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社会人のための学び直し数学【中学数学平面幾何編その1】

1.証明

 中学数学で学ぶ平面幾何のいろいろについて考える前に,証明法について若干触れておきます。

 「正しいか正しくないか」あるいは「真であるか偽であるか」がはっきりしている文章のことを命題といいます。例えば「$${3}$$ は素数($${1}$$ とその数だけが約数である数)である」は命題です。の命題です。「$${4}$$ は素数である」も命題です。$${4}$$ が $${2}$$ を約数にもつので,の命題です。しかし,誰か特定の人に対して「彼女はかわいい」とか「彼はイケメンだ」は,「かわいい」とか「イケメンだ」とかが主観的な判断のため,正しい(真である)とも正しくない(偽である)ともいえないので命題ではありません。

 ところで,方程式 $${2x+1=3}$$ は命題といえるでしょうか?
これは,$${x=1}$$ のときは正しい(真)ですが,$${x=2}$$ のときは正しくない(偽)です。すなわち,$${x}$$ に具体的な数を代入してはじめて真偽がはっきりします。ですから命題ではありません。このように,ある文字に値を代入してはじめて真偽がはっきりするものを条件といいます。そして特に,方程式 $${2x+1=3}$$ のように $${x}$$ にいろいろな値を代入して考える条件を $${\textbf{x}}$$ についての条件または $${x}$$ についての条件式といい,$${p(x)}$$ のように書き表すことがあります。

 中学や高校の数学において証明が問われるのは,「$${A}$$ ならば $${B}$$」のように書けるものです。ここで,$${A}$$ や $${B}$$ は条件や命題です。「ならば」を記号「$${\Longrightarrow}$$」で表して「$${A\Longrightarrow B}$$」と書きます。$${A\Longrightarrow B}$$ は $${A}$$ や $${B}$$ の真偽によって,それ自体の真偽も決定するので,もちろん命題であり,特に複合命題ということがあります。

 命題 $${A\Longrightarrow B}$$ が成り立つとき,$${A}$$ を仮定,$${B}$$ を結論といいます。
中学数学では,$${A\Longrightarrow B}$$ が成立する(真となる)ことを証明するのが主であるため,$${A}$$ を仮定したときに,$${B}$$ と結論付けられるかあるいは必ず $${B}$$ といえるか,を示すことになります。ところで,$${A}$$ を仮定とするなら,これは真であるとして議論しなければなりません。そして,真の条件または命題 $${A}$$ のもとで $${B}$$ が真の条件または命題となれば $${A\Longrightarrow B}$$ が成り立つという証明ができたことになります。

[参考]条件や命題の真偽だけに着目して,真であることを $${T}$$,偽であることを $${F}$$ とすると複合命題の真偽は

$${T\Longrightarrow T}$$ は真,$${T\Longrightarrow F}$$ は偽
$${F\Longrightarrow T}$$ は真,$${F\Longrightarrow F}$$ は真

となり,偽の複合命題は $${T\Longrightarrow F}$$ に限ります。論理として,少し分かりづらい(特に仮定にあたるところが $${F}$$ となるものは分かりづらい)ところですが,中学数学の証明は $${T\Longrightarrow T}$$ をどのように示すかがすべてなので,今は気にせずに進めましょう。

 証明の例として
「$${x}$$ が $${6}$$ の倍数ならば $${x}$$ は $${3}$$ の倍数である」
を証明してみましょう。ただし,$${x}$$ は正の整数であるとします。
 証明を進めていくには,証明するための材料が必要です。そしてその材料は,正しいと認められるものでなければなりません。ここでは,$${6}$$ の倍数とか $${3}$$ の倍数とかを,正しいと認められる形で表現することを考えます。
 $${6}$$ の倍数は $${n}$$ を正の整数として $${6n}$$ と書くことができます。これは,$${6}$$ の倍数を小さい方から書き並べたとき

$${6×1,6×2,6×3, …}$$

のように,必ず $${6×}$$(正の整数) の形で書けることから分かります。同様に $${3}$$ の倍数は,$${m}$$ を正の整数として(先の $${n}$$ と区別するために $${m}$$ を使いました)$${3m}$$ と書くことができます。
 証明の準備が整いました。証明を実行しましょう。

【証明】$${x}$$ は $${6}$$ の倍数だから,$${n}$$ を正の整数として $${x=6n}$$ と書くことができる。すると

$${x=6n=3×2×n=3×(2n)}$$

である。ここで,$${2n=m}$$ とおくと $${x=3m}$$ であり,$${2n}$$ は正の整数(特に偶数)であるから $${m}$$ も正の整数である。
よって,$${x}$$ は $${3}$$ の倍数である。【証明終】

[参考]証明の流れから,$${6}$$ の倍数は $${3}$$ の倍数のうち偶数となるものであることが分かります。

【練習問題】正の整数 $${x,y}$$ が偶数ならば,その和 $${x+y}$$ も偶数となることを証明しなさい。

【証明】$${x,y}$$ は偶数($${2}$$ の倍数)であるから,$${m}$$,$${n}$$ を正の整数として $${x=2m}$$,$${y=2n}$$ と書くことができる。すると

$${x+y=2m+2n=2(m+n)}$$

と書けて,$${m+n}$$ は正の整数であるから $${x+y}$$ は偶数である。【終】 

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MaruSun
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