回はこの辺りのことについて書き綴っていく。


売上と利益

売上が表すものは、経済社会への影響力だ。
大きければ大きいほど、社会への影響は大きい。
しかし、ただ、それだけだ。

そもそも、売上というのは業種や仕事のやり方によって大きく異なる。
売上額だけを見て、その会社を評価することは、どんな優秀な経営者や銀行員であっても不可能だ。

例えば、建設業。
A社は、3次請け以下で作業員をとして仕事を請けている。
B社は、1次請けで顧客から直接仕事を請けているとする。

仮に、A社の売上は3000万、B社の売上は3億円だとしても、それだけでは会社の成績を評価できない。
A社は、従業員3名で、細かな経費を除いて仕入れや外注はしない。
B社は、従業員3名で、殆どの仕事を2次請け以下へ外注している。
そうなると、どちらの会社が多くの利益を出しているかは、売上だけでは測れない。

次は卸売業として、もう少し具体的な数値を出してみる。
卸売業は、原価率が非常に高い。
原価率の平均は、84%程度とのこと。

仮に、年商1億の卸売業があったとする。
年商1億と聞くと「凄い」と感じる人もいると思う。
しかし、原価率が80%だとすると、粗利益は2000万と言うことになる。
卸売りのために必要な設備や経費のことを考えると、営業は経営者一人ということがあり得る。
私の感覚だと、粗利益2000万の卸売業は「家族経営でアルバイト数人」という構成を思い浮かべる。

逆の例として、税理士をイメージしてみる。
税理士は原価が殆どない。
自宅を事務所にしている税理士であれば、売上1000万もあれば、年収としては800万を得ることもできるはずだ。
アシスタント一人雇って、売上2000万を超えていれば、年収1200万を超えていても不思議ではない。

年商3憶の建設業で利益が500万。
年商1億の卸売業で利益が200万。
年商2000万の税理士(個人事業主)で利益(相当額)が500万。
売上と利益の関係は、この程度の暴れ方を平気でする。

売上の罠

売上が大きいということは、金の出入りが激しいということだ。
金の出入りが激しいというのは、経営者にとってあまり良いこととは言えない。

例えば、仕入、外注を多用している場合。
仕事を完遂し、顧客へ請求する。
実際に入金があるまでには、締日、支払日を経て、タイムラグがある。

その間、仕入分、外注分の経費を負担しなければいけない。
(もしくは仕入先、外注先にその分を負担をしてもらわなければいけない)
これをよく「運転資金」と言ったりする。
売上は大きくなればなるほど、大きな運転資金が必要になる。
それを融資で賄うなら、金利を支払う必要がある。

万が一、納品から入金までの間に顧客が倒産したら、絶望的だ。
倒産した顧客から入金されることはなく、仕入分や外注分は支払う義務がある。

――― 売上に応じた責任とリスク

これを甘く見てはいけない。
連鎖倒産など、珍しくも何ともないのだから。

もちろん、まずは売上を上げないと会社は前に進まない。
利益の源泉は売上だ。

従業員数の罠

労働集約型の業界では、売上を増やすために従業員数を増やす必要がある。
これは当たり前だ。
しかし、軽い気持ちで従業員を増やすと痛い目を見る。

・正社員は軽い気持ちで解雇できない
・業務管理コストが増える
・インフラコストが増える
・教育コストが増える
・事務コストが増える
・労務コストが増える
・労使トラブルが増える

会社の守り(事務処理や労務処理などの能力)が低い場合、どれだけ攻めても利益は打ち止めになる。
実際、従業員数が20名から30名まで成長したのに、利益額は殆ど変わらないという会社もいる。

この場合、従業員数の増加に応じて、リスクだけが増加しているということになる。
売上が減った場合、大ダメージを受ける。
正社員は軽い気持ちで解雇できないのだから。

本当の利益を追求するなら

先にも述べたが、まずは売上を上げなければ前に進めない。
おそらく、会社が倒産する一番の根本的原因は「売上が足らない」というものだと思う。

しかし、利益を求める経営者には、以下の問題が立ちはだかるはずだ。

・売上高が増えるほど、原価以外のコストが増える
・従業員数が増えるほど、原価以外のコストが増える
・売上と従業員数が増えるほど、利益率が下がる
・売上と従業員数が増えるほど、現金が枯渇する

結果、事業拡大を夢見て突撃し、倒産する会社は多い。
逆に、突撃をはじめた会社見て、心配する経営者も多い。

何度も言うが、売上は絶対に必要なものだ。
利益の拡大のためには、従業員数を増やす必要もあると思う。
ただ、「利益率」というものもしっかりとウォッチしなければいけない。
よほど優秀な経営者でもない限り、売上と従業員数が増えると利益率は下がる。
これは、同じ経営手法で攻め続ける限り、改善されない。

――― 攻める時は、利益率を慎重に眺める

利益率が急激に下がっていたら、赤信号。
少し下がり始めた時点で、攻める速度を落として、守りを固めることをおすすめする。

私は「本当の利益」とは「無理をせず、穏やかなまま」得られる利益だと思う。
経営者としては、売上と従業員数は可能な限り少ない方が無理せず、穏やかにいられる。
それを得るためには、経営手法を改善し、利益率を高めることが重要だ。


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