企業は国畜だという現実
社畜と言う単語を良く聞く。
しかし、社畜の主である企業ですら、国畜である。
従業員を雇い、ある程度の黒字で税金を納めている経営者なら、殆どの人がこの現実に気づいているはずだ。
今回は、この辺りのことを書き綴っていく。
インボイス制度
年間売上1000万未満の事業所は、消費税の納税を免除されている。
しかし、インボイス制度の登場によって、一筋縄ではいかなくなった。
ここでは、制度の詳しい説明は省く。
しかし、消費税は、企業がかき集めて納税するものだ。
インボイス制度の登場によって、小規模事業者は納税するか、免税事業者を貫くかの選択を迫られる。
しかし、この一点だけは真実として知っておいて欲しい。
――― 政府の採りっぱぐれはない
免税事業者分の消費税は、そこと取引した事業者へ転嫁される。
政府は、黙っていても、免税事業者分の消費税が入って来る。
免税事業者が取引先へ消費税分を請求しているかなど、関係ない。
もっと言えば、誰が免税事業者分の税金を負担しているかなど、どうでも良いということだ。
インボイス制度は、そんな仕組みになっている。
軽減税率
消費税が8%から10%に上がる時、一部の商品種別が8%に据え置きすることを軽減税率と名付けられた。
あくまで、2%を軽減した。
そんな解釈なのだろう。
消費税率が乱立することで、企業側は大きな負担が圧し掛かった。
レジ、POS、会計システムなど、幅広い仕組みを修正する必要があったからだ。
なぜ、こんなことをするのか?
企業側が混乱することは目に見えていたはずだ。
私は、この先は様々な税率に枝分かれすると推測している。
0%、5%、8%、10%、15%など、商品種別によって税率が変わる。
税率を振りかざすことができる権力は、果てしなく強い。
そのためのトレーニングとして、今、8%と10%を区別することが企業に課されているのだと思っている。
電子帳簿保存法
かつては「電子データで保存しても良い」というものだった。
しかし、ついに「電子データで保存しなければいけない」というものへ変わった。
なぜ、電子データ保存を義務付けるか?
――― 税務調査をスムーズにするため
これが大きな要因だろう。
政府のために、せっせと電子データを整理して保存する。
そして、素早く電子データを検索できるようにしておく。
これで、税務調査はスムーズだ。
かつて2日掛かっていた調査が1日で終わる。
まさに、働き方改革だ。
この法に磨きをかければ、税務署にとっては小規模案件である小規模事業者の税務調査でも、コスト対効果が合って来るだろう。
源泉徴収・住民税の特別徴収
政府は、個人の税金を個別に集めるような非効率な仕事はしない。
代わりに、企業に個人の税金を集めさせる。
それが、源泉徴収であり、住民税の特別徴収だ。
アメリカのように、個人で納税するルールにすると…
・納税をうっかり忘れていた
・納税するのは嫌だ
・納税のやり方が分からない
・納税する金がない
こんなトラブルが発生することは目に見えている。
政府は、そんな馬鹿なことをしない。
だから、企業に義務付ける。
――― 納税ミスは、企業のペナルティ
最終的に、誰が払おうと興味がない。
納税の不足が発覚したら、企業に支払いを命令するだけだ。
定額減税
2024年8月現在、渦中の制度だ。
減税対象は、所得税と住民税。
どちらも、企業が個人から徴収して、納税している税金だ。
――― だれが減税処理をするのか?
それは、企業だ。
企業が減税処理をして、その金額を納付するということになる。
半年かそこらのために、会計システムを改修しなければいけない企業もいたはずだ。
その労力と経費は、企業持ち。
ちなみに、私の住む街の自治体も定額減税への対応予算を2000万ほど計上している。
2024年6月の住民税の徴収がないのは、地方自治体がそれに対応する時間が必要なためらしい。
6月議会で何かしらの特別ルールを審議する必要もある。
地方自治体にとっても、迷惑極まりないものだろう。
社会保険制度
これは、給与から差し引かれる大きな項目だ
しかし、政府からすると、これは税金ではない。
あくまで保険料だ。
企業は、個人の社会保険料を計算し、徴収し、納付する。
しかも、労使折半。
つまり、社会保険料の半額は会社が負担しなければいけない。
もちろん、将来、会社に年金が支払われることもない。
年末調整
政府は企業へ年末調整を義務付けている。
そして、個人が何かしら税金が控除されるものを集め、再び税金の計算をして、金額を確定させる。
増減の差額分は、企業と個人が清算する。
政府は、特に何もしない。
企業が確定した金額の税金を納付するだけだ。
この仕組みによって、個人が確定申告をする作業をカットすることができる。
政府は、個人ではなく、企業による正確で確実な納税を求めている。
もちろん、納税ミスがあれば、企業に連絡が入る。
決算・確定申告・納税
政府は、会社に掛かる税金を計算して、請求書を送ってくるようなことはしない。
企業が自主的に決算書を作成し、確定申告と納税をすることを義務付けている。
ただし、納税額に不足があると判断すれば、強い拘束力を持って税務調査に入る。
手ぶらで帰ることは、殆どないと聞く。
残念ながら、私の会社からも手ぶらで帰って行ったことはない。
ミスの指摘はおろか、「見解の相違」にも厳しく、譲らない。
そんな場合は、政府へのお土産だと思って、おおよその部分は譲るしかない。
ちなみに、政府に抜かりはない。
予定納税と称して、税額を定期的に収めることを求めて来る。
この金額は、当期の成績は全く考慮しない。
前期の実績から政府が自分勝手に計算したデタラメな数値だ。
小まめに徴収することで、年間一括だと採りっぱぐれるリスクを減らすことが目的だろう。
その他
企業は、政府から多くのミッションを授かっている。
労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労働組合法、男女雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働法、最低賃金法など。
まだまだ、私が知らないミッションもたくさんあるはずだ。
国畜と社畜
国畜として、社畜を管理しなければならないというのがこの国のルールだ。
経営者をやっていると、国(政府)が個人を統治する壮大な仕組みが少しずつ分かって来る。
長い歴史の中で最適化されて来た細部まで優秀な仕組みだ。
その仕組みの末端は、近所の最小ユニットである自治会(町内会)に無償労働を求め、せっせと寄付金、協力金を集めさせるところから始まっている。
そして、管理体制の厳重化は今もまだ続いている。
労災や健康診断はもちろん、ストレスチェックなどのメンタルヘルス診断も着々と義務化が進んでいる。
冗談抜きで、今後は、さらにプライベートの奥の領域へ入らなければいけない診断内容が追加されるかもしれない。
――― もちろん、その経費は企業持ち
経営者は、強い社畜を率いて、強い国畜とならなければいけないと思う。
弱い国畜など、おもちゃみたいな補助金、助成金を投げつけられて遊ばれるだけだ。
現実を知り、義務を怠らず、納税をして、なお生き残る。
そんな経営者でありたい。